伝わる文章術

仕事ができる人は、フォローの手段にメールを使う

2019.05.23 公式 伝わる文章術 第28回
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フォローが決め手になることもある

デリケートな話題や誰かに何か頼みごとをするときは、会って話す。これがコミュニケーションの基本中の基本かと思います。
したがってお詫び、頼みごと、根回しを、いきなりメールで行うことは感心できません。

一方で、メールをうまく使う人は、電話や面談の後にメールを一通入れているものです。
昔、三島由紀夫がデート直後の電話一本が効果的だということを言っていました。
デートの成否は、フォローで決まるということでしょうか。三島由紀夫は、意外にそういう軽いテーマも扱える幅の広い作家だったのです。

それはともかく、メールは込み入ったデリケートな話題には向きませんが、そのフォローには十分な効果を発揮します。まず、面談なり電話なりで先に話をして、それから後にメールを送る。この順序なら話の筋はある程度見えていますから、メールはそう長い文とはなりません。この順序を間違えるとメールは長くなりますし、それを電話でフォローしようとすれば、ますます事態は混乱を深めてしまいます。

たとえば品質に対するクレームと、その善後策をいきなりメールで送るとこうなります。

<文例A 第一報をメールで送った場合>
弊社検査基準を満たさない製品の納入が多出しております。
至急、不良品の回収と交換をお願いいたします。
今後の課題として、不良率の改善、精度誤差の明確化、また生産スケジュールがタイトになると不良率の上がる傾向があるため、弊社の生産計画と貴社の生産計画の情報共有をはかりたいと考えております。

突然このようなクレームのメールをもらったら、先方は冒頭の2行で直ちに行動し、3行目以降はほぼ頭に残っていないのではないでしょうか。
そのフォローを電話でやろうとしても、相手はパニック状態ですから、しばらくは善後策には取りかかれません。

メールでは明確さを意識して

次に、まず電話で先方の担当者にクレームを出し、そこで経緯などについて先方と話し合いをします。ひととおり話を済ませた後にメールを送るというケースでは、メールの本文は下記のようになります。

<文例B フォローとしてのメールの場合>
電話でお伝えしたとおり、検査基準を満たさない製品が多出しております。
今後の課題として不良率0.001%以下、精度誤差0.1ミリ以内の安定化、また当社の生産計画と貴社の生産計画の情報共有をはかりたいと考えております。
貴社の技術をもってすれば、必ず解決できるものと確信しております。我々も協力を惜しみませんので何卒よろしくお願いいたします。

電話でひととおり話しているため、了解済みのことは省略し、伝えるべきことはより明確(目標の数値化)に伝えます。

メールの心得は「文字は話し言葉よりも強い」ですから、明確な要件や条件は改めてメールで送ることで効果的となります。
最後の一行も文字の強さが加わることで、より効果的に相手へ響くはずです。
電話や面談の際のいわゆる口約束(口約束でも立派な約束ですが)よりも、メールの文字となることで、そこに決定感が出てくるわけです。

それでも見ていない人がいるのも事実ですから、メールを送ったからよいというわけではありませんが、くさびにはなります。

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プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

著書

ちょっとしたことで差がつくメールの書き方

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