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「あの時代」は現実にあったのだろうか…  昭和41年の出生率は極端に低い。この年の干支は「丙午」と言われ、生まれた女性は気が強く夫を食い殺すといった迷信がまことしやかに伝わっていたからである。しかしこの迷信は少なからず当たっていたことは後にわかることになる。確かにこの年生まれは男も女も気が強かった。それが顕著に表れるのが彼らが中学に上がったころからだ。そして二年後ピークを迎える。 「あの時代」…それは「丙午世代」が中学三年になった昭和五十五年だ。  当時、全国の中学校で校内暴力が同時多発的に起こり、中学校同士の抗争が繰り広げられていた。校舎のガラスは割れたまま、どうせすぐに割れるという理由で簡易的に段ボールが貼られている。廊下、トイレにはタバコの吸い殻が散乱。教室は唾の乾いた跡が汚らしく残る…  教師が自治を諦め警察に頼り、教育現場の治外法権が消滅したのもこの時代からだ。  本書は当時の中学校の荒廃を生徒視点、教師視点の両輪で描いたフィクションである。  ヤンキーを美化した話でも熱血教師の話でもない。虚勢を張る生徒と逃避する教師の泥臭い日常である。  舞台となる中央中学はこれまで真面目で不良生徒の少ない学校であった。しかし「丙午」世代により平和だった中学が変貌していく。その中心には6人の個性的なツッパリ生徒の存在があった。  当該生徒6人の担任をめぐって揉める職員会議から話ははじまる。そこから、教師との確執、戦わずして敗北する弱小集団、転校生によって変貌する意識、最強中学との再戦、受験をめぐる軋轢、職員室での暴動からはじめての警察出動、下級生からの下克上など、トラブルはとどまることを知らない。  並行して職員会議では、教頭、学年主任をはじめ臨時講師まで問題生徒に負けず劣らずクセの強い面々が揃い迷走していく。会議は踊り堂々巡りと先送りを続ける。教師間の不協和が深まり互いに批判を繰り返す。  生徒は何にイラついていたのか、教師は何を恐れていたのだろうか…
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文字数 86,102 最終更新日 2021.09.07 登録日 2021.07.31
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