伝わる文章術

レポートの極意は、魔法の数字「3」の活用

2018.12.13 公式 伝わる文章術 第17回
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盛り過ぎはかえってNG

人気の高級旅館と不人気の旅館では、際立った違いがひとつあります。それは料理の量。概して不人気の旅館ほど料理の量が多い。とても一回では食べきれないというくらいの量が出されることがあります。

旅館にしてみれば、精一杯のサービスのつもりでも、お客は食べている途中で箸をつけるのもつらくなってきます。結果、よい印象が残らないのでリピートや、誰かに紹介するということも期待できません。

対して高級旅館は、概して品数はあっても量が少ない。量より質重視で、やや物足りなくても最後まで食事を楽しむことができますから、お客はよい印象を持って帰ります。「過ぎたるは及ばざるが如し」ではなく、「過ぎたるは及ばざるに如かず」といえます。

文章も同様で、すべてを一度に言い尽くそうと盛り込みすぎたレポートは、結局何が言いたいのかわからないこととなり、微に入り細を穿(うが)とうとするあまり、事象を網羅しすぎたレビューは論点が散漫になってしまいます。読み手に関心を抱かせれば、そのレポート・レビューは成功といえます。読む側を食傷させてはいけません。

量より質という視点から、改めてレポート・レビューのクオリティを考えてみると、新しい発見があるかもしれません。

だれが書いたか気になるレポートを書こう

たとえば、新製品の売れ行きについてレポートするとします。すべての事象についてレポートしようとすると、あれもこれもとなって結局下記のような文章になりがちです。

<文例A 現状網羅型のレポート>
新製品の市場投入後一ヵ月の状況について報告します。
市場全体では売れ行きはまだら模様という状況です。
その中で、都市部の店舗では比較的健闘しているところが多いといえます。しかし、都市部でも傾向は一律というわけではなく、やはりまだら模様にあります。
一方、郊外の店舗での動きは、都市部に比べるといまひとつです。しかし、わずかながら郊外店でも、店長が新製品を理解し評価してくれている店では、売上に伸びが見えます。

これでは結局よいところはよいが、悪いところは悪いと言っているに過ぎません。報告者の見解や独自の視点がない、読み手まかせのレポートでは、評価に値しないレポートと判断されてしまいます。報告者の見解を打ち出すには、あれもこれもではなく、ポイントを絞ったレポートを心がけるべきです。

<文例B 注目点を絞り込み見解を加えたレポート>
新製品の市場投入後一カ月の状況について報告します。
市場全体としては、都市部の店舗では比較的健闘、郊外店の動きはやや鈍いという傾向です。
しかし注目すべきは、店長が新製品を理解し、評価してくれている店では売上が伸びている点で、都市部、郊外にかかわらず、店長へのアプローチが今後の営業方針の鍵となる可能性があります。

レポートは、PDCAサイクルでいえばC(チェック)に相当します。チェックは次のA(アクション)にむすびついてこそ意味があります。単なるチェック止まりのレポートでは、十分なレポートとはいえません。

魔法の数字「3」を駆使しよう

何かについてレビューするとき、課題の如何にかかわらず、そこにはいくつもの条件が重なっているものです。しかし、それらをすべて均等に扱っていては、永遠に課題の解決には到達できません。

<文例C 条件羅列型のレビュー>
商品Aの売れ行きを改善するには、もう一度製品の評価をしてみる必要があります。
お客さまが商品を選ぶときには、どんな条件があるでしょうか。流行、価格、機能性、利便性、耐久性、デザイン、扱いやすさ、安全性、ブランドなど、さまざまです。
では、それぞれの条件別にわが社の商品を再アセスメントしてみます。

要求されているのは、すべての条件を洗い出すことではなく、肝心な課題を解決する糸口を見つけることにあります。そのためのレビューです。上記のレビューは、一応正論ではありますが、条件を並べ過ぎるあまり、問題の核心が見えづらくなってしまいました。問題が把握しづらくては、正しいアセスメントはできません。

問題を正しく刻み出すには、勇気を持って問題を絞り込むことも大事です。ではいくつに絞り込めばよいのか。以前にエグゼクティブサマリーの部分でも述べましたが、要点というのは「3つ」にまとめるとよいとされています。

<文例D 条件を3つに絞ったレビュー >
商品Aの売れ行きを改善するには、もう一度製品の評価をしてみる必要があります。
お客さまが商品を選ぶときの条件は好み、性能、価格の3つです。
わが社の商品をこの3つで分析したとき、それぞれ他社商品と比較して十分かという観点で再アセスメントしてみるべきです。

諸条件のうち、流行、ブランド、デザインは好みに包含し、機能性、利便性、耐久性、扱いやすさ、安全性は性能としてまとめ、そこに価格を加え3つの条件とします。

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プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

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