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志摩大晴《しま たいせい》は、香りで人の感情を嗅ぎ分けてしまう⸺そんな“嗅覚過敏”を抱えた大学一年生。
入学式の日、色んな人の不安や期待を嗅ぎ分ける中で、彼はひとつだけ特別な香りに出会う。
それは梅の花のように清らかで、胸の奥を締めつけるほど切ない“恋の匂い”だった。
誰のものかも分からぬまま、その香りは春風のように去っていったが、大晴の心にはいつまでも残り続ける。
やがて、大学生活の中で偶然すれ違った青年から、あの日と同じ香りが漂う。
「……この人だ」
確信した大晴は胸の高鳴りを抑えきれず、彼に近づこうとする。
けれど、その“香りの主”は、大晴を見るたびにまるで拒むように冷たい態度を取った。
半木眞弘《はんぎ まひろ》。いつもそっけない彼は、何故か香りの話をした時だけ嬉しそうな反応をしていた。
やがて、大晴は眞弘が調香師を目指していることを知る。そしてその先で、彼の切なくも甘い恋の匂いの相手に出会うこととなる⸺…。
文字数 7,598
最終更新日 2025.10.31
登録日 2025.10.31
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