話しやすい人になれば人生が変わる

絶大に信頼されるようになるには、「話をさえぎらない」を意識すればいい

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誰かの話をさえぎって話しても、いいことはまったくない

今回は、話しやすい人と思われるための、少し高度な「話の聞き方/聴き方」についてお話ししましょう。

私が人と話をするときにいつも心がけているのが、「話を途中でさえぎらないこと」です。
取材でも、ライブやイベントで司会をしているときでも、バーで接客をしているときでも、プライベートで人と話をしているときでも、基本的には、相手がひと通り話し終えるのを待ってから質問をしたり、自分の感想や考えを述べたりするようにしています。
また、もし発言のタイミングが誰かとぶつかったら、基本的には相手に譲るようにしています。

「それのどこが高度なのか」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、「相手の話を最後まで聞く」「自分が発言するよりも、相手の話を聞くことを優先する」というのは、意外と難しいものです。
なぜなら、「今、これを言いたい」という衝動、「今、話しておかないと、忘れてしまう」という不安、「早く話を進めたい」「早く結末が知りたい」という性急さ、「発言することで、自分の存在をアピールしたい」「(誰かと議論をしているときに)相手の言い分を封じ込めて、自分が正しさを主張したい」という欲求などから、他人の話をさえぎってしまう人は少なくないからです。

かくいう私も、昔は今よりもはるかに「自分が話したいことを、話したいときに話したい」という欲求が強く、人が発言しているときに口を挟み、話の腰を折ってしまったことがしばしばありました。
 
そうした欲求をある程度コントロールできるようになったのは、一つには、ライターの仕事や司会の仕事、バーでのアルバイトなどを通して、人の話を聞くことを学び、「自分が発言するよりも、人の考えを聞くほうが重要だし勉強になるし楽しい」という価値観にシフトしていったためです。

しかしそれ以上に大きかったのが、年齢と経験を重ねるうちに、「人の話をさえぎって話しても、いいことはまったくない」「大して自己アピールにならないどころか、むしろマイナスになる」と、身にしみてわかったことです。

誰かの話をさえぎって発言するとき、人はどうしても「自分が言いたいこと」にフォーカスをあててしまうので、相手の話をちゃんと聞いていません。
わかったつもりになっているけれど、本当はわかっていないことが多く、そのような状態で発する言葉は、話の流れから外れていたり、的外れであったりするため、「単に話の腰を折っただけ」になってしまいやすいのです。

しかも、話をさえぎられた人は、さえぎった人に対し、確実にネガティブな気持ちを抱きます。
そのような状態で、相手が自分の話を好意的に聞いてくれるはずがなく、たとえどんなにいいことを言ったとしても、なかなか素直に受け取ってはもらえないでしょう。

人の話をさえぎって発言するのは、百害あって一利なしと言ってもいいでしょう。
「今、話しておかないと、忘れてしまう」と不安なときは、メモをとればよいし、言うタイミングを逃してしまった言葉やメモできずに忘れてしまった言葉は、結局その場では必要のなかった言葉だと思ってあきらめるしかないのです。

ただ、時間がないときや、相手の話があまりにも長くて要領を得ないときなど、さえぎらなければどうにもならないこともあります。
そんなときは「さえぎってごめんなさい」と一言添えたうえで、口を挟むようにしましょう。

反復と沈黙を重ね、相手の話を丁寧に聴くことの大切さ

ところで、私はこれまで、ライター・エディターとして、さまざまな本に関わってきました。
その中でも、『もしあと1年で人生が終わるとしたら?』『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』(いずれもアスコム刊)といった、ホスピス医の小澤竹俊先生のご著書は、多くの読者の方からご好評をいただいています。

25年以上、人生の最終段階の医療に携わり、3500人を超える患者さんを看取ってこられた小澤先生のお話には、勉強になること、考えさせられることがとてもたくさんあったのですが、特に印象に残っていることの一つが「話の聴き方」です。

病気などにより、この世を去るときが迫っている患者さんの多くは、大変な苦しみを抱えています。
しかし、苦しんでいる人は、誰にでも自分の本当の気持ちを打ち明けるわけではありません。
もし誰かに自分の苦しみを伝えても、相手の反応から「この人にはわかってもらえない」と感じると、失望したり、孤独感に苛まれたり、苦しみが増したりしてしまうからです。

逆に、苦しんでいる人は、「自分の気持ちをわかってくれている」と思える誰かがいると喜びを感じ、そうした人にだけ自分の本当の気持ちを話します。
「自分の気持ちをわかってくれている」と思える誰かの存在は、苦しみをやわらげ、苦しんでいる人にとって大きな支えになります。

そして、小澤先生が、患者さんたちに「この人は、自分の気持ちをわかってくれている」と感じてもらえるために心がけているのが、患者さんの話を丁寧に聴き、患者さんの伝えたいメッセージをきちんと受け取ることだそうです。

たとえば、患者さんが「昨日の夜、あまり眠れませんでした」と言ったときに、「昼間、寝ていたからですよ」「少しくらい眠れなくても大丈夫ですよ」「睡眠導入剤を出しましょうか?」などと言うのはNG。
これらは、単なる気持ちの押しつけにすぎないため、患者さんは「この人は、自分の気持ちをわかってくれない」と感じ、本当の気持ちを話してくれることはありません。

では、どうすればいいのか。
まず大事なのは、「昨日の夜、眠れなかったんですね」といった具合に、患者さんの言葉のうち、重要なキーワードを反復することだそうです。
反復とは、相手の伝えたいメッセージをキャッチし、言語化し、相手に返すことだと小澤先生はおっしゃっています。

また、人は大切なことほど簡単に言葉にすることができません。
考えをまとめる時間が必要なこともあります。
患者さんが再び口を開くまで時間がかかったとしても、イライラしたりせずに沈黙し、次に患者さんが「少しは眠ることができても、すぐに目が覚めてしまうんです」と言ったら、今度は「すぐに目が覚めてしまうんですね」と反復する。

このように、反復と沈黙を重ねていくうちに、患者さんは「この人は私の話を丁寧に聴いてくれる」「この人は私の苦しみをわかってくれる」といった安心感や満足感を抱き、「このまま自分が死んでしまうのではないかと不安で眠れません」「家にいる家族のことが心配で眠れません」など、「昨日の夜、あまり眠れませんでした」という言葉の裏に隠れていた本当の気持ちを話してくれるようになるそうです。

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プロフィール

村本篤信
村本篤信

1972年大阪府生まれ。都立国立高校、一橋大学社会学部卒業。大日本印刷に入社後、フリーのライター、編集者に転身。 『3000円投資生活』シリーズ(横山光昭)をはじめ、累計250万部以上 の書籍を手がけたほか、取材記事、社史などのライティングを行い、2021年には『ロジカルメモ』(アスコム)を刊行。 2012年に「テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞」優秀賞を受賞して以降は、ドラマや舞台の脚本も執筆。 一方で、90年代よりホラー系ドラァグクイーン「エスムラルダ」として、各種イベント、メディア、舞台公演などに出演し、2018年からは及川眠子・中崎英也のプロデュースにより、ディーヴァ・ユニット「八方不美人」を結成。エスムラルダ名義でのコラムや書籍のライティングも行っている。

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