伝わる文章術

ビジネス文書は気持ちが伝わるのが第一

2018.04.12 公式 伝わる文章術 第1回
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気持ちを伝える一文は
デキるビジネスマンのスキル

今回からスタートする「ビジネススキルがランクアップする!! 伝わる文章術」は、伝えたいことを伝えたい人に、より効果的に伝えるための文章の書き方を、さまざまなビジネスシーンに役立つような事例を交えて解説していく連載です。筆者である私は、出版プロデューサーとしてこれまでさまざまな業種・業界の方々と協力しながら、数多の本を世に送り出し続けて参りました。その経験の中で培った「文章で伝える力」を紹介していきたいと思います。最初のテーマは、ビジネス定型文に“気持ち”を表す一言を添えるテクニックです。

お礼状やお詫び状を除くと、大抵のビジネス文書は用件が伝わればそれでよいわけですから、簡潔であるほどよいビジネス文書といわれます。ですが、ほんの一文が添えられることで、無味乾燥で紋切り型の定型文に魅力的な彩が加わるのであれば、大いにその効果を活用してみるべきです。

メラビアンの法則にあるとおり、言葉の情報は視覚情報に比べ伝達能力で大きく劣ります。しかも忘れられやすい。ところが、そういう言語情報でも感動が伴っていれば伝わりやすく、記憶にも強く残るといわれます。文書に気持ちを込めるとは、いわば記憶に残る人になるためのスキルです。

私は、年末に支払明細書をクライアントから送ってもらっていますが、そこに

今年はおかげさまで昨年対比〇%伸ばすことができました。

とあると、自分が業績に貢献していないこと重々承知していても、ついうれしくなり、来年こそ貢献できるように頑張らねばと思います。そして、そういう一文を添えてくれた人のことは忘れません。

ビジネス文書のフォーマットは、現在、ネット上にいくらでもあります。定型文はその中からよさそうなものを選んで参考にすればよいでしょう。私自身、ビジネス文書のフォーマットは30年以上前の新入社員時代に覚えたものを、いまでも使っています。ビジネス文書のフォーマットはひとつ憶えておけば、概ね何とかなるものです。フォーマットに悩むよりは、どうやってそこへ気持ちを込めるかに神経を使ったほうがよかろうというのが私の経験から言えることです。

ビジネスとは、商品やサービスを媒介とした人と人の関係。ですから、つまるところビジネスで肝心なのは人間関係ということになります。文書に気持ちを込めて相手に伝えるのは、人間関係を良好にするためのビジネススキルです。したがって、ビジネス文書に自分の気持ちを込めて相手に伝えることができる人は、それだけ有効なビジネススキルを持っている人と言えます。

固有名詞を大切に、かつ有効に使おう

人間関係を良好にするための基本は、相手に対するリスペクトです。もちろんビジネス文書のフォーマットも、その点は十分に配慮されています。そこへさらに相手に対するリスペクトを表現する方法などないように見えますが、実はそうでもありません。欧米では、「世界で最も美しい響きを持つ単語とは自分の名前」と言います。ビジネス文書では、先方の固有名詞はあまり出しません。文書のあて名の欄に

〇〇会社
△△部◆◆課長 □□□□様

とあるだけで、本文中にはまず出て来ないのが一般的です。だからこそ、単に

いつもお世話になっております。

という決まり文句に相手の名前を加えるだけでも、印象はだいぶ変わります。もし、あなたの名前が田中さんであれば、

田中様にはいつもお世話になっております。

と固有名詞がひとつ入ることで、定型文であっても、もらった田中さんにとっては気分が悪くないはずです。本文中の用件についてでも、たとえば新製品の案内状を送るとき、その新商品を開発する過程で、得意先の田中さんがヒントをくれたとしたなら、単に

これまでよりずっと良い製品ができたと自信を持っております。

と自画自賛するよりも

田中様にいただいた一言のおかげで、これまでよりずっとよい製品をつくることができました。

と先方の厚意を讃える一言があるほうが印象はだいぶよくなります。

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  • 第1回 ビジネス文書は気持ちが伝わるのが第一

プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

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