伝わる文章術

ビジネスメールで「誤解を生まない」ための3つの方法

2018.11.22 公式 伝わる文章術 第16回
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メールの誤解を避ける基本は「気配り」

メールに限らず誤解の起きる原因の多くは、いわゆるボタンのかけ違いといわれるものです。お互いの付き合いが短いうちは双方に遠慮がありますから、言葉の選び方も慎重でめったに行き違いは起きないものです。ところがすこし付き合いが長くなるにつれ、すこしくだけた言い方でお互いの距離をさらに縮めようとすることがあります。

こちらは親しいつもりでいても、相手はこちらが思っているほど親しい関係とは考えていないというときに、あまり露骨な言い方をすると気まずい事態を招きかねません。

たとえばやや面倒な仕事が終わった後に、お互いの苦労をねぎらい、次はうまくやろうという激励のつもりで下記のようなメールを書いたとします。

<文例A ねぎらいと激励のつもりのメール>
この前はトラブル続きでお互い大変でしたね。
次はうまくやりましょう。

お互いが同等の立場なら、このメールでねぎらいと激励は伝わるかもしれません。しかし、もし取引先へのメールだとすると、「この前はトラブル続きでお互い大変でしたね」は苦情ともとれますし、「次はうまくやりましょう」は釘を刺されたと受け取ることもできます。

そうした誤解を極力避けるには、親しい仲であっても、メールでは丁寧さのレベルを一段上げる「気配り」が必要です。

<文例B 相手の心理に気を配ったメール>
この前はトラブル続きで〇〇さんにはご苦労をおかけしました。
次はこちらの準備をしっかり整えて臨むようにいたします。
今後ともよろしくお願いいたします。

トラブルの原因がどちらにあるかは別として、こういうメールであれば、相手は自分が非難されていると感じることはありません。

「思い込み」でメールを書くのは危険

メールのやりとりは連続性の中で行われますから、前提の認識が異なっていれば誤解は深まるばかりです。前提の認識が異なる原因の多くは、思い込みによるものです。簡単な例としては、「メールを送ったのだから見ているはず」という思い込みが引き起こす誤解があります。

たとえば、次のようなメールを上司に送ったとします。

「現在懸案の業務改善について〇〇部の△△さんが詳しいそうです。一度相談してみようと思います」

上司からこのメールの返信はありませんでした。しかし部下は上司が承知していると思い込み、△△さんに会って業務改革について有力な情報と全面的な協力の言質を得ました。部下は早速グッドニュースとして上司に次のメールを送りました。

<文例C 上司が承知しているという思い込みのメール文>
業務改革の件、〇〇部の△△さんが全面的に協力してくれることになりました。
次回からミーティングにも参加してくれるそうです。

上司が承知していればこれはグッドニュースです。ところが、実際には上司は〇〇部の△△さんのことは初耳ですから、いきなりこんなメールが来たら「自分の承諾もなしに何を勝手なことやっているのか」と怒るかもしれません。途中で上司に確認を取ればよいように思えますが、実際にはさまざまな事情で確認がとれないこともあります。

そこで、上司は承知してないかもしれないという前提でメールを書くとこうなります。

<文例D 上司は承知していないかもしれないという前提のメール>
業務改革について、〇〇部の△△さんが詳しいというのでお話を聞きました。
かつて業務改革のリーダーを務めたこともあるそうで、理論面でもしっかりした知識をお持ちでした。
部長がよろしければ、一度改めて協力を要請したいと思います。
△△さんは我々の取り組みに好意的で、必要であればミーティングに参加してもよいと言ってくれています。

情報収集はしているが、話は勝手に進めていないという含みを持たせ、上司のメンツをつぶさない配慮をしています。

「慎重」が高じてネガティブ過ぎるメールもダメ

わかっているはず、知っているはずという思い込みを前提としたメールは、思わぬ誤解を生むと警戒するべきです。同じ社内でも誤解が生じるのですから、社外の人である取引先との間ではさらに注意深いメールを心がける必要があります。

ただしあまり慎重になり過ぎると、今度はせっかくのビジネスチャンスを逃しかねません。
ネガティブな情報ばかりを並べていたら、相手はこちらを見込みなしと考え、話を別のところへ持っていってしまうでしょう。メールの書き方ひとつで、ビジネスの行方は大きく変わることもあります。

仮に、メーカーと販社を仲介する商社の担当が、ある製品を販社に紹介し、そのときの様子をメーカーへメールで伝えたとします。メーカーと親しくなっている担当者は、すこしくだけた表現で、販社が指摘した製品の課題についてこう書きました。

<文例E ネガティブな情報に軸足を置いたメール>
〇〇販売(株)の△△社長はこの分野の事業拡大を考えていましたので、貴社製品を紹介するにはラッキーなタイミングでした。
ところが製品のアピールポイントである汎用性については、いまのお客に汎用性は受けない、むしろ汎用性はないほうがよいと散々でした。
アピールの仕方を変えましょうかね。

商社の担当は、製品は販社の方針に沿っているものの、販社が扱いを決めるか否かは、けっして楽観できないということをメールで臭わせたかったのですが、これではメーカーにこの販社との取引をあきらめろと言っているようなものです。

結果、メーカーはこの製品の仲介を他の商社に任せようかと考える恐れさえあります。商社にとって、メーカーも販社も大事なお客さまです。親しくなっているといっても、メールで安易にネガティブな情報を並べると、とんでもない誤解を与えかねません。ちょっと面倒でも、情報は「ネガ」と「ポジ」を並記すべきです。

<文例D ネガ、ポジ両方の情報を記したメール>
〇〇販売(株)の△△社長はこの分野の事業拡大を考えていましたので、貴社製品に興味津々で、紹介するにはラッキーなタイミングでした。
しかし、まだ楽観はできません。
全体としては前向きでしたが、貴社製品のアピールポイントである汎用性については、いまのお客に汎用性は受けないということです。
この点では検討すべき宿題が残りました。

社外の人とのメールは、すこしくどいくらいでもよいと思います。

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プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

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