こんな仕事絶対イヤだ!

かなり強引な人材収集――募兵官

2017.09.13 公式 こんな仕事絶対イヤだ! 第58回

巷では相も変わらず企業の労働環境に関するニュースが絶えませんが、歴史を紐解いてみれば、ブラックな職業は大昔から存在していました。そこで本連載では、古代・中世ヨーロッパや日本の江戸時代にまで遡り、洋の東西を問わず実在した超ブラックな驚くべき職業の数々を紹介していきます。あなた達は、本当のブラック職業を知らない……

やりすぎ感漂うスカウト担当軍人

軍隊が人員を補充する場合、徴兵と募兵の2種類の方法がある。ブルボン王朝が倒されるまで、フランスでは募兵によって兵隊を集めていた。各部隊の中隊長は規定の人数を常に揃えておく義務があり、これを満たせない場合は降格させられたり、場合によっては免職処分になる恐れがあった。何が何でも頭数を揃える必要があったのだ。中隊長自身が人づてを頼る場合もあったが、それでは限界がある。そこで、人材収集のプロ『募兵官』の出番というわけだ。

ところが彼らが集めてくるのは到底“人材”などと呼べるものではなかった。街のチンピラにホームレス、さらには囚人まで含まれた、どぐされ野郎ばかりだったのである。けれども、ルイ14世の時代からヨーロッパ諸国との戦争が頻発していたことから、ここまでやってもまだ兵員は足りなかった。そんなわけで、募兵官の寝業師ぶりが発揮されてくる。女好きの男には娼婦をあてがい、酒好きの男にはとにかく飲ませて入隊契約書にサインを書かせようとした。それでも落ちない男には、暴行、脅迫なんでもござれのフリーダム状態。勝新太郎(かつしんたろう)“兵隊やくざ”シリーズのリアル版である。

さすがにこのようなやり口がいつまでも通用するはずは無く、1692年にはお上から厳重な警告を受ける羽目になった。やり過ぎがたたって逮捕された者もいたという。そうまでして集めた兵隊も、練度が低く実戦ではあまり使いものにはならなかったことだろう。知らず知らずのうちに、彼らはフランス革命成功の遠因を作っていたことになる。

(illustration:斉藤剛史)


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プロフィール

清水謙太郎
清水謙太郎

1981年3月、東京都生まれ。成蹊大学
卒業後、フリー編集者としてパソコン雑誌
の編集を手がける。また、フリーライター
として文房具、自転車などの書籍のライテ
ィングもこなし、多岐に渡る分野でマルチ
な才能を発揮している。

著書

こんな仕事絶対イヤだ!

金持ちの道楽として庭で飼われた「隠遁者」、貴族の吐いたゲロを素早く回収する「反吐収集人」、かなり怪しいうんこ療法の伝道師「賢女」――こんな仕事絶...

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