伝わる文章術

レポートの極意は、魔法の数字「3」の活用

2018.12.13 公式 伝わる文章術 第17回
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ひとつは意外な驚きを加えよう

レポートやレビューは奇をてらう類のものではありませんから、事実は事実として報告し、評価することが大前提です。しかし、読んだ人が一目置くようなレポートやレビューには、それだけではなく、必ず意外な視点からの発見や独自の見解が示されています。評価されるレポート・レビューを書くには、その点を意識することも大事です。

<文例E 新評価制度に関するレビュー>
新評価制度導入後、社員の同制度に対する評価は以下のとおりです。
KPIの改訂により、だれが何をすべきかが明確にわかるようになった。
プロセス評価によって、結果に対する評価がより精密になった。
360度評価が導入されて、リーダーの行動に改善が見られるようになった。

このレビューでは、制度導入を決定した経営陣にとっては、すべて想定の範囲内のことばかりで、格別意外なことは書かれていません。驚きのないレビューでは、印象に残らないですから、大きく評価されることもありません。

<文例F 異なる見方を1点加えたレビュー>
新評価制度導入後、社員の同制度に対する評価は以下のとおりです。
KPIの改訂により、だれが何をすべきかが明確にわかるようになった。
プロセス評価によって、結果に対する評価がより精密になった。
360度評価が導入されて、リーダーの部下に対するコミュニケーション・レベルが大きく上がった。上司から部下へ積極的にあいさつする光景も日常的となっている。

最後に具体的な事象を加えることで、レビュー作成者の細かな目配りが印象付けられることとなります。

コラム いますぐ簡単にできる
文章のブラッシュアップ法 その17
否定の言葉を避けると人格者の文章になる

伝わる文章を書くうえでは、ときにきっぱりと言い切ることも必要です。しかしきっぱりとしている文章は、主張がはっきりしてわかりやすい反面、傲慢やうぬぼれと曲解され、思わぬ反感を買う恐れもあります。といって読み手におもねってばかりいては、あいまいな文章となって、これもよい文章とはいえません。

では、伝えるべきことを伝えつつ、人間性を誤解されない文章を書くにはどうすればよいでしょうか。ひとつの方法は、できるだけ強い否定語を使わないことです。強い否定の言葉を避けることで、傲慢さや自惚れといったマイナスの印象を薄めることができます。

<文例① 強い否定語を使った文>
ムダな会議を残したままで、残業を減らすという愚かな要求は言語道断であり、到底受け入れることはできません。

ここで強い否定語とは、ムダ、愚か、言語道断、到底できませんの4つです。これらを言い換えると文章の印象が変わります。

<文例② 強い否定語を避けた文>
重複した会議を残したままで、残業を減らすという要求は、我々では力不足で達成は難しいと思います。

それぞれ会議の多さが残業の原因という認識は共通ですが、前者が剣呑(けんのん)であるのに対し、後者は過剰な会議の改善を求める穏当な文章になっています。

主観を述べるときも否定語はやめよう

自己の主観でものを言うときには、ついつい強めの言葉を使いがちです。しかし主観とは、自分自身の内面の表われでもあるため、人格を判断される材料ともなります。言葉づかいは慎重であるべきです。

次の2つの文を見比べてください。

<文例③ 率直すぎる文>
A社の新製品を試したが、まったく期待外れだった。デザインも私の嫌いな色を基調としているし、二度と使いたくない。元のデザインに戻すべきだ。

<文例④ 否定語を避けた文>
A社の新製品を試したが、やや自分勝手に期待を膨らましたせいか、思っていたものと違っていた。デザインの色調も私にはなじめなかった。私は既存の製品を使い続けたいと思う。

文章は檄文(げきぶん)よりも冷静なほうが、正しくスムーズに伝わるものです。強い言葉を使わなくても、意外に気持ちは相手に伝わっていきます。

次回に続く

 

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プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

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