一生折れないビジネスメンタルのつくり方

名越康文 部下の「独り立ち」のために必要な「ストーリーを語る」力

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オープン・クエスチョンで
「全体像を把握する力」を伸ばす

部下に声をかけるときは、なるべく「イエス・ノーで答えられるクローズド・クエスチョン」ではなく、「次の新製品は、どれくらい売れるだろう?」「次はどんな商品をつくるべきだろう?」といったオープン・クエスチョンを投げかけてみる。

そうやって、部下にイチから「話」をさせてみると、部下が本当に仕事の全体像を把握しているのか、上司の言葉に反応しているだけなのかが見えてきます。

このとき、注意してほしいのは、「上司と部下の意見を一致させる」ことに力点を置かないということです。必要なのは、上司に同調するイエスマンではありません。部下の一人ひとりが仕事の全体像を把握したうえで、自分で考え、判断したことを筋道だって話ができているかどうかが大切です。

上司は心のどこかで「自分の部下は優秀だと信じたい」という気持ちを持っています。だから、部下と会話をしていると、つい先回りをして「俺は◯◯だと思うんだけど、君はどう思う?」という聴き方をしてしまう。でも、そうすると部下は「私もそう思います」と答えるだけで、会話が終わってしまいます。これでは、部下が全体像を捉えているのか、上司の言葉に付和雷同しているだけなのかの判断がつきません。

上司からのクローズドな質問に答えるだけであれば、全体像を捉えていなくても、いくらでも気の利いた答えができます。特に今はインターネットでいくらでも知識や情報を手に入れられる時代です。こうした時代においては、人はいくらでも自分を「優秀に見せる」ことができてしまうのです。

半年に一度ぐらいでもいいので、部下に何か一つのテーマについて話をさせる。それによって、部下がどれくらい仕事の全体像を把握しているのかを知り、その力を伸ばしていくように促していくことができるでしょう。

全体像を把握するトレーニング

全体像を把握する力をつけるには、ほかにも、さまざまなアプローチがあります。たとえば、「文章を書く」というのも有効なトレーニングです。別に、仕事に関わるテーマでなくても構いません。ある程度の長さがあって、自分以外の人が読んだときに、因果関係や理路がしっかりと伝わるように意識して文章を書いてみる。

実際にやってみると、「他人に伝わる文章を書く」ということの難しさがよくわかります。そして、断片的な情報で「わかったつもり」になっていただけで、本当は全体像をほとんど把握できていなかった自分にも気付くはずです。

いずれにしても重要なことは、二つです。つまり「全体像をイメージできること、そのイメージを他人に伝わる言葉をつむいでいくこと」です。断片的な知識で仕事をしているうちは、その仕事について知らない他人を納得させるだけのストーリーを語ることができません。

ひとつながりのストーリーを語る力。それが「独り立ち」に必要なスキルです。

さらに「オープン・クエスチョンでイチから話をさせる」ということも「まとまった文章を書く」ということも、全体像をイメージする力を高める方法でもあります。イメージを固めてそのストーリーを語れる。それこそが、仕事で独り立ちするための「壁」を超えるための道なのです。

次回に続く

 

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プロフィール

名越康文
名越康文

精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。専門は思春期精神医学、精神療法。
臨床に携わる一方、TVやラジオ番組でのコメンテーターや映画評論、漫画分析など、さまざまな分野で活躍する精神科医。
近著に『「SOLO TIME」ひとりぼっちこそが最強の生存戦略である」』などがある。

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