なめてくるバカを黙らせる技術

「なめられる人」が気づいていない5つの大損害

2025.03.12 公式 なめてくるバカを黙らせる技術 第3回
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「いつも私だけ扱いが雑」「待ち合わせをするといつも遅刻される」「損な役回りを押しつけられがち」
気にしても仕方ないと思いつつ、「私、なめられてるのかな」と悩んでしまう。そんな人は少なくないようです。じつは、この「なめる/なめられる」問題はささいなことのようで、人間関係、仕事、ひいては人生すべてさえ左右する重要なトピックスです。
実業家でライターでもある黒坂岳央氏は、グローバル企業で多国籍な環境での勤務経験、独立起業を経て、「なめられると人生で損をする」という真理にたどり着いたそうです。この連載を通し、なめられないようにするためのノウハウ「なめてくるバカを黙らせる技術」を指南します。

なめられる人が失う5つのもの

第1回、第2回と、ここまでの話を読んでもらったことで、なめられるといかに損をするかがわかったと思う。
ここからは、なめられると何がどれだけ具体的に損をするか? という損失度合いを取り上げていこう。

1.時間

なんと言っても、なめられることで時間を奪われる。え? 誰に奪われるのか? それはなめてくる相手にだ。
具体的に解説しよう。たとえば会社でのビジネスコミュニケーションにおいて、なめられると次のようなことが起きる。

・面倒で手間の多い雑務を押しつけられる
・話を真剣に聞いてもらえず軽くあしらわれる
・約束の時間に遅れて来られる

まず「面倒で手間の多い雑務を押しつけられる」について。
なめられることで、「こいつは黙ってやってくれるだろう」と本来は相手がやるべき仕事を押しつけられるのだ。しかも重要度が低く、スキルが育たない雑務ばかりを、だ。
その一方で頼んだ側は、あなたの労力を食うことで時間を得る。こうして、本来あなたが持っていた時間を、相手に横取りされた格好になるのだ。

続いて「話を真剣に聞いてもらえず軽くあしらわれる」について。
なめられている状況だと、相談や連絡をしても「今忙しいからまたあとで」と優先度を下げられたり、「そのくらい自分で考えろ」と追い払われたりする。それを真に受けて、待っていたり自己解決しようとしたりすると、本来の自分の業務が進められず、仕事が滞ってしまうだろう。
結果としてあなたは、「仕事ができない」という評価をくだされ、その責任を負わされることになるのだ。

そしてきわめつけが、相手が「約束の時間に遅れて来られる」ことだ。
会議でも打ち合わせでも、必ずと言っていいほど遅れて来る人がいる。そういう人は100%相手をなめている、と言える。たとえば、強力な人事権を持つ社長や人事部の役員の待ち合わせに遅れる人が世の中にどれだけいるだろうか? 強面のチンピラを待たせる人がいるだろうか?
そう、遅刻というのは100%相手をなめていないとできない行為なのである。そして遅刻をされて待たされるあなたは、時間を取られて損をするわけだ。

このように、なめられる人は多くの時間を損している。それは、なめられていない人には想像できないほどで、なめられていない人の何倍、何十倍にも及ぶ時間をムダにされているのである。

2.お金

なめられて失うものの2つ目は、お金である。
わかりやすい事例が、借金だ。
「頼む、必ず返すからお金を貸して!」、このように頼まれれば、「貸してもお金が返ってこないかもしれない」という不安を感じるのと同時に、これはなめられやすい人によくあるメンタリティーなのだが、「自分を頼ってくれているんだ」という嬉しさが湧き上がってきてしまう。

しかし、借金をする側からしてみれば、借金の申し込みをしている時点で、信用を失うことを重々承知しているのだ。
だからこそ借金をする側は、本当に心から失いたくない相手からは借金を気軽にしない。
本人も信用を失うことがわかっていて、縁を切っても問題ないと思っている関係性の薄い相手か、もしくは何をしても怒らない相手を選んでいるのだ。

同じような事例に、ねずみ講や宗教の勧誘がある。
筆者は、ねずみ講や宗教によく勧誘されてきた側で、欲しいとは微塵も思わない高額な鍋や洗剤を買わされたり、宗教の入会を迫られ軟禁されたりしてきた。
そうした経験のいずれにおいても、勧誘してきた相手は筆者と特別仲の良い親友という感じではなかった。知り合って早い段階で、「今度お話ししない?」と誘われていたのだ。
つまり、「いざとなれば損切りすればいい。あわよくば勧誘やセールスに成功すれば儲けもの」という対象として、自分は選ばれてきたわけだ。

いずれにしてもなめられやすい人は、なめられない人に比べて、こうしたお金のトラブルに巻き込まれやすい。
「関係性が切れてもいい」と思わているか、もしくは「こいつは何しても関係性を切らないだろう」と思わているからこそ、お金をかすめ取る標的にされてしまうのである。

3.自尊心

なめられて失うものの3つ目は、自尊心である。
「相手から雑に扱われた」「軽い存在と認識されている」、誰でもそう感じると、とうてい気持ちの良いものではない。
それが続けば、「自分は相手からバカにされるような価値がない存在なんだ」と徐々に自己肯定感が削られていくことは想像に難くない。

たとえば職場において、他の同僚の話をしっかり傾聴する上司が、自分の場合だけ適当にあしらって早々に切り上げるような態度を続けていたら、自分の価値は周囲よりも低いと認識するようになるだろう。

直接態度で示されなくても、自尊心は削られ、自己評価が大きく下がる。
本来の実力とかけ離れた安い給料をもらい続けると「自分はこの程度の価値の人間だ」という基準が作られてしまい、転職する際にその基準から大きく外れない安い仕事を選ぶようになってしまうという。
こうした自尊心の問題は、会社員以上にフリーランスにとって重大で、安い仕事ばかり受けるフリーランスは、自分の仕事の価値も安く感じてしまい、高い報酬の仕事を避け、安い報酬の仕事ばかりを受けるようになってしまうのだ。

これらは、なめられたことで失われた自尊心を取り戻すことの難しさを示している。
なめられるのを良しとする風潮もあるが、削られた自尊心を取り戻すのは難しいという観点から見ても、やはりなめられることは害しかないのだ。

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プロフィール

黒坂岳央
黒坂岳央

シカゴの大学で会計学を専攻し卒業。複数の東証プライム上場企業でキャリアを積んだ後、独立。アゴラ、プレジデント、Yahooニュースなどの雑誌やネットメディアでの記事執筆実績を多数持つ。地上波テレビ出演、ラジオ番組にも出演し、これまでに商業出版された書籍は3冊を数える。

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