人生100年時代を幸せに生きる明日への一歩

人は誰しも「わがまま」なものと知る

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自分の思い通りにしたいと思ってしまう

当初はそんなつもりがなくても、無意識のうちに自分の思い通りにしようする言動をとってしまっているということに、心当たりのある方もおられるのではないでしょうか。

例えば、新しくできた友人がいるとします。最初は優しく接しようと、大切にしようと心掛けていても、気が付けば自分の都合のよい枠に当てはめ、接し方も当初とは随分と違うものになってしまったということはありませんか。

その過程では、自分の思い通りにならないことでストレスが積り、それが伝線して相手との間に不穏な雰囲気が流れ、衝突が避けられなくなったということを経験したことのある方も多いと思います。

そして、いくら「こんなはずじゃなかった」と後悔や反省をしても、また同じことを繰り返してしまう自分に悩む方もおられるのではないでしょうか。
言い換えるならば、どうしても自分の思い通りにしたいという心が作動しまう自分に嫌悪感を持っているということです。

そのような方に気持ちを楽にしてもらえる考え方を紹介します。

~プラスに転換する考え方~
誰しも自分勝手なものさしを振りかざす

まず、誰しも「自分の思い通りにしたい」と思う心は、必ず持っているものだと認識してください。周囲のあの人、この人も、メディアで見たり聞いたりする著名人でも同じです。

「自分の思い通りにしたい」という感情は、別の言葉で置き換えるならば、これは「自分のものさし」になると思います。
人はそれぞれ、さまざまな人生経験を通して物事を多角的に判断できるようになります。これは人間の素晴らしい能力の一つであることは間違いありませんが、別の見方をすれば自分の都合のよい「ものさし」が構築されているとも言えます。

例えば、どんなに善いことをするとしても、「自分が得をするように」「自分が傷つかないように」「自分が嫌われないように」など、実は気が付かないところで自分を中心とした計算をしているということです。
非常に辛いことですが、この事実を全否定することは誰もできないのではないでしょうか。

これを「煩悩(ぼんのう)」と言います。「煩悩」とは「悩みを煩(わずらわ)す」と読み解きますが、その正体は「自分を中心にして計算する心」です。厄介なのは、自分で気が付くことができないところでうごめくところです。

これはどんな聖人でも同じでした。浄土真宗の宗祖である親鸞聖人は、まさに自分自身を深く顧みて、自分の本性をこのような言葉で残されています。

悪性(あくしょう)さらにやめがたし
こころは蛇蝎(じゃかつ)のごとくなり
修善(しゅうぜん)も雑毒(ぞうどく)なるゆえに
虚仮(こけ)の行とぞなづけたる
(『浄土真宗聖典註釈版』)

現代語訳するとこのようになります。

悪性を終わらせることは極めて難しいことである。
つまり、心は毒蛇やさそりのようなものである。
善行をすることも、実際は毒されている。
それ故、善行を嘘、偽りの行と呼ぶ。

親鸞聖人がこのようなこの言葉を綴られた背景を説明します。
親鸞聖人は、9歳から29歳までの20年間、比叡山にて厳しい修行に勤しまれました。その修行の厳しさは、想像を絶するものです。
例えば、「常行三昧」(じょうぎょうざんまい)といって、一定期間(7日から90日)、阿弥陀如来像の周りを歩きながら、念仏をとなえる続ける行。
「回峰行」といって、一定期間、深夜から朝方にかけて、30kmの山道を定められた礼拝の場所に立ち寄りながら歩きます。諸条件がさらに加わったうえで、これを7年かけて1000日間続けると、有名な「千日回峰行」になります。
その他、まだまだ多くの修行がありますが、親鸞聖人はそれらの行を20年間続けられたと言われています。

しかし、どれだけ厳しい修行に勤しんでも、ぬぐい切れなかったものが「煩悩」という名の「自分を中心にして計算する心」でした。ある意味、人間の本性を綴られたのがご紹介した言葉です。

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺 住職
著述家/翻訳家

1982年、山口市(徳地)生まれ。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や仏教関係の書物の翻訳なども手掛け、執筆・講演・メディアなどの活動の場を幅広く持つ。2019年、龍谷大学 龍谷奨励賞を受賞。著書に『あなたは、あなた。』(アルファポリス)『超カンタン英語で仏教がよくわかる』(扶桑社) 『小さな幸せの見つけ方』(アルファポリス)など多数。

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