欧米エリートが使っている人類最強の伝える技術

カッとなって大失言。そうならないためのたった一つのコツ

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知らないと致命的!
暴言に「脊髄(せきずい)反射」しない技術

ちょっとした話のすれ違いからつい感情的になり、普段なら言わないような失礼なことを言ってしまった。誰しも経験があるのではないでしょうか。
相手が友人や家族なら、まだ修復可能かもしれません。ですが、ビジネスシーンとなればそうはいきません。
話の通じない上司、ものわかりの悪い部下、こちらの言い分をいっさい聞いてくれない高圧的な取引先などなど、ついカッとなって物申したくなってしまう気持ちもわかりますが、感情的になって状況が良くなることは絶対にありません。
最悪、信用を失い、取り返しのつかない大損害をこうむってしまうことも……

今回はこうしたトラブル――「脊髄反射」による失言を回避するための方法を伝授します。じつはこのスキル、これまで連載の中で紹介してきた技術の根幹を成す、いわば基礎中の基礎。本連載のベースとなる考え方です。
シビアな交渉の場、大勢を相手にしたプレゼン、恋愛における駆け引きなど、あらゆるシチュエーションで使える技術なので、ぜひ習得してください。

脊髄反射による失言で、国を支配された?

トラブルの原因の中でも、かなりありがちな脊髄反射。ですが、考えようによってはいい面もあります。
それは、スピーディーであること。
例えば、スマホなどを見ていて赤信号に気づかずに車の行き交う道を渡ろうとしている人がいた場合、いろいろ考える前に「止まれ!」と叫ぶのが正解でしょうし、上司が魅力的な企画の話をしていれば、誰よりも先に「やらせてください!」と口に出すべきです。
こうした場面での脊髄反射は大事でしょう。
「緊急事態」「早い者勝ち」、それらはビジネスにおいて頻繁に直面するシチュエーションですが、こうした時には脊髄反射のスピード感がもっとも求められます。

しかし、こと交渉の場において、脊髄反射は厳禁。
何も考えずに脊髄反射で出た言葉は、理屈が通っていなかったり、気づかぬうちに暴論・極論だったりしがちで、どうしても脇が甘くなってしまうからです。
実際問題として、交渉に強い人間は、往々にして相手の脊髄反射を利用し、時にはその揚げ足をとります。

一つ、日本史から実例を出しましょう。
大名ではなく一介の学者でありながら、江戸中期に幕府を牛耳っていた新井白石という人物がいました。彼は幕府内の議論において無類の強さを誇っていたそうですが、その時に利用していたのが、相手の脊髄反射。
白石は議論になると、必ずいったん相手の言い分を頭ごなしに全否定して挑発していたそうです。そして、相手が思わずカッとしてベラベラと言い返してくる話をじっくりと聞き、当然出てくる脇の甘い発言について理詰めで反論。そうした手法を使って、彼はあらゆる議論に勝利していたとされています。
こうして彼のライバルたちは、挑発に乗って脊髄反射をしてうかつな発言をしたために、議論で白石に完敗。このことは、白石が幕府を牛耳るようになった原因の一つと言われています。

もちろん、これは極端な例だとしても、脊髄反射が一種の「スキ」を作り出してしまうのは、避けようのない事実。ボクシングで言えば、逆上して大振りのパンチを打つようなもので、そうなってしまえば、待っているのは相手のカウンターパンチなのです。

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プロフィール

高橋健太郎
高橋健太郎

横浜生まれ。古典や名著、哲学を題材にとり、独自の視点で執筆活動を続ける。近年は特に弁論と謀略がテーマ。著書に、アリストテレスの弁論術をダイジェストした『アリストテレス 無敵の「弁論術」』(朝日新聞出版)、キケローの弁論術を扱った『言葉を「武器」にする技術』(文響社)、東洋式弁論術の古典『鬼谷子』を解説した『鬼谷子 100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術』(草思社)などがある。

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