月に駆られて
アルファポリス

月に駆られて

――六条御息所物語

杉本 圭 /
月に駆られて
才に、容姿に、そして位にも恵まれた完璧な女性、六条御息所――なのになぜ、彼女は幸せになれず生霊として彷徨うことになったのか…煌びやかな都を舞台に繰り広げられる愛と哀しみの夢物語。源氏物語の新たな解釈に基づく創作小説。
■単行本 ■定価1,320円(10%税込) ■2004年04月20日発行

CHECK!!

  • 著者あとがきより

     推理小説としての「六条御息所」

     小説というかたちでしか扱うことのできないテーマというものがある。六条御息所という架空の人物は、まさにそれである。源氏物語の作中人物として、その存在感は他を圧倒している。にもかかわらず、影が薄い。

    才色兼備の佳人でありながら、生得の激しい情念を秘めつつ、内向的な自己抑制に縛られた人間。ほとんど現代小説のような人物設定である。しかもその自己呪縛に耐えかねて、睡眠中、夢の自覚の中で、生き霊となって人を殺してしまうとなると、精神科の症例としても立派に通用する。これだけの人物造形は十九世紀の近代小説としても斬新と言えよう。変なたとえだが、千年前に核分裂の実用化を想像するのと大差ない。六条御息所よりも作者の方が妖怪と呼ぶに値する。紫式部とはそれほどの想像力を持った作者なのである。

    しかし、心理的な人物造形に比べて、具体的な人物設定は妙に謎めいている。実名をほとんど用いていないことからも、わざとであることは容易に想像できる。桐壺更衣、先帝、夕顔など、いろいろな意味で障りが多ければ、この作者は平気でぼかす。政治向きのことは女が口を出すべきではないから。そういう断り書きは随所に出てくる。それでも、何となく想像できるように、ほのめかしてはいるのである。やはり確信犯だなという部分には事欠かない。

    以下、あとがき全文を読む

  • 目次

    第一章   「夢」の訪れ

    第二章   絹の牢獄

    第三章   生贄の系譜

    第四章   禁じられた女

    第五章   子育ては落日の彼方に

    第六章   しのび音

    第七章   夏の嵐、そして禁忌

    第八章   西施の愛人

    第九章   太初の職業

    第十章   雅な生き霊

    第十一章  悪魔の首に鈴を

    第十二章  身代わりの人形

    第十三章  木の葉の言い訳

    第十四章  冬の日の小さな陽だまり

    第十五章  鏡の沈黙

    第十六章  月の行方を

    第十七章  優秀な雌鳥

    第十八章  女であること、玩具であること

    第十九章  祭りの後は

    第二十章  芥子の香に目覚めて

    第二十一章 歌に詠めぬ心

    第二十二章 「夢」の清算
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