伝わる文章術

コミュニケーションのすれ違いを起さないタイプ別メール術

2019.09.12 公式 伝わる文章術 第35回
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言い方ひとつでコミュニケーションは結果が変わる

メールは文字によるコミュニケーションですが、顔や声の「表情」がないため、文字の意味がむき出しになります。
その結果、言葉が想定外にキツイ印象となったり、無用な誤解を招いたりすることがあります。いずれも望まぬ結果ですが、コミュニケーションにはこうしたギャップがつきものです。同じ日本語を使ってコミュニケーションをしているのに、どうしてこんなすれ違いが起きるのか不思議でなりません。

コミュニケーションのすれ違いでよく例になるのが、「やってないじゃないか」と言うと、「いまやろうと思っていたのに、そう言われたらやりたくなくなる」と返されるというパターンです。噛み合ってない状態とは、こういうことをいうのでしょう。

こうしたすれ違いが起こる原因のひとつには、性格によるものもあるようです。
コミュニケーションには、性格に応じたやり方があるので、相手の性格に合わないコミュニケーションのとり方をすると、上記のようなすれ違いが起きると言われます。
性格の分析は、血液型占いのように単純ではないものの、いくつかの類型に分けることはできるようです。

性格によって異なる、響く言葉と響かない言葉

性格の類型では、心理学者エリック・バーンの提唱したTA(交流分析)で使われるエゴグラムが有名です。
エゴグラムは、人の性格を「CP」(厳格さ、規律を重視する性格)、「NP」(愛着、親和性を重視する性格)、「A」(論理性を重視する性格)、「FC」(自由を重視する性格)、「AC」(従順、協調を重視する性格)の5つに類型します。

ひとりの人間の中には、この5つの性格要素があり、いずれかの性格が強く表れる、あるいは弱く作用することでコミュニケーションの反応が変わってくる。
また、状況によっても、いずれかの性格が発現するので、ひとりの人を「CPタイプ」「Aタイプ」と限定することはできません。
それでも性格に応じたコミュニケーションはあるので、性格別に適切なメールの言い回しを紹介します。

<文例A 「CP」の強いタイプに不適切なメール>
期日までにきちんとやってください。

規律に厳格なCPタイプは、もとより約束事に几帳面ですから、こうしたリマインドメールには、「言われるまでもない」と反応します。
ですので、本当にわかっているかどうかは別として、相手は「わかっている人」という扱いでリマインドするほうが適切です。

<文例B 「CP」の強いタイプに適切なメール>
いつも正確に納期を守っていただきありがとうございます。
〇〇の件もよろしくお願いいたします。

「CPタイプ」には自尊心を傷つけないよう、ていねいに対応することが基本です。
一方、「NP」の強いタイプには、冒頭のコミュニケーションのすれ違いの例で見たとおり「やってないじゃないか」と問い詰めると、「いまからやろうと思っていたのに」という反応が返って来ます。

親和性を重視する「NP」の強いタイプには、「いつもご苦労さま。手間をかけるけど頼むよ」という共感性の強いメールを送ると、「できる限り早くやります」という望ましい返事が来るはずです。

相手を上手にコントロールするメール

「Aタイプ」の性格は論理性重視ですので、メールに「なぜ」がないと、よい反応が返ってきません。
なぜそうなのか、そこに論理と数字があると理論派のAタイプは納得します。

<文例C Aの強いタイプに不適切なメール>
前の工程で部品にバラツキがあったので、お手数ですがやり直しの手配をお願いします。

「A」の性格が強いタイプは、決まったから決まったとおりにやれとか、とにかくうまくやってくれというような曖昧な指示では動きが鈍くなります。
数字と論理で理由を記すことで、「Aタイプ」は納得し、適切に動きはじめます。

<文例D 「A」の強いタイプに適切なメール>
前の工程で、部品に誤差±0.5ミリを超えるバラツキが全体の2割ありました。2割は返品しますので、±0.5ミリ以内に修正してくださるよう手配をお願いします。

「A」の性格が強いタイプの行動パターンというのは、ビジネスパーソンに最も多く見られるタイプでもあります。
ビジネスにおける基本的な行動傾向とも言えるはずです。

<文例E 「FC」の強いタイプに不適切なメール>
どうもしっくりこないので、デザイン案をもう2点つくってくれませんか。

「FC」の性格の強い人は、よくいえば自由奔放、悪くいえば勝手気ままですから、上手に乗せてやることが大切です。
「どうもしっくりこないな」などと言われると、たちまちやる気を失うタイプですから、扱い方を間違えると難しい人にしてしまいかねません。
基本的には批判するより、ほめるほうがFCタイプには効き目があります。

<文例F FCの強いタイプに適切なメール>
とてもよいデザインで大変好評です。
ついては、さらに2点バリエーションを変えた斬新なものもほしいと思います。

文例Eでは渋ったFCタイプでも、文例Fならすぐに対応してくれるかもしれません。

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プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

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