伝わる文章術

メールで大事なことは、最初の3行で伝える

2018.11.08 公式 伝わる文章術 第15回
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大事なのは書いた事実より正しく伝わること

メールというメディアは手紙よりも手っ取り早く、会話と違って記録が残るというのが特長です。手紙よりも手っ取り早く、会話と違って記録が残るというメールの特長は、逆にいえば、手紙より速く次から次へと流れるため、記録には残っても記憶に残りづらく、会話と違って念を押し、繰り返しがしづらいともいえます。

記録が残るといっても、事故があったときのアリバイにしかならないのでは、あまり意味があるとはいえません。肝心なのは書いた記録が残っていることではなく、書いたことがきちんと相手に伝わることにあります。

「書いてあります」というのは、事故があったときの保険にはなるものの、それより大切なのは事故を起こさないことです。そのためにはメールという伝達手段の特性を踏まえ、伝えるべきことが正しく伝わることに腐心する必要があります。

意外と気にかけられないメールの見出し

私もそうですが、多くの人はメールをチェックするとき、だれからのメールかで重要度を判断する傾向があります。見出しに「緊急」とあっても、ひょっとすると見過ごされているかもしれません。メールの本文も基本的な用件がわかったら、長いメールを最後までチェックすることはないように思います。そのため、最後まで読まないと用件のわからないメール文は、やや億劫がられる恐れもあります。

多くの人がそうやってメールをチェックしているとあれば、メールを書くほうもその点を前提にしたメール文を心がけなければなりません。そうしないと相手にきちんと伝わらないからです。

<文例A 理由を前に用件を後ろに持ってきているメール文>
先日のお打ち合わせでは、長期間の耐久性という観点からプランAを採用という結論になりました。
弊社もいったんその方向で動き出すことにしましたが、今後想定されるビジネス環境の変化および弊社の取引先の拡大を考慮しますと、安定して長持ちするシステムよりも、適宜に改変可能なシステムのほうが弊社には適しているという判断に至りました。
つきましては、誠に勝手ながら先日プランAとした結論を白紙に戻し、改めてプランBに変更しご提案をいただきたいと存じます。

ことが重大な案件であれば、これくらいていねいな文章も妥当といえるでしょう。しかし、相手にとってもそれほど深刻ではなく、十分に対応可能なことがらであれば、結論から伝えるほうが相手にとって好都合という場合もあります。

<文例B 結論を前に理由を後ろに持ってきたメール>
先日のお打ち合わせでプランAと結論づけた件ですが、誠に勝手ながらいったん白紙に戻し、改めてプランBに変更しご提案いただきたく存じます。
先日のお打ち合わせでは長期間の耐久性という観点からプランAを採用という結論になり、弊社もいったんその方向で動き出すことにしました。
しかしながら、今後想定されるビジネス環境の変化および弊社の取引先の拡大を考慮しますと、安定して長持ちするシステムよりも、適宜に改変可能なシステムのほうが弊社には適しているという判断に至りました。

よくある仕様変更レベルのことであれば、用件が速やかに伝わる形式のほうがメールというコミュニケーション手段には適していると思います。

メールの基本は短い連続パス

メールは短文のやりとりが基本で、サッカーでいえば短いパスの連続でゲームをつくるポゼッション・サッカーということになります。一気にエリアを稼ぐ、すなわちいっぺんに多くのことを伝える、あるいは確認するには不向きなメディアです。したがって、もし長めのメールを送らなければならない場合でも、重要度の高いことから順に述べることを心がけるべきです。後ろのほうにいくほど、伝わればよいが、いま伝わらなくても次回に伝えればよいという程度のものを置きます。

商談のオファーがメールであり、先方から打合せの日時について問い合わせがあったとします。このとき肝心なことは先方に訪問する日時を決めることですが、できれば先方の予算や計画についても事前に知りたいところです。しかし、この順序をあべこべにするべきではありません。

<文例C 問い合わせの返事を後ろに持ってきたメール>
今般は弊社にお声をかけていただき誠にありがとうございます。
つきましてはご訪問した際に適切なお話ができますよう、貴社のご計画、ご予算等について概略を事前にご教示いただけますと幸いです。
ご訪問の日時は、来週でしたらスケジュール調整が可能ですので、〇〇さまのご都合をお知らせいただけましたら、そこにお合わせいたします。
もし今週のほうがよろしいようでしたら〇日×時は貴社へお伺いすることが可能です。

先方のメールの主たる用件は打合せ日時の問い合わせですから、やはり話はそちらが先で、予算や計画については次回のメールでも十分に間に合うというくらいの扱いでよいと思います。

<文例D 問い合わせの返事を前に持ってきたメール>
今般は弊社にお声をかけていただき誠にありがとうございます。
ご訪問の日時につきましては、来週でしたらスケジュール調整が可能ですので、〇〇さまのご都合をお知らせいただけましたら、そこにお合わせいたします。
もし今週のほうがよろしいようでしたら〇日×時は貴社へお伺いすることが可能です。
また、ご訪問した際に適切なお話ができますよう、機会がございましたら貴社のご計画、ご予算等についてもあらかじめ概略をお知らせいただけますと幸いです。

メールでも、手紙でも、やはり肝心なことは相手が何を求めてメールを送ってきたのか、その点を理解することにあると思います。

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プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

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