小さな幸せの見つけ方

「有難い」と心から思う気持ちの大切さ

2018.02.05 公式 小さな幸せの見つけ方 第13回
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仕送りの段ボール

先日、家で一人留守番をしていると、宅配便の荷物が一つ届きました。送り主は、田舎の母からでした。段ボールを開けると、地元で採れたお米や野菜、手作りの漬け物をはじめ、さまざまなインスタント食品や、洗剤、靴下などがぎっしり詰まっていました。

私は35歳を過ぎた、いい大人です。東京で家庭を持ち、自立して生活できているのだから、わざわざ仕送りなんて送ってこなくていいのにと思いながらも、楽しみに段ボールの中をごそごそとあさっている自分がいました。後で妻に聞いたのですが、私が知らなかっただけで、母は頻繁に仕送りの段ボールを東京に送ってきてくれているそうです。どこまでも深い、母の思いやりに感謝です。

しかし、あらためて考えてみると、昔からよく仕送りの段ボールを送ってもらっていたことを思い出します。私は大学に通うために、地元の山口県を離れ、18歳の春から京都で独り暮らしを始めました。当初、親から離れてのびのび生活ができるという解放感を満喫していましたが、やはり独り暮らしに慣れないこともあり、どことなく寂しさを感じることもありました。

そんなとき、不思議と母からの仕送りの荷物が届き、本当に精神的に支えてもらっていました。段ボールの中には、お米、インスタント食品のほか、もうさすがに食べもしない、昔好きだった駄菓子などがよく入っていました。いつまでも子ども扱いしないでくれと、ブツブツ言いながらよく電話で御礼を伝えたものです。

この仕送りの物資によって、ずいぶんと経済的に助かりました。しかし、私にとって、実は段ボールの中味がどうであろうと関係ありませんでした。なぜならば、段ボールの中に詰め込んである物資よりも、段ボールに詰まった気持ちの方が嬉しかったからです。

段ボール箱を覗いてみると、隙間ができないように綺麗にさまざまなものがびっしり詰まっていました。その箱には、一つひとつにできる限り物を入れようと、丁寧に詰め込む母の様子が映し出されていました。すると、自然と熱いものが込み上げ、勉強を頑張ろうという気持ちを新たにしていました。

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

1982年、山口県生まれ。浄土真宗本願寺派僧侶でありながら、通訳や翻訳も手掛ける。
龍谷大学卒業後に単身渡米。カリフォルニア州バークレーのGraduate Theological Union/Institute of Buddhist Studies(米国仏教大学院)に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。
帰国後は東京と山口県の自坊(超勝寺)を行き来しながら、僧侶として以外にも通訳・翻訳、執筆・講演などの活動を通じて、国内外への仏教伝道活動を実施。
翻訳著書も多数出版する傍ら、日本古来の言葉に込められた仏教的知見をやさしく解説した「訳せない日本語」(アルファポリス)も非常に好評。次世代の日本の仏教界を牽引する逸材と称されている。

著書

訳せない日本語

アルファポリスのビジネスサイトで大人気の連載がついに書籍化!! 正確に英語で訳せない日本語にこそ、実は日本古来の文化や習慣、日本人の「心」が息...

端楽

浄土真宗本願寺派の僧侶であり、ハーバード大学研究員の経歴を持つお坊さんが、「働く」ことを仏教的な視点から解説し、人が働くことの意味と意義における...
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