リーダーは“空気”をつくれ!

自己中なリーダーほどメンバーに「あうんの呼吸」を求める

2018.06.01 公式 リーダーは“空気”をつくれ! 第24回
Getty Images

「言わずに伝わること」は当たり前ではない

「リーダーにとって、仕事がしやすいメンバー、信頼できるメンバーとはどんな人でしょうか」。こんな問いに対して、「自発的に動ける人」「意図をくんで先回りができる人」と答えるリーダーがいます。いちいち細かな指示をしなくても、その仕事に必要なことを理解し、過去にあった同じようなケース、それまでの経緯、さらに「リーダーだったらこう考えるだろう」ということまで、気を利かせて仕事を進めてくれるようなメンバーです。リーダーにとってはありがたい存在に違いありません。

実際にそんなメンバーが身近にいるのは稀ですが、リーダーというのは心のどこかで「以心伝心」や「あうんの呼吸」をメンバーに求めているところがあります。そういった本音があるせいで、いちいち指示をしなければ動けないメンバーや先回りできないメンバーを、ついつい手間がかかる面倒な人材だと思ってしまいます。

しかし、優れたリーダーは、メンバーに対して「あうんの呼吸」を一切求めず、必要なことは必ず言葉や文字にして伝えることを徹底しています。そうしなければチームの空気を悪くする危険があることがわかっているからです。今回は、この「あうんの呼吸」を例に、メンバーとのコミュニケーションにおいて、リーダーが心掛けなければならないことをお伝えします。

私は、いろいろなリーダーから「メンバーに対する不満」としてこんな言葉を聞くことがあります。

「同じことを何度も聞いてくる」
「当たり前のことなのにいちいち質問してくる」
「指示されないと動かない」

要は「言わないとやらない、できない」ということであり、「そんなこともわからないのか」「自分で考えてほしい」という気持ちです。

しかし、よく考えてみると、例えば会社には必ず経営理念や事業方針があり、チームでも必ず方針や目標が提示されているはずです。そして、それらの多くは言葉や文書に落とし込まれています。「何となく察して理解しなさい」と言われることはありません。ですが、これが現場でのコミュニケーションになった途端、「以心伝心」や「あうんの呼吸」を求めるリーダーが大勢いるのです。

「察する」「感じ取る」「先回りをする」といった能力がある人は確かにいますが、そういう関係になれるまでには複雑な条件があります。もともとの能力が高い、付き合いが長いなど、相互理解の問題は大前提であり、仮に長い付き合いがあったとしても、そもそもの価値観が違っていれば通じ合うのは簡単ではありません。いずれにしても、「常識」「当たり前」などとして、言わずに相手に伝わるというのは、本来かなり希少なケースだということをリーダーは知っておかなければなりません。

相手任せのコミュニケーションが「行き違い」を生む

リーダーの皆さんは、メンバーへの情報伝達や指導をした後、「何かあれば聞きに来なさい」と言うことも多いでしょう。ですが多くの場合、その場で相手に「わかったか?」と聞けば、「わかりました」「大丈夫です」と答える人が多いはずです。しかし、その中には理解できていて疑問がない人ばかりでなく、曖昧に何となくわかった気になっている人、あるいは疑問が浮かばないほど理解度が低い人も含まれていることを理解しておかなければなりません。

そんな状態で仕事を進めれば、あとになって必ず疑問が出てきます。ただ、そこで「もうすでに説明した」と切り捨てたり、「なぜあのとき質問しなかったのか」などと責めたりすれば、言われたメンバーは確認がしづらくなり、以降のコミュニケーションは間違いなく減っていきます。「わかったか?」といって相手任せで終わらせず、否定的かつ威圧的でない「言葉」で、その人の理解度をきちんと確認しなければならないのです。大抵、コミュニケーションギャップはこんなところから起こります。

私がお会いしたリーダーの中には、「同じ質問は3回までしか受け付けない」と決めている人もいました。「同じことを言わせるな」を具体化した、一見わかりやすい基準のようですが、そもそもなぜ3回まではよくて4回目以降はダメなのかということに明確な理由はなく、「3回も言えばわかって当然」という程度のものなのです。こうした回数制限でコミュニケーションを切り捨てるのも、本人の理解度を確認していないという点では、同じように相手任せといえます。

もしメンバーの理解が最優先ならば、回数を問わず対応しなければなりません。やり取りをする手間や効率を憂慮するならば、もっと違う伝え方を考えなければなりません。いずれにしても、理解度を確認しない「相手任せのコミュニケーション」による問題は、ビジネスの現場では大きなことなのです。

ご感想はこちら

プロフィール

小笠原隆夫
小笠原隆夫

ユニティ・サポート代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社代表取締役社長

IT企業で開発SE職を務めた後、同社で新卒中途の採用活動、人事制度構築と運用、ほか人事マネージャー職などに従事。二度のM&Aでは責任者として制度や組織統合を担当。
2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表に。以降、人事コンサルタントとして、組織特性を見据えた人事戦略や人事制度策定、採用支援、CHRO(最高人事責任者)
支援など、人事・組織の課題解決に向けたコンサルティングをさまざまな企業に実施。
2012年3月より「BIP株式会社」にパートナーとして参画し、2013年3月より同社取締役、2017年2月より同社代表取締役社長。

ピックアップブログ推薦 出版をご希望の方へ

公式連載