欧米エリートが使っている人類最強の伝える技術

あなたの話が「論理的ではない」と言われてしまう原因

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日本人は「論理」が「テキトー」だから交渉下手?

今回は、説得の三要素の最後の一つ、「内容の正しさ」による説得について、その基礎知識を解説していきます。
他人の顔色に敏感で、情緒的な解決をしがちな日本人にとって、話の持つ「正しさ」だけで他人を説得する行為は、実はもっとも苦手としている分野です。

正しい話には、説得力があります。
ここまではいいでしょう。しかし、実際問題としてどんな話をすれば聞き手に「正しい」と感じてもらえるのか、あやふやなままの人が大多数ではないでしょうか?

二つの要素だけで、聞き手は「正しい」と感じる

結論から書いてしまいましょう。話す内容だけで「正しい」と感じてもらうために必要なものは、次の二つ。

1.信頼できる「根拠」
2.納得できる「論理」

この二つが揃った時に、相手はこちらの話を聞いて「正しい」と感じます。具体的にはどういうことか? とりあえず、それぞれの要素をざっと見てみましょう。例えば、

「朝の天気予報で晴れと言ってた。最近の予報はよく当たるし、今日はきっと晴れるよ」

と言ったとします。これを分解すると、

「朝の天気予報で晴れと言ってた」(根拠)
「最近の天気予報はよく当たる」(論理)
「今日はきっと晴れる」(結論)

となります。
聞き手が「朝の天気予報で晴れだ」という根拠を信頼し、「最近の天気予報はよく当たる」という論理に納得したとき、そこではじめて「正しい」と感じるわけです。
慣れないうちは、ちょっとくどく感じるかもしれませんが、他人を「正しさ」で説得するためには、このモデルが基本になります。
「根拠」を示し、「論理」で補い、「結論」を伝える。すっきりとこの構造が当てはまる話ほど、聞き手には論理的で正しく聞こえます(ただし、当たり前の論理は省略も可。これについては後で)。
これは世界のどこに行っても当てはまるスタンダードです。
だからこそ、これさえ押さえておけば、どんな相手であっても、たとえ相手がカリスマであろうが大統領であろうが、「私の話は正しい」と胸を張って主張できるのです。

説得力ある「根拠」とは何か?

そこで、まずは大事になるのは「根拠」です。しっかりとした「根拠」を用意することが、「内容の正しさ」の伝えるための土台となります。
では、どういう「根拠」が聞き手に信頼されるのかです。有効性でランク付ければ、次のようになります。

Aランク:聞き手がすでに信じているデータや意見
Bランク:「権威」あるデータや意見
Cランク:自分なりのデータや意見

例えば、若者に人気のある動画アプリを使用しての商品プロモーション企画を会議で通したいとします。この会社では動画アプリを利用してのプロモーションは初めての試みです。
そこで「今、もっとも大衆に影響力を持っているのは動画アプリだ」という意見を根拠に、社長にプレゼンするとしましょう。
この際、同じ「今、もっとも大衆に影響力を持っているのは動画アプリだ」でも、どのランクの語り方をするかで説得力が変わってきます。

△ Cランク「今、もっとも大衆に影響力を持っているのは動画アプリだと、私は思います」
〇 Bランク「あのサワー・エレクトロニクス社CEOのピーター・クレイブンも、「今、もっとも大衆に影響力を持っているのは動画アプリだ」と言っています」
◎ Aランク「社長自身がおっしゃっていたように、今、もっとも大衆に影響力を持っているのは動画アプリです」

まず、Cランク。
「私の考えでは」という意見や「私の調べでは」というデータは、それ以外に根拠がない場合以外は避けた方が賢明。
もちろん、全くダメなわけではありませんが、仕事などでのシビアな説得の場合、根拠のそのまた根拠が求められるので、それについての入念な準備を覚悟する必要があります。
ただし、話し手自身に実績や立場があり、一種の「権威」になっていればその限りではありません。先の例で言えば、提案者が社内でも有名なヒットメーカーであれば、細かく根拠の根拠を説明しなくても、結構な確率で聞き手も「なるほど」と思うでしょう。そう、「権威」が大事なのです。

そこで次に、Bランクの根拠。
出どころに「権威」があれば、その根拠は説得力を持ちます。
データ一つとっても、「これは私が調べたデータなんですが~」よりは、「○○研究所の調べによると~」のほうを聞き手は信用するのです。
だからこそ、専門機関のデータ、その業界で当てにされているデータ、専門家や実績ある人物の意見などは積極的に利用していきましょう。
ただし、この際、気を付けなければいけないのは、あくまで聞き手にとっての「権威」であること。例で言えば、あなたがいくら「サワー・エレクトロニクス社CEOのピーター・クレイブン」を尊敬し、「権威」だと考えていようとも、聞き手が「スゴイ人物だ」「カリスマだ」と感じていなければ意味がありません。
そのためにも、聞き手の考え方と普段の言動については、事前に可能な限り把握しておくべきです。ちなみにピーター・クレイブンは、全く架空の人物です。

そして、ベストな根拠、Aランクの根拠について。
聞き手自身が調べたデータや聞き手自身の意見を根拠にすれば、聞き手から「その根拠は信じられない」などと言われることはありません。例で言えば、「今、最も影響力を持っているのは動画アプリ」というのが社長自身の意見なら、その根拠に異論が出るはずがないのです。
「根拠」というと、なにか目新しいデータや意見を持ち出したほうがいいように思われがちですが、それは誤解。むしろ、すでに相手が信じているデータや意見から、こちらの言いたい結論を導き出したほうが確実性があるのです。

だからこそ、国家間の交渉や巨額の資金が絡むシビアなビジネスの交渉では、相手の情報分析にかける時間やお金を惜しみません。相手の考えに沿った強力な「根拠」を提示し、あたかも相手に主導権を渡しているかのように装いながら、自らの利益へ誘導していくやり方こそ、ベストな交渉の進め方だからです。

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プロフィール

高橋健太郎
高橋健太郎

横浜生まれ。古典や名著、哲学を題材にとり、独自の視点で執筆活動を続ける。近年は特に弁論と謀略がテーマ。著書に、アリストテレスの弁論術をダイジェストした『アリストテレス 無敵の「弁論術」』(朝日新聞出版)、キケローの弁論術を扱った『言葉を「武器」にする技術』(文響社)、東洋式弁論術の古典『鬼谷子』を解説した『鬼谷子 100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術』(草思社)などがある。

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