ザ・チームワーク

チーム内における役割とその重要性

2016.01.07 公式 ザ・チームワーク 第3回

新人のパワーはチームの起爆剤になる

こんにちは。七條千恵美(しちじょう・ちえみ)です。
前回の記事では、「チームとして仲間と共にどこに向かっているのか」を明確にすることが大切だとお伝えしました。
マニュアルはあくまでもマニュアル。企業理念や目指すゴールが最優先であるため、マニュアルについては「行間を読むこと」もときには必要だという内容でした。

さて、今回はチームを構成するそれぞれの持つ役割についてです。たとえば、スポーツの世界においても、必ずしもチーム全員の個々の能力が長けているからといって、毎回優勝するとは限りませんよね。

CA(キャビンアテンダント)の世界でも、それと同じことがいえると思います。
新人のCAは当然のことながら、知識や経験が乏しいです。ですが、新人には新人の役割がある。私は、訓練生たちを空へ送り出すときに、いつもこのような質問をしていました。
「あなたたちの役割は何だと思いますか? 現場に行けば間違いなく先輩CAから教えてもらうことばかりです。ときにはチームの足を引っ張ることもあるでしょう。それでも、あなたたちには新人CAとしての重要な役割があります。仕事で貢献することはできなくても、やれることはあります。それは一体何ですか?」と。

『訓練生』というバッジを受け取った彼女たち。たくさんの試練を乗り越えて「間もなく空へとデビュー!」という喜びも束の間、初フライトを前に「未知の世界への不安」と「自信のなさ」に心が押しつぶされそうになっているのです。だからこそ、しっかりとその役割を明確にし、実りあるOJTにして欲しい、そんな想いでした。

私の問いかけからしばらくすると、訓練生の中からポツリポツリと答えが出はじめました。「とにかく笑顔」「何があっても元気よく」「フレッシュさを出す」「謙虚に教えていただくという姿勢」「早めに出社してフライト前の準備を率先してやる」「しっかりと自宅で事前学習をしてくる」「指摘されたことを素直に受け止める」「先輩にもお客さまにも感謝する」などなど。こうやって聞くと、どの答えも当たり前のことばかりかもしれません。しかし、この一見当たり前のことを全部できていると、胸を張って答えられる人はいるでしょうか?

私は、職場にフレッシュな風を吹き込むことが新人CAの役割だと思っています。それは、仕事に慣れてきたことで、初心を忘れかけている先輩CAたちに「大切な当たり前のこと」を思い出してもらうことです。新人CAたちの真摯な姿こそが、周囲に「初心」を思い出させる起爆剤となる、それこそが新人の役割である。そのように思います。

リーダーほど自分の在り方が問われる

では次にベテランの役割です。
中堅がしっかりと「チームの要」として機能しているとき、フライトはとても素晴らしいものになりました。満席時は非常に忙しく、また空席がない関係上、さまざまなご要望にお応えすることが難しいです。そのフォローのために、お客さまの元に何度も足を運ぶ場面もあります。つまり体力的にはとても疲弊しているはずなのです。

しかし、ベテランCAがそれぞれのクラスで振る采配により、チーム全員の心身の疲れが軽減され、質の高いサービスを提供することができました。無駄や無理のないサービスプランの作成、後輩への的確な業務指示、他のクラス担当CAとの相互ヘルプの計画、先任CAへのきめ細かい報告、先任から受け取った情報の共有など、これらの業務を的確に実施できることが、中堅CAとして求められることでした。

しかし、これらの業務は、いわゆる「決まりごと」であり、慣れてしまえば誰にでもこなせることでもあります。チームの要として最も大切な役割は、リーダーと新人、両者の理解者になることです。
フライトを構成しているチーム員は「人」です。人は感情の生き物です。ですから、新人には新人なりの考えや想いがあることに気づき、その気持ちを汲み取ってあげることが大切なのです。そして、最高責任者である先任CAには、安全かつ快適なフライトを遂行する責任があります。その重圧を理解し、先任が先任にしかできない業務に安心して集中できる環境を作ること、これもベテランの役割なのです。

そして最後に、私が最も尊敬していたチーフについてお話します。
CA時代は毎年グループ替えがあったのですが、このチーフとの最後のフライトでは、思わず涙が出るほどに大好きな方でした。
とにかく冷静沈着、頭脳明晰、語学堪能。どこをとっても私など足元にも及ばないチーフでした。この方は数多くの尊敬できる一面をお持ちでしたが、「リーダーの在り方」として尊敬していたのは、「チーム員に対する公平なジャッジ」です。

自分に懐く部下を可愛がる人は多いです。しかし、彼女は、チーム員の仕事のやり方と日頃の在り方について、公平なジャッジを下す方でした。
また常にサービスポリシーがブレないところも尊敬していました。一見クールな方でしたが、絶妙なタイミングで高度なギャグをおっしゃる方でしたし、根底に大きな愛のある方でした。知的で信念もあり、冷静な見方ができて愛情やユーモアもある。そんなチーフのことがみんな大好きでした。チーフとのフライトそのものが喜びでもあったのです。

つまり、リーダーは「人」としての背中を見せることが最も大きな役割なのではないでしょうか。躍起になって指示を出さずとも、チーム員がリーダーを尊敬していれば、自然と仕事はうまく回ります。チーム内での立ち位置が上がれば上がるほど、「自分の在り方が問われる」。私はそのようなことを彼女から学びました。

次回は、またチームワークに関して具体的なお話しをさせて頂きたいと思います。

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プロフィール

七條千恵美
七條千恵美

同志社大学卒業後、国内の大手航空会社に入社。お客様から多くの賞賛をいただいた客室乗務員に贈られるDream Skyward賞を受賞。
さらには、その中でも際立った影響力を持つとしてDream Skyward優秀賞を受賞。皇室チャーターフライトの選抜メンバーにも抜擢される。2010年より、客室教育訓練室サービス教官として、1000人以上の訓練生の指導にも従事。会社評価は最上級のS評価を受けるなど、CAとしても教官としても数々の実績を残す。現在は株式会社GLITTER STAGEの代表取締役として、企業研修や人材育成など、さまざまなビジネスシーンで、強い牽引力と高いスキルを存分に発揮しながら活躍中。

著書

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