一生折れないビジネスメンタルのつくり方

名越康文 職場の対人関係に強くなる最強ツール「類人猿分類」

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仕事のメンタル問題の9割は対人関係

仕事の悩みというのは、突き詰めると9割が、対人関係にかかわる問題に集約されるのではないかと思います。

たとえば「営業が苦手」という人がいたとしても、それは「営業という仕事」が苦手というよりは、営業という仕事に必要不可欠な「対人関係」が苦手である、ということが多いのではないでしょうか。

また、一般的には対人関係の要素はそれほど関係ないと思われがちな研究開発や技術系の仕事であったとしても、仕事のなかで感じているストレスを紐解いていくと、対人関係に属するものが多いのではないでしょうか。どれだけ技術や知識があったとしても、たまたまその部署に苦手な上司がいて、関係性が悪化していたら、それだけで仕事の成果はまったく上がらなくなってしまうでしょう。

少なくとも、心理学的な見地から仕事に役立つアドバイスができるとしたら、その9割は、対人関係にかかわる問題だといっても過言ではないだろうと思います。

そこで今回は、職場の対人関係に直接的に効く、心理学的「ツール」をみなさんにご紹介したいと思います。

「苦手な相手」がいるから、自分の仕事は成り立っている

前回、「職場に10人の人がいれば、2人ぐらいは苦手な相手がいて当然だ」ということをお話しました。

ただ、ここで注意が必要なのは、あなたにとって「苦手な2人」は、誰にとっても「苦手な相手」というわけではない、ということです。たとえば、あなたにとって天敵ともいえる嫌な相手であっても、他の人にとっては「ただの同僚」に過ぎないかもしれないし、もしかしたら「職場で一番の信頼できる仲間」かもしれませんよね。

私たち一人ひとりの視野というのは、非常に限られたものです。自分の物の見方というのは、角度にたとえると、せいぜい30~40度程度の幅しかありません。きちんと物事を見ようと心がけて、時間をかけて観察しようとしても、視野に入ってくるのはせいぜい90度程度。360度すべての側面に光を当てる、ということは、悟りを開いたお釈迦さまでもなければ、不可能です。

「自分の視野には限界がある」ということに、言葉の意味だけではなく、いわば本質的に気づいておくことで、他人が不可解な言動をしたときに許せるようになり、相手に伝わる言い方を工夫できるようになってきます。こうした「自分の視野の限界」をわかりやすく体験させてくれるのが、「性格分類」というツールです。

人の感覚世界は驚嘆するほど「違う」

自分の物の見方や視野は限られたものに過ぎない。性格分類は、そのことを芯の部分で実感し、日々の仕事の中で生かしていくために非常に効果的なツールであると私は考えています。ここでは特に、ビジネス向けの性格分類として「類人猿分類」というものをご紹介しておきたいと思います。

類人猿分類はゴリラ、オランウータン、チンパンジー、ボノボという4タイプに人を分類するものです。広島県福山市で展開しているスーパーマーケットのエブリイの岡崎和江さんという方と私とで形にしました。株式会社エブリイホーミイホールディングスでは、この性格分類を人事に取り入れてから業績を大きく伸ばし、現在では株式会社エイチ・アイ・エスやサマンサタバサ、全国各地の学校、病院等で取り入れられ、大きな成果を上げています。

その模様は、テレビなどでも紹介されたので、もしかするとご存知の方もいらっしゃるかもしれません。詳しくは公式サイトや書籍が出ていますので、そちらをご覧ください。ここでは、心理学ツールとしての類人猿分類の特徴をご紹介しておきましょう。

類人猿分類の大きな特徴は、タイプ分けが4つと、少ないことです。以下に、4つのタイプの特徴を簡単にご紹介しておきます。

<職人気質のこだわり屋「オランウータンタイプ」>
ひとつのことを追求する集中力に長けているタイプです。ビジネスでは、戦略立案や分析などで大きな力を発揮します。またアイデアマンですので、新しい事業を考えることに力を発揮する人もいます。マイペースで人に合わせる、思い計ることを軽視する傾向があり、チームで協力して仕事をするのは苦手です。

<平和主義の安定志向「ゴリラタイプ」>
全体の調和や安定を維持することを望むタイプです。単調な作業の繰り返しであっても、飽きずに続ける根気強さがあります。また、事前準備を丁寧に行い、チーム全員の意見を聞き、気遣いながら調整をしていくことができます。一方で、やや融通が利かず、仕事のコツをつかむまでに時間がかかります。

<勝ち負け重視の積極屋「チンパンジータイプ」>
考えるよりも即行動の実践派タイプ。新しい企画や事業立ち上げの際に先陣を切ってチャレンジをしていきます。コミュニケーション力に優れ、組織的に周りを巻き込みながら引っ張っていくのも得意ですので、リーダーにも向いています。思うようにいかないと、周囲に対して攻撃的で独善的になる傾向も持っています。

<ちょっと人恋しい話好き「ボノボタイプ」>
目の前の相手の心に寄り添い、同調するのが得意なタイプです。ボノボタイプがいると、チームの雰囲気が明るくなり、人間関係が円滑になります。また、お客さまが何を求めているかを感情のレベルからくみ取り、サービス向上につなげていくことができます。他者との関係性を大切にするため、他人への依存度が高くなる傾向を持っています。

では、自分のタイプや相手のタイプをどのように診断すればいいのでしょう? 類人猿分類では、以下の2つの質問に答えることで、自分や周囲のタイプを、簡易診断することができます。

質問A「感情を表に出すか、出さないか」
質問B「人生において大切にするのは追求・達成か、安心・安全か」

『類人猿分類公式マニュアル2.0 人間関係に必要な知恵はすべて類人猿に学んだ』より

たとえば、「感情を表に出す」「追求達成」を選んだ人は「チンパンジータイプ」というように分類するわけです。

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プロフィール

名越康文
名越康文

精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。専門は思春期精神医学、精神療法。
臨床に携わる一方、TVやラジオ番組でのコメンテーターや映画評論、漫画分析など、さまざまな分野で活躍する精神科医。
近著に『「SOLO TIME」ひとりぼっちこそが最強の生存戦略である」』などがある。

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