リーダーは“空気”をつくれ!

意外と多い、「管理」と「マネジメント」を履き違えているリーダー

2018.05.18 公式 リーダーは“空気”をつくれ! 第23回
Getty Images

多くの人が混同している「管理」と「マネジメント」

「マネジメント」という言葉を日本語に置き換えると、多くの人は「管理」と答えます。「マネージャー」といえば「管理者」となるでしょう。しかし、この「管理」と「マネジメント」の間には、実は大きな違いがあります。そして、この違いをリーダーが理解していないことで、メンバーのモチベーションが下がってしまったり、チームの“空気”が悪くなったりしていることも少なくありません。

これに対して、チームをまとめる力があり、成果を上げているリーダーは、この「管理」と「マネジメント」が違っていることを理解しており、その場面に応じた使い分けを意識しています。今回はその違いがどういうことなのか、どんな捉え方や使い分けが適切なのかをお伝えします。

まず、「管理」という言葉の意味を辞書で調べてみると、「ある基準などから外れないように、全体を統制すること」とあります。これはすでに決まった計画、手順に基づいて、それが予定通りに進んでいるかを確認しながら、そこから逸脱しないように対策を講じるということです。進捗状況や予実のチェック、仕事内容によっては監視という要素が強くなりますが、これら「管理」をするためには、計画や企画、その他仕事を進める前提の変わる可能性が極めて低いことが条件になります。

一方で「マネジメント」は、一部では「管理」という意味が書かれていますが、多くの辞書では「○○マネジメント」など、どんな分野かをあらわす言葉とつなげて説明されています。これは、「マネジメント」という言葉に、「管理」よりもう少し広い意味があることを示しています。著名な経営学者のピーター・ドラッカーは、著書の中でマネジメントを、「組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関」と定義しています。こちらの方が実態には合っているでしょう。

チームの「マネジメント」に必要な要素には、「管理」が意味する「基準に対する統制」だけでなく、「現状評価・分析」「計画立案・実行」「判断・選択」「人員配置」「部下の指導・育成」「関係調整」「指揮・命令」「動機づけ・モチベーション」「リーダーシップ」など、とても多様な内容を含んでいます。ひと言でいえば、「管理」はメンバーの監視や統制を中心とした狭義のニュアンス、「マネジメント」は、そのチーム運営に必要な概念を統合した広義のニュアンスだといえるでしょう。

2つの違いに無意識でいると「管理」に偏りやすくなる

こうした話をすると、多くのリーダーは納得してくれますが、そういう人のほとんどは「自分のしているのは管理ではなくマネジメントだ」と思っています。確かにリーダーの仕事が「管理」の要素だけで完結するはずはなく、「マネジメント」を全くしないリーダーはほぼ存在しません。しかし、私が多くの現場でリーダーを見てきた経験では、両方の要素は確かにあっても、圧倒的に「管理」の比率が高いリーダー、また「管理」が適切でない場面で「管理」をしているリーダーが多いと感じます。

例えば、ある会社のリーダーがメンバーと面談をしている場面でしたが、そのやり取りの8割以上をリーダーだけが一方的に話していました。このリーダーは決してメンバーの言うことに対して聞く耳を持っていないわけではありませんが、それ以上に自分の考えをメンバーに伝えたい気持ちが強く、その結果としてリーダーからの一方的な情報伝達になってしまっています。リーダーが描いた段取り、基準、手順をメンバーに伝えて、その通りに動いてもらいたいということですが、これは「マネジメント」というよりも、メンバーの「管理」が主眼になっています。

これが「管理」にふさわしい場面、つまりあらかじめ決まった基準と手順で、仕事が予定通りに進んでいるかをチェックする目的の面談ならば問題はありません。メンバーのこれまでの仕事の進み具合を確認し、今後の進め方を伝達することがコミュニケーションの中心になりますから、リーダーからの話が多くなるのは当然でしょう。

しかし、この場面は本当にそれでよかったのでしょうか。もしもお互いの意見交換の中で、より多くの「マネジメント」の選択肢を見出そうとしているのであれば、会話の比率がこれほど偏ることはありません。メンバーから今の状況への考察や問題点、その他の情報を聞き出したり、周辺の業務状況を確認したりすることによって、「マネジメント」が必要な要素を見つけて、それに対する手を打たなければなりません。トラブル回避、予防措置、計画や予定変更の可能性、それが起こった場合の想定と準備など、「管理」しているだけでは足りないことがたくさんあります。

また、数字のとりまとめや報告資料作りに熱心なリーダーも、「管理」に偏りがちな傾向があります。「予定、計画を守る」という意識が強いために、せっかく数字や資料をまとめても、そこから「マネジメント」に必要な要素を読み取って手を打とうとせず、ただ予定や数字の達成度による「管理」だけをしようとします。

この例に見られるように、本来は「マネジメント」が必要な場面にもかかわらず、「管理」に偏っている実情は、現場のいたるところで見られます。さらに多くのリーダーはそのことを自覚できておらず、「管理」をしているだけなのに、それが「マネジメント」だと誤解しています。「管理」と「マネジメント」との違いを意識していないと、ついつい「管理」に偏りがちだということは知っておくべきでしょう。

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プロフィール

小笠原隆夫
小笠原隆夫

ユニティ・サポート代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社代表取締役社長

IT企業で開発SE職を務めた後、同社で新卒中途の採用活動、人事制度構築と運用、ほか人事マネージャー職などに従事。二度のM&Aでは責任者として制度や組織統合を担当。
2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表に。以降、人事コンサルタントとして、組織特性を見据えた人事戦略や人事制度策定、採用支援、CHRO(最高人事責任者)
支援など、人事・組織の課題解決に向けたコンサルティングをさまざまな企業に実施。
2012年3月より「BIP株式会社」にパートナーとして参画し、2013年3月より同社取締役、2017年2月より同社代表取締役社長。

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