小さな幸せの見つけ方

手の温もりから心の温もりへ

2017.12.04 公式 小さな幸せの見つけ方 第9回
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手を繋ぐことで感じる安心

先日、十数年来の仲の友人がアメリカから初めて来日しました。私と彼は20歳ほど歳が離れていましたが、一緒にアメリカの大学院で勉強し、苦楽を共にした学友です。歳上の彼からは英語はもちろん、アメリカでの生活の仕方など、いろいろなことを教えてもらい、精神的にも本当に助けてもらいました。そんな彼と久しぶりに再会できてた瞬間に興奮し抱きつくと、彼の横に中学生くらいの女の子がいることに気がつきました。

彼は、一人娘を一緒に連れてきていました。もちろん彼女も日本は初めてです。私は、彼に小さな娘さんがいたことに驚きましたが、せっかく遠いところから来てくれたのだからということで、二人の観光案内をさせてもらいました。

都内の寺社仏閣や定番の観光スポットなど、ワイワイ話をしながら、さまざまな場所を歩きました。しかし、途中で、娘さんが時差ボケの影響や慣れない生活環境もあってか、具合を悪くし、突然泣き出してしました。そして、歩くことができなくなりました。

そんな娘さんの姿を見て、友人はそっと彼女を自分の身体に引き寄せて抱き、しばらく何も言わず手を握っていました。すると、彼女は父親に身体を寄せながら一緒に歩き始めました。私はその光景を目にし、彼の父としての優しさに心が温かくなりました。きっと彼女は彼の手の温もりから、私以上に温かさを感じ、また自分を委ねることのできる「安心」を得たのだろうと思います。このお互いが寄り添う愛に包まれた様子に、私は冬の寒さを忘れていました。

また、つい最近のことですが、これは山口県の実家に帰省した時のことです。夕方、川の土手を犬と散歩していると、手を繋いでゆっくりと歩きながらおしゃべりしている老夫婦に会いました。この老夫婦は、近所に住む二人で、私が小さな頃からお世話になっている方々です。日頃、私は東京に身を置いているので、相手も久しぶりに会った私に驚き、しばらく立ち止まってお話をしました。

お話をしている時は手を離されていましたが、「それでは」とお互い深々と頭を下げて失礼すると、また手を繋がれて歩き始められました。私は、そんな微笑ましい二人の姿を見て、深い絆でつながりを持って、お互いを支えあって生活されているのだなと感じ、心が温かくなるのを感じました。

きっと、ご本人たちも、手を繋ぐことを通してお互いが委ね合っていることを実感し、大いなる「安心」を得ておられるのだろうと思いました。

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

1982年、山口県生まれ。浄土真宗本願寺派僧侶でありながら、通訳や翻訳も手掛ける。
龍谷大学卒業後に単身渡米。カリフォルニア州バークレーのGraduate Theological Union/Institute of Buddhist Studies(米国仏教大学院)に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。
帰国後は東京と山口県の自坊(超勝寺)を行き来しながら、僧侶として以外にも通訳・翻訳、執筆・講演などの活動を通じて、国内外への仏教伝道活動を実施。
翻訳著書も多数出版する傍ら、初級英語で仏教用語をやさしく解説した「英語でブッダ」(扶桑社)も非常に好評のほか、「お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺」(テレビ朝日系列)にも出演。次世代の日本の仏教界を牽引する逸材と称されている。

著書

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