伝わる文章術

詫び状は丁寧かつシンプルに、論理は無用。

2018.09.27 公式 伝わる文章術 第12回
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クレーム処理の基本と異なる詫び状の基本

対応が後手に回れば回るほど、事態は悪化するというのがクレーム処理の原則です。事態の把握や対策を整えてから「ご連絡」したのでは、事態を悪化させるというのが巷間(こうかん)いわれていることです。

こうした緊急を要する連絡の手段として手紙は不向きです。そこで活躍するのは今日では電話、メールとなります。

トラブルシューティングの段取りとしては、まず電話かメールで先方に連絡、次に先方へ訪問、それから詫び状というプロセスとなりましょう。詫び状という手紙を送るタイミングは、多くの場合、トラブル発生からだいぶ時間が経ってからで、何はなくともまずお詫びという段階ではありません。したがって、詫び状は電話やメールと異なる意味合いを持ちます。

口頭でのお詫びは、時間の経過とともに流れ去る傾向がありますし、メールは記録性を持ちますが、文書に比べるとやはり印象は軽いです。詫び状には、文書による正式のお詫びという形式的な重みがあります。

また、時間が経過している以上、ただ詫びるだけでなく、何らかの善処、改善の意思を適切な形で示すことも詫び状には求められることです。こうした点から、クレーム処理の基本と詫び状の基本は異なるのです。

時間の経過にふさわしい文面で詫びる

詫び状を書くということは、こちらに非があったと認めているわけですから、何とか反省の意思を示し、誠意を感じてもらうことが詫び状の目的となります。したがって、ついつい「何はなくともまずお詫びする」ことばかりに気持ちが傾斜しがちです。しかし、先述したとおり詫び状を送る段階では、すでに「とにかくお詫び」の段階を過ぎていますから、詫びるだけでは相手に誠意が伝わりません。

そこで、

<文例A>
今般はこちらの連絡ミスにより多大なご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。衷心(ちゅうしん)よりお詫び申し上げます。
今回の一件は、こちらがご連絡したものと勝手に思い込み、再度のご確認を怠ったことから生じた事態であり、深く反省しております。
今後このようなことが起きることのないよう、チーム一同で今回の一件を心に刻み、再び貴社の信頼を取り戻せるよう全力で取り組む所存でございます。

一応、お詫びの形にはなっていますが、受け取る側としてはトラブルから時間が経過しているのですから、もうすこし情報が欲しいはずです。情報はビジネスですから、この件で生じた損害補償もそのひとつでしょうし、今後トラブルを防止する上でのルールなどについても触れておくほうがよいと思います。

それが下記の例文です。

<文例B>
今般はこちらの連絡ミスで多大なご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。衷心よりお詫び申し上げます。
今回の一件では、物流の再手配による経費増、店舗展開の遅れに対する補償などの貴社に損害が生じさせてしまいました。
重ねてお詫び申し上げますとともに、本件に係る損害に尽きましては、先日お詫びに伺いました折に申し上げた通り、全額を当社で補償させていただきます。
また、今回の一件はこちらが再度のご確認を怠ったことがトラブルの原因と認識し、今後このようなことが起きることのないよう、貴社との間で円滑な情報の共有ができるよう受発注システムを改善いたしたいと考えております。
システム改善につきましては、その段取りを含め、改めてご相談に伺いたいと存じます。チーム一同で今回の一件を心に刻み、再び貴社に信頼していただけるよう全力で取り組む所存でございます。

まず①反省と誠意を示す、②経済的な補償について記す、③再発防止ついて方向を見せるという3要素が、最低でも詫び状には必要と思います。

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プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

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