伝わる文章術

メールは面倒でも、ひと手間かけてトラブル予防

2019.01.24 公式 伝わる文章術 第20回
Getty Images

NOというときには説明が必須

承諾や吉報を伝えるメールでは、「OKです」「成功です!」と書くだけで十分なことが多いと思います。メールを受け取るほうは期待にかなった返事が来ているわけですので、詳細について記載がなくてもあまり気にしません。ハッピーメールには理由はなくてもよいのです。

しかし、YESに説明は無用でも、NOとなるとそうはいきません。メールを受け取る相手としては、自分の意に沿わないメールを受け取ることとなりますので、それ相応の理由がないと納得できないものです。

受け取る側の立場からすれば、YESは寡黙、NOは雄弁が基本ということになります。一方メールを送る側は、逆にハッピーメールでは雄弁で、残念なメールを送るときはあまり語りたくないものです。上手なコミュニケーションの基本は、相手の立場に立つことですから、NOというときほど、その理由をていねいに語るべきということとなります。

とはいえ、メールというメディアの特性から、あまり長い説明は相応しくありません。したがって長い説明や釈明を要するような深刻な事案は、メールで伝えるという方法は避けたほうがよいかもしれません。

メールでNOというときは、比較的軽い事案についてということになりますが、それでもNOである以上は、きちんと理由を告げることを習慣としたほうがよいと思います。

たとえば異業種交流会、あるいは同窓会などの幹事を依頼されたが、もろもろの事情で断る場合でも、その理由は書き加えておくほうがよいでしょう。

<文例A NOとだけ伝えるメール>
大変光栄なお話ですが、ご辞退させていただきたく存じます。

これだけでは、意思は伝わるものの、ずいぶんぶっきらぼうな人という印象を相手与えてしまいます。

<文例B NOの理由を書き加えたメール>
大変光栄なお話ですが、ご辞退させていただきたく存じます。
諸先輩を差し置いて、私のような未熟者がそのような大役を務めることは分不相応でございます。これまでどおり、幹事の方々のサポートに力を尽くしたくお願い申し上げます。

単なるお断りではなく、その理由を述べ、さらに幹事はNOでも、その代替案(裏方としてサポート)を示すことで一層誠意は伝わるはずです。

せめて「ひと言」を添える習慣を

お断りのメールを送る場合は、手紙でもメールでも同様ですが、ネガティブな話題に終始せず、ひと言でもポジティブな言葉を添えることが基本です。ネガティブな話題にはNOやNGというお断りのケース、それにお詫びやクレームなどがあります。こうしたメールでも、ポジティブなひと言を添えるだけで、印象はガラリと変わるものです。

<文例C クレームだけのメール>
最近、納期遅れが多発しております。
また、その連絡も直前になることが多く、毎回対応に苦労している次第です。根本的な改善を求めます。

用件は果たしておりますので、このメールでも不可ではありません。しかし、ひと言添えるとメールに付加価値が加わります。

<文例D クレームにひと言添えたメール>
最近、納期遅れが多発しております。
また、その連絡も直前になることが多く、毎回対応に苦労している次第です。根本的な改善を求めます。
前回の製品はお客さまに大変好評でした。これからも貴社の技術を信じ、よい仕事を期待し続けます。

前半はクレーム、後半はエールということになりましょうか。

メールで他人の悪口は厳×

ネガティブメールといえば人の悪口ですが、悪口ではなくとも、軽い気持ちでだれかを批判することはありがちなことです。メールは会話に近いため、軽い会話のつもりでついだれかを批判してしまうことがあります。しかし、メールは会話と違い、言葉が強く響き、かつ残ります。

したがってメールで悪口は厳禁、厳×(げんばつ)です。しかし話の成り行き上、批判が避けられないということもあります。そういうときは、可能な限り批判の鋭さを抑制し、批判するにしても事実関係を述べ、論理的であること。調子に乗って批判を繰り広げていると、自分が思っている以上に相手からは「人の悪口ばかり言う人」と誤解されかねません。

だれかの批判をするときには、悪い点ばかりをあげつらうのではなく、必ずよい点に関しても言及するという習慣をつけておくとよいでしょう。できればよい点3つに対して批判が1つくらいのバランスが理想ですが、せめて欠点を批判した後には、美点も1つは添えておくべきです。

<文例E 批判するだけのメール>
〇△さんは、確かに約束にルーズですね。
お客さまのところへ同行したとき、時間になっても来なくて私も困ったときがあります。

軽い批判ですが、こういうメールでも一人歩きすると意外に大きなハレーションを起こすことがあります。

<文例F 批判だけでなく美点にも言及したメール>
〇△さんは確かに約束にルーズですね。
お客さまのところへ同行したとき、時間になっても来なくて私も困ったときがあります。
でも、〇△さんは商品についての専門知識がすごいですね。何度が助けてもらってもいます。

最後のひと言が、書き手の評判を落とさないための「安全保障」になります。

ご感想はこちら

プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

ピックアップブログ推薦 出版をご希望の方へ

公式連載