伝わる文章術

社内外の偉い人に向けた、心に響くメール作法

2019.05.09 公式 伝わる文章術 第27回
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メールは納得より共感

偉い人に何かお願いごとをするときは、肝心なことは会ったときに面と向かって頼む。これが基本です。
これは相手の偉い人が社内の人でも、外部の人でも同じ。
メールでお願いごとを書き送って、メールで了承をもらおうという考えは、偉い人が相手では、ほぼ通用しません。
もし、社内の偉い人にメールで依頼の用件を詳細に書いて送っても、「用があるなら直接ここまで説明に来い」と言われるはずです。
それでも説明に来いと言われればラッキーなほうで、何のレスポンスもなくやきもきするだけに終わることも少なくありません。

外部の偉い人相手では、メールでお願いごとをしてもいくら待っても9分9厘返信メールが来ることはないはずです。
では、メールは無用化というとそうではありません。メールには、会って話すための段取りという大事な役割があります。
したがってお願いごと、頼みごとのメールはメールだけで完結させようと思わず、メールは相手と面会するチャンスをもらうことを目的とすべきと言えます。
ですので、何のために会いたいのかをこまごまと書くのは逆効果です。
詳細の説明は納得してもらうために必要な段取りですが、メールの段取りでは納得の前に共感を得る。この点に集中する必要があります。

心に響くひと言で相手の関心を掴もう

偉い人のところには、あちこちからメールが飛んできます。
お願いごとを送ってくるのも、一人や二人ではありません。一つひとつの内容をチェックするというのは、物理的にも困難です。
メールで納得を得るよりも、共感を得ることに重点を置くのは、こうした事情を考慮してのこと。
また、共感を得られれば「じゃあ会ってみるか」となるものです。
そこで重要となるのが、相手が関心を持たざるを得ないキーワードの存在です。100の説明よりひとつのキーワード、それでメールの成否が決まります。
説明はあるが、心に響くキーワードがないメールというのは、下記のようなパターンです。

<文例A お願い事の中味を細かく書いたメール>
半年後に市場へ投入する新製品の販促は、従来の3倍の予算をネットPRにかけたいと思っております。
新製品のユーザーは年齢層、ライフスタイルともにネットとの親和性が高いと考えています。販促企画書を添付しておりますので、どうか本企画にご賛同いただけますようお願いいたします。
必要でしたらいつでもご説明に伺います。

次に「新製品の成功」という社内の人にとって無視できないキーワードを中心に文章を組んでみます。

<文例B 会ってもらうためにまず共感を得るメール>
半年後に市場へ投入する新製品の成功のためには、従来とは異なる思い切ったPRが必要だと思っています。
新製品のユーザーと最も親和性が高いネットで販促したいと考えておりますので、どうかご相談に伺う機会をいただきたく存じます。

どんなに偉い人でも、「新製品の成功のため」という言葉には必ず共感するはずです。
PR戦略の詳細について納得してもらうのは、会って説明するときでよいので、メールの段階では欲張らずに面会のチャンスをもらうにとどめること。
メールは「寸止め」でよいのです。
何がキーワードとなるかは、相手のことをよく観察し、相手の立場になって考えるしかありません。

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プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

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