人生100年時代を幸せに生きる明日への一歩

近すぎて見えない幸せと、遠すぎて心配しすぎるバランスのとり方

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遠くにいる人のことが異様に心配になる

遠くいる親、子ども、親族、愛する人、ふと離れて暮らす人のことを想い、恋しくなったり、とても心配になったりするようなことはないでしょうか。
核家族化や社会的孤立の進む現代社会において、このような感情を持つ方は多いはずです。とはいえ、人を想う優しい気持ちはとても大切なことですよね。

しかし、遠方にいる人への気持ちがあまりに強すぎて、その気持ちに自分が振り回されてしまっているということはありませんか?
例えば、余計な心配は無用だとわかっていても、いてもたってもいられなくなって東奔西走し、ついおせっかいをやいてしまう。その結果、自分の生活が崩れてしまい、精神的にも体力的にも疲れてしまうことなどないでしょうか。

私の周りにもそのような方々がおられます。端(はた)から見ていてやりすぎではないかなと思うほどお世話をされ、自分のことはそっちのけで忙しくされている方もおられます。それだけその人のことを大切に想われている証拠ではありますが、やはり疲弊されるのでしょうね。その方は度々体調を崩されています。

このように、いろいろな方にお話を聞くと、共通して言われるのが、心配が尽きず、その心配を掻き消すために何かしら行動しているということです。
しかし、心のどこかでは、このような状態から抜け出したいと願っているそうです。

今回は、このような状況のときの気持ちを少しでも落ち着かせることのできる考え方を紹介します。

~プラスに転換する考え方~
離れているからこその気持ち

まず、遠くの人のことを想う気持ちは一体何なのか考えてみます。結論を先に言うと、それは遠くに離れているからこそ認識できる「本来の気持ち」です。

大切な人がすぐ近くにいる場合、優しい気持ちを素直に伝えることはなかなか難しいことですよね。
大切な人が近くにいると、それが当たり前になりますし、どうしてもその人の見たくないものが目に入ってきたり、気にしなくてよいことを気にしてしまったり、そんなつもりはなくても口論やケンカに発展してしまうことに、心当たりのある方も多いのではないでしょうか。

一方、大切な人が遠方にいる場合、人の余計なものを見ることも気にすることもありませんよね。その結果、純粋に人を大切にしたいと思う気持ちだけが生まれてくるのではないでしょうか。
実は、これはその人に対する「本来の気持ち」です。しかし、近くいるとさまざまなものに妨害されてしまい、それらによって「本来の気持ち」が覆い隠され、なかなか素直に気持ちを表現することができなくなってしまうのではないでしょうか。

私はつい先日まで関東で生活し、山口県の両親とは遠く離れて生活していました。しかし、お寺の仕事の都合で、月一度は帰省している生活でした。
帰省するのは長くて3日です。父とは仲がよく、帰省した際は必ず一緒に晩酌をしながら、いろいろと話をしました。
しかし、母が言うには、日頃離れているからこその良好な関係だそうです。
確かに、3日以上帰省すると話すこともなくなり、お互い口数が減り、少し不穏な空気が流れてきます。

「本来の気持ち」は「近すぎると見えない」のかもしれませんね。
よい例が、手の平のしわです。右手でも左手でも構いませんので、手の平をひろげて鼻にくっつくまで近づけて下さい。その状態では誰も手の平のしわはぼやけてしまい、はっきり見ることはできないと思いますが、手の平を顔からある程度離すとよく見えてくると思います。

「本来の気持ち」は、まさのこの手の平のしわの例と同じです。本来持っている気持ちは、人が近くにいるとどうしても表現しづらくなってしまうではないでしょうか。遠くにいる人を想うということは、優しい「本来の気持ち」を取り戻している大切な時間なのです。自分には本来このような温かい気持ちがあることを受け止め、これまでと同じくその気持ちを大切にするように心掛けて下さい。

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺 住職
著述家/翻訳家

1982年、山口市(徳地)生まれ。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や仏教関係の書物の翻訳なども手掛け、執筆・講演・メディアなどの活動の場を幅広く持つ。2019年、龍谷大学 龍谷奨励賞を受賞。著書に『あなたは、あなた。』(アルファポリス)『超カンタン英語で仏教がよくわかる』(扶桑社) 『小さな幸せの見つけ方』(アルファポリス)など多数。

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