伝わる文章術

できる人のメールは3行以内で用件が伝わる

2019.02.14 公式 伝わる文章術 第21回
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偉い人ほど3行以上メールを読まない傾向に

上司や取引先に送るメールは、できるだけ懇切丁寧に、委細漏れなく伝えたいと気を使うものです。ところがせっかく熱筆をふるっても、最後まで読んでいないのか、あまり詳細まで伝わっていないことのほうが多いのも事実。

その理由は、偉い人は読むべき文書類が多いので、メールに限らずいちいち細かくは読んでいられないという事情にあるようです。昔、歴代総理の相談役といわれた瀬島龍三(せじまりゅうぞう)氏は、偉い人に何かを伝えるには3行以内のメモで渡しなさいと言っていました。
何かの判断を求めるときも、三択の〇×式でどれがよいかを選んでもらうほうがよいという話もあります。

偉い人は忙しいのでこうした傾向になるのですが、実はこの傾向は必ずしも偉い人だけではなく、意外に多くの人に当てはまるようです。もちろん3行といっても、「いつも大変お世話になっております。〇〇の件でご連絡いたします」などの枕詞は、カウントしません。本題、用件の部分です。

伝えるべき用件はひとつに

3行以内で伝えるには、まず伝えるべき用件を絞り込む必要があります。それもできれば1つの用件に絞り込むことが肝心です。たとえば社内の偉い人に、担当プロジェクトの進捗について報告するとします。

万事に順調であれば「順調です」のひと言で用件は済みますが、現実には万事順調なプロジェクトはありません。何かしら想定外のアクシデントが起こるものです。そうしたアクシデントの発生も含んだ報告だと、どうしても多くを書き込みたくなるのでメールは長めとなってしまいます。

<文例A 用件を絞らないままのメール>
お疲れさまです。
〇△社のプロジェクトの進捗についてご報告いたします。
プロジェクトの第3ステージに入って新しい問題が見つかりました。
設備機器の技術開発が進み、当初導入予定だった機械はスペックがすでに旧式であることがわかりました。
最新機器を導入すると設備全体を見直す必要があります。
設備変更によって期待される成果も拡大が見込まれますが、予算の膨張を伴うことになりますので、費用対効果を確認するため目下資料を整えているところです。
資料がそろった段階で、改めてご報告いたします。

上記のメールでは、冒頭の「お疲れさまです。〇△社のプロジェクトの進捗についてご報告いたします。」を除いたとしても、とても3行以内には収まりません。
上記メールは問題を婉曲的に書いていますが、伝えたい用件は、プロジェクトに新しい問題が生じたこと、計画段階より設備機械の技術レベルが上がり機種変更に迫られたこと、機種変更に向けて費用対効果の計算をしていることの3つです。

偉い人がこのメールを読めば、問題は機種変更の予算アップと、その結果成果がどれだけ上がると期待できるかであることはすぐわかります。したがって用件をはじめからその点に絞り込みます。つまり伝えるべき用件は、「設備の機種を変更すべく費用対効果の計算をしている」ということになります。

<文例B 用件をひとつに絞り込んだメール>
お疲れさまです。
〇△社のプロジェクトの進捗についてご報告いたします。
導入予定だった機械ではスペックが旧式化しているため、機種変更を検討しています。目下、機種の変更による費用対効果の計算をしていますので、結果が出た段階で改めてご報告いたします。

設備変更によって予算の膨張を伴うが、期待される成果も拡大が見込まれるという補足を付け加えたければ用件の後ろに続けます。3行を超える説明は補足であって、伝えたい用件の核心ではありません。そういう組み立てをすると、一見複雑なことも意外にシンプルにまとめることができます。基本は最初の3行で用件を伝えることです。

人情としては、計画段階では設備機器の技術開発は進んでおらず、プロジェクトが経過する間に技術開発が進んだということも言い添えたいところですが、こうした補足は概して読まれません。

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プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

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