人生100年時代を幸せに生きる明日への一歩

「忘れたい過去」は、実は「忘れてはならない過去」

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忘れたい過去を思い出してしまう

誰しも忘れたい過去というものを、一つや二つ持っているものだと思います。その過去の内容については、幸せを感じ楽しかった思い出もあれば、不幸を感じ悲しかった思い出もあることでしょう。意外かもしれませんが、前者の場合でも、現状に満足や幸せを感じていなければ、「あの時はよかった」と未練が残り、いっそのこと忘れてしまいたいと、忘れたい過去にも成り得ると思います。

忘れたい過去には、学歴、職歴、恋愛などにかかわる人との出会い、家族間の問題、仕事の関係、個人的な失態など、人それぞれの物語があると思います。そして、またそれを忘れたい理由も人それぞれでしょう。しかし、大きな理由の一つは、「嫌な感情になることを避けたいから」ということではないでしょうか。

日頃せっかく心のタンスにしまっていた感情を、寝た子を起こすように呼びこされてしまい、爆発してしまうことに心当たりのある方もおられるのと思います。

しかし、忘れたいという思いとは裏腹に、なぜか過去を思い出してしまい、気持ちが沈んだり、イライラしたり、どうにかして思い出さないようにしたい、忘れたいと悩んでいる方も少なくないのではないでしょうか。

今回は、そんな方にご紹介したい考え方があります。

~プラスに転換する考え方~
忘れたい過去こそ、
「忘れてはならない過去」だと解釈する

結論を最初にお伝えします。それは真逆の発想をして、忘れたい過去を「忘れてはならない過去」として捉えなおすことです。

一般的には、忘れたい過去があるならば、当然周囲からは忘れるようにアドバイスされ、自分でもそう努力すると思います。
例えば、余計なことを考えなくてもいいように、他に何か打ち込むべきことを探すようにすすめられ、いろいろ試行錯誤してみたという経験もあると思います。

いずれにしても、何をしても効果がなかったのならば、これまでとまったく別の捉え方をする必要があると思います。
それが、「忘れたい過去を自分の指針にする」という、おそらくこれまでとは真逆の捉え方です。一見、荒療治のように感じるかもしれませんが、実はそうではないのです。

一度、心を静かに落ち着かせてください。そして、これまでの自分の姿を次のように振り返りながら考えてみてください。忘れたい過去によって、いろいろな自分の振る舞い、話し方、気持ちが「整えられた」ことはないでしょうか。
ここで言う「整える」とは、周囲や自分に対する言動を上手く制御・抑制し、生活の活力にするという意味です。

例えば、不慮の交通事故で家族を亡くしてしまった場合、人一倍安全を考えた歩行や乗り物の運転をしたり、同じ経験をされた方の悲しみに寄り添えたり、人間のいのちの尊さを大切にしながら過ごしてきたことと思います。

私の知っている方は、早くに交通事故で私と同じ歳くらいの息子さんを亡くされたそうで、お会いするたびに息子さんの姿を私に重ねて泣かれます。しかし、一生懸命生きておられます。普段は、看護の仕事をしながら、いろいろな幼児や若者を支援するボランティアをされています。

このように、忘れたい過去によって「整えられた」ということは、人それぞれあるのではないでしょうか。この事実こそが、忘れたい過去を「忘れてはならない過去」として捉え直す理由なのです。

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺 住職
著述家/翻訳家

1982年、山口市(徳地)生まれ。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や仏教関係の書物の翻訳なども手掛け、執筆・講演・メディアなどの活動の場を幅広く持つ。2019年、龍谷大学 龍谷奨励賞を受賞。著書に『あなたは、あなた。』(アルファポリス)『超カンタン英語で仏教がよくわかる』(扶桑社) 『小さな幸せの見つけ方』(アルファポリス)など多数。

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