伝わる文章術

できる上司はメールでも上手に部下をほめる

2019.08.22 公式 伝わる文章術 第34回
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「頑張ったね」か「よくやった」か

日常的にモバイルでメールをやりとりするのが当たり前の今日、部下から商談の成功や製品の完成報告をメールで受けることもあります。
その返信もメールで送ることになるわけですが、一律に「おめでとう」というだけでは、やや物足りません。もうひとつ部下の心に響く言葉を送りたいものです。

ところが相手の心に響く言葉とは、時と場合、それに人によって違いがあるからです。A君には響いた言葉が、B君には反発されるということがあります。
今回は、人のタイプによる言葉の響き方の違いについて見ていきます。

一般に、女性はプロセスの努力を認めてもらうことを望み、男性は結果を認めてもらいたいと思っていると言われます。詳しく聞いてみると、女性でも必ずしも努力を認めてもらうことを望むとは限らないし、男性も結果ばかりではないようです。
それは男性的女性、女性的男性の存在が心の中にあるからだそうですが、いずれにしても人はプロセスの努力を重視するタイプと、結果を重視するタイプに分かれます。

結果重視のタイプの部下に、プロセスの努力を称賛するメールを送っても、相手に響くメールとはなりません。一方、プロセスの努力を優先するタイプに結果をほめても、あまりよろこんでもらえないということになります。
相手に応じたほめ方、賞賛の仕方をするのは、メールに限らずコミュニケーションの基本でもあります。

プロセス重視の人には「頑張ったね」が効く

部下がプロセス重視タイプなのか、結果重視タイプなのかは、日常の発言や行動を見ていればわかります。
もし部下のタイプが分からないとしたら、今日からでもプロセス重視タイプか、結果重視タイプかを念頭に置いて見てみることです。ひと月も経たないうちに、それぞれの傾向は見えてくるはずです。
さて、成果をあげた部下に対してほめるメールを送るとき、部下がプロセス重視タイプであれば、次のようなメールはNGです。

<文例A プロセスを無視したメール>
おめでとう。君が今回あげた成果は私の部下の中でも一番のお手柄です。
結果にはきちんと報いたいと思います。
ボーナス楽しみにしていてください。

ありがたい言葉が並んでいて、このメールをもらった部下は感激するはずと思いますが、プロセス重視タイプの部下としては、肝心のプロセスにはまったく触れられていないため心から喜べません。

また、プロセス重視タイプは周囲との調和を重視し、競争を好まない傾向にありますので、他の部下との比較や報酬の話はかえって逆効果になる恐れがあります。
逆効果とは、「上司は自分のことをまったくわかっていない」という部下の反感です。
プロセス重視型の部下には、成果をあげる過程の努力を讃えるほうが、彼らの心には響くのです。

<文例B プロセス重視タイプの部下に適したメール>
おめでとう。君が毎日遅くまで頑張っていた努力が報われましたね。
部のみんなもとても喜んでいます。
よく頑張りました。ありがとう。

プロセス重視タイプの部下には、プロセスでの努力を称賛するほうがよろこばれるのです。

結果重視タイプの部下は「よくやった」とほめる

プロセス重視タイプの部下に対して、結果重視タイプの部下は文例Aのようなメールがよいということになります。
結果重視タイプにプロセスの努力を認めても、「それが何」という反応になります。
彼らの価値観は、努力しても結果が悪ければ無意味、また結果がよければ努力していなくてもOKというものですから、ある意味で上司としては扱いやすい相手と言えます。

結果重視タイプには、周囲に対するライバル意識もあるので、他の部下と比較して優れた結果を出したと言われれば、素直にそこで喜びます。また、ボーナス査定でも、この結果が評価されるとわかれば、さらに感激することでしょう。
こういう点でも、結果重視タイプはわかりやすい人です。

しかし、一般に人が感動を覚えるのはプロセスの努力に対してであり、結果で感動するということは、よほどでない限りありません。
上司も人の子、ついついプロセスの努力のほうに目が行ってしまうのはやむを得ないところです。
ただ、プロセスの努力ばかりに注目していると、せっかく結果を出している結果重視タイプが浮かばれないことになります。
概して、プロセス重視タイプは「頑張ったね」と言われたほうがよく、結果重視タイプは「よくやった」と言われて喜ぶとされます。

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プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

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