すぐに使える営業の心理学

『コミュ力』よりも『期日厳守』の営業マンが勝ち続ける理由――「寛大効果」

2018.04.19 公式 すぐに使える営業の心理学 第2回
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人当たりのよさ以上に大事なこと

こんにちは、ロールジョブの大岩俊之です。営業マンの皆さんは、日々お客さまのことを第一に考え、お客さまのご要望を叶えるためにベストを尽くしていることと思います。いつも笑顔を絶やさず、お客さまから呼び出しがかかればフットワークよく駆けつける、一にも二にもコミュニケーションが大切――そんな営業スタイルを標榜(ひょうぼう)している方も多いことでしょう。

そうした高い『コミュ力』はお客さまを安心させる要素ではありますが、それがすべてではありません。そこで今回は、人当たりのよさや言葉巧みなトーク術を持ちながらも、結果的にお客さまの信頼を損なってしまうありがちなケースを、「寛大効果」と呼ばれる心理学用語を交えてお話ししたいと思います。

まず、「寛大効果」とはどういう意味でしょうか。

短く説明すると、「他者が自分を見るとき、相手にとって望ましい側面はより強調され、望ましくない側面は寛大に評価されやすい」ということです。わかりやすく言えば、「お客さまから本当の意味で信頼されている営業マンは、納品ミスやスケジュール管理ミスといった何らかの過失が起こったとしても、お客さまに寛大に対応される」ことです。すなわち大目にみてもらえる、ということですね。

この「寛大効果」について、私が以前勤めていた会社にいた、対照的な2人の営業マンを例に具体的に説明していきましょう。

1人目は、他の地域から転勤してきたばかりのAさんです。営業活動は大の得意で、明るく人当たりがいいため、お客さまから「本当に気さくでいい人だよね」と人気がありました。客先にも足繁く通うために顔が広く、目立った失敗もありません。

ただ、Aさんには決定的に欠けている部分がありました。それは、お客さまとの約束の期日に回答が遅れてしまったり、見積り依頼にも少し時間がかかってしまったりすることでした。フットワークのよさにも定評があり、急ぎ呼ばれても駆けつけることを厭(いと)わないAさんですが、それだけに時間の管理がままならず、期日回答がたびたび遅れてしまうのです。

前任者からそれなりに売上のある会社を数社引き継いだのですが、小さな案件は受注できるものの、なぜか大きな案件は受注できません。その結果、少しずつ売上が下がってきてしまいました。

一方、お客さまと話すのがあまり上手ではないのがBさんです。Bさんは、お客さまのところに足を運ぶことは運ぶのですが、いまひとつ押しが弱く、商品を提案するのを苦手としていました。ただ、Aさんとは違い、お客さまとの約束はきちんと守り、見積りの提出も早いです。そしてミスもありません。また、お客さまが何気なく口にしていたことなどもきっちり覚えていて、要望がなくても「先日、お話しされていたあの件ですが……」と、きちんと自分で調べて回答するようなタイプでした。

あるときそんなBさんが、発注を間違えて納品が期日に間に合わないというミスをしてしまいました。このようなことがあると、お客さまからの信用をなくし、一時的に売上が大きく下がってしまうケースが少なくありません。ですが、大きなミスをしたのにもかかわらず、Bさんは決して見限られることなく、その後も大きな案件を決め、順調に売上を伸ばしていったのです。

Bさんはどうして見限られなかったのでしょうか。なぜならBさんは、期日をきちんと守り、対応も速く、基本的に丁寧でミスをしない人であるため、「安心して大きな仕事も任せられる!」とお客さまに思われていたからです。それゆえ大きなミスをしてしまっても、「今回ミスはあったけれど、基本あの人なら大丈夫!」と、大目にみてもらえたのです。

逆にAさんの場合、人気があっても期日や約束事にルーズなところがあるため、「ちょくちょく約束を守らないことがあるから、大きな仕事を任せるのはちょっと……」と思われていたのです。

このように、いくら人当たりがよく皆に好かれるタイプでも、実際お客さまは、営業マンのことを非常にシビアな目で見ています。つまり、ビジネスにおける信用という側面で、より「寛大効果」を得られたのは、Aさんのフットワークの軽さよりも、Bさんの誠実な期日厳守の対応だったのです。

営業マンは単なる人気者になるのではなく、「いざという時に信用できる人」であることが最も大切なのです。

では、この「寛大効果」を取り入れて、実際にどのように営業活動に取り組んでいけばよいのでしょうか?

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プロフィール

大岩俊之
大岩俊之

理系出身で、最新のエレクトロニクスを愛する元営業マン。
大学卒業後、電子部品メーカー、半導体商社など4社で法人営業を経験。いずれの会社でも、必ず前年比150%以上の営業数字を達成。200人中1位の売上実績を持つ。
独立起業を目指すなか、「成功者はみな読書家」というフレーズを見つけ、年間300冊以上の本を読むようになる。独立起業後、読書法やマインドマップ、記憶術などの能力開発セミナー講師をしながら、法人営業、営業同行、コミュニケーション、コーチングなどの研修講師として7,000人以上に指導してきた実績を持つ。年間200日以上登壇する人気講師として活躍している。
主な著書に、『格差社会を生き延びる“読書”という最大の武器』(アルファポリス)、『読書が「知識」と「行動」に変わる本』(明日香出版社)、『年収を上げる読書術』(大和書房)、『1年目からうまくいく! セミナー講師超入門』(実務教育出版)などがある。

著書

口下手でもトップになれる営業術

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