就活・商談で使える! 「格上の相手を手なづける」技術!

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社会人なら避けては通れない、「格上」との交渉

仕事などで最も緊張する場面の一つが、「格上」の相手との交渉です。
立場、あるいは能力がはるかに上の相手を説得し、動かさなければいけない。社会人として暮らしていれば、そんな場面が不意にやってきたりします。
気難しい上司の説得、他社の社長などのキーパーソンとの交渉、怖そうな職人さんや作家さんへの依頼などなど。
実際、こうした場面に直面すると、テンパるばかりで、何をどうすればいいのか分からなくなるもの。
しかし、ギリシャ・ローマ式の弁論術を紐解けば、こうした場面での対処法も自然と見えてきます。
そこで、今回は格上の相手を説得するためにはどうすればいいのか? についてご紹介しましょう。

話の内容で勝負する前に

もちろん、格上の相手を説得する場合でも、純粋に「話術」で納得させることができればそれがベストなのですが、多くの場合そうはいきません。
相手が百戦錬磨であればあるほど、こちらの話す内容などどこかで聞いた平凡なものにしか聞いてもらえないでしょうし、なにより緊張して普段のようにのびのびと話を展開することも難しい。
だからこそ大切なのが、まず内容以前の要素です。

本連載では説得力には三つあるという話をしてきました。
ここで高速で振り返ると、一つ目は話の内容(ロゴス)の説得力。二つ目は感情(パトス)をあおることによる説得力。三つ目は話し手の人柄(エトス)による説得力です。
そして、格上の相手を説得する際に、とくに重要になるのが三つ目に挙げた人柄による説得力です。つまり、「コイツの言うことだから、受け入れてやろう」、そんな説得力を持つことが、格上相手の説得では大切なのです。

ただ、格上の相手に人柄を売り込むというと、なにか奇をてらったことを考えがちです。

印象を残そうと、やたらトガッたことや変なことを言ったり、変わった服装をしたり。たしかに、時折、ビジネス武勇伝的な話で、そういうエピソードを聞いたりします。
念のために言っておくと、そういうのは基本ファンタジーの世界の話だと割り切った方がいいでしょう。
もちろん、相手を事前に入念に観察・調査し、相手の求める人物像が分かったうえでやるのなら、イチかバチかでいいかもしれませんが、それでもやはり奇策の部類に入るでしょう。失敗した時のことを考えると割に合いません。

それよりも格上の相手に人柄を売り込むうえでもっと大事なことがあります。
それは、マナーです。
あまりにも当たり前の話で、びっくりしたでしょうか。しかし、これがなぜ「当たり前」なのかを改めて考えなくてはいけません。
正しい言葉遣いやお辞儀の仕方、名刺の渡し方や受け取り方といった既存のマナーはなぜ社会人にとって大切だとされているのか?
それは、こうしたマナーが周囲に気に入られるための最大公約数の振る舞いであり、交渉・説得の上では、話し手の人柄(エトス)を聞き手に対して保障する武器だからです。

実際、これを書いている著者も、仕事の関係で様々なジャンルでカリスマと言われる起業家やビジネスパーソン、あるいは政治家などにも会ってきましたが、変わった人はいてもマナーのない人には、ほとんど会ったことがありません。ネットなどで荒くれてるタイプのカリスマも、会ってみれば、正しいマナーで名刺を渡してくれるものなのです。
なぜ彼らがマナーを身につけているのかと言えば、それはやはり周囲との交渉・説得上有利だからでしょう。
そして裏を返せば、彼らもまたマナーのちゃんとした人間の人柄に好感を抱くという証拠でもあるわけです。

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プロフィール

高橋健太郎
高橋健太郎

横浜生まれ。古典や名著、哲学を題材にとり、独自の視点で執筆活動を続ける。近年は特に弁論と謀略がテーマ。著書に、アリストテレスの弁論術をダイジェストした『アリストテレス 無敵の「弁論術」』(朝日新聞出版)、キケローの弁論術を扱った『言葉を「武器」にする技術』(文響社)、東洋式弁論術の古典『鬼谷子』を解説した『鬼谷子 100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術』(草思社)などがある。

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