リーダーは“空気”をつくれ!

優れたリーダーほど〝相手目線〟で話す

2017.12.01 公式 リーダーは“空気”をつくれ! 第12回
Getty Images

自分がしてきた経験を部下に話す
育成熱心なリーダー

リーダーにとって、チームメンバーの人材育成は、時代を問わずいつでも大きなテーマです。多くのリーダーが、メンバー個々の性格や能力を考え、さまざまな試行錯誤をしていることでしょう。そして、どんな指導やアドバイスをすればよいのかと、常に頭を悩ませているのではないでしょうか。

今回紹介するリーダーは、これまで自分が経験、体験してきた実例を伝えることが、相手にとって最も理解しやすく、身に付きやすいだろうと考えている人物です。なので、今起こっていることを自分の過去の経験と重ね合わせながら指導、アドバイスをするように心がけているのが特徴です。このリーダーはメンバーとの信頼関係は築けているものの、自分の思いが必ずしもメンバー全員には伝わっていないジレンマも感じていました。

そんな中、あるメンバーとのやり取りをきっかけに、あらためて自分の経験、体験を相手にどう伝えていけばよいのかを考えるようになりました。この時のエピソードを通じて、人材育成につなげるための経験の伝え方を考えてみます。

あるチームリーダーMさんは、自らの経験も豊富で、人材育成にとても熱心なリーダーです。自分がまだ駆け出しの新人の頃、当時の自分を熱心に指導してくれたリーダーの存在がとても大きかったという思いから、メンバーには自分が経験してきたことを、できるだけ多く伝えていきたいと考えています。

Mさんが心がけているのは、できるだけ自分が経験してきた実例に基づいて、指導やアドバイスを行うことです。特に自分の中での「失敗体験」はメンバーにとって重要だと思い、そんな話を自分の苦労話として伝えるようにしています。行き詰まっていそうなメンバーを見かければ、できるだけ声をかけて話を聞き、「自分にもそんなことがあった」などと言って、励ましたり助言したり、直接仕事をやってみせたりすることもあります。

そうやって、一生懸命に指導するMさんに対して、チームのメンバーはいろいろと質問をしてきたり、アドバイスを求めてきたりするので、お互いのコミュニケーションは良好で、それなりに好感を持ってくれていることがわかります。

ただ、そんな中でもMさんは、時々メンバーの反応が物足りないと思うことがあります。ひと言でいえば「腹落ちしていない」という状態です。メンバーに理解できないこと、納得できないことを聞きながら、できるだけ自分の具体的な体験から語りかけますが、その時の反応の鈍さは変わらず、話せば話すほど逆効果になっていると感じることさえあります。そういうことができるだけ少なくなるように、Mさんなりにメンバーとの接し方をいろいろ考えていますが、なかなか思うようにいっていないのが実情です。

そんな中、仕事でミスをしてしまったあるメンバーを指導している時に、こんなことがありました。わりと早い段階で見つかったミスだったため、それほど大きな問題にはなりませんでしたが、落ち込んでいるこのメンバーを励まそうと思い、「自分にもそんなことがあった」「失敗は誰にでもあるもの」と語りかけ、「その時は自分もずいぶん落ち込んだけど、その後注意するきっかけになった」「自分の経験では、こういうやり方をすればミスは防げる」などといって、実際にやり方も見せようとしました。しかし、このメンバーの反応は薄く、あまり納得している感じではありません。

Mさんは指導やアドバイスをいろいろ続けましたが、最後にこのメンバーがMさんに対して言ったのは、「聞いていても自分にできることと思えない」ということでした。

一生懸命教えているつもりのMさんからすれば、少しショックな言葉でしたが、気を取り直して話の続きを聞いてみると、「Mさんの経験ではそうなのかもしれないが、自分はそんなに能力がないし、経験してきたことも違う」「具体的なやり方を言われるが、それでは古いと思ってしまうことがある」「いい方法だと思っても、時間がなかったり、今までのやり方と違いすぎたりしていて、実行できないことがある」などと言ってきます。

要するに「結局それは他人の経験談であり、自分に当てはまるとは思えない」ということです。自分ではよかれと思っていたことが、メンバーからは必ずしも共感されておらず、受け入れられていないことがあるとわかり、Mさんは考え込んでしまいました。

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プロフィール

小笠原隆夫(ピックアップブロガー)
小笠原隆夫(ピックアップブロガー)

IT業界出身の人事コンサルタント。豊富な現場経験をもとにさまざまな規模の企業に向けて、人事制度、採用支援、人事施策企画、研修等で、現場実態に即した支援を行っている。

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