欧米エリートが使っている人類最強の伝える技術

大勢を相手にしたプレゼンで効果バツグン! 話を聞く気のない人たちを引き込む話し方

Getty Images

「みんなが話を聞いてくれない」の解消法

大勢の前で話をするというのは、なかなかのストレスです。

中にはそういうのが得意な人もいるでしょうが、その他大勢の人にとっては、心の準備もなく急にそうした役割が回ってくると、「ああ、もう! ついてない!」という感じでしょう。

中でも最悪なのが、聞く側に聞く気がなかったり、それどころか、なんらかの事情で話し手であるこちらに反感を持っていたりする場合。聴衆のかったるそうな態度、あるいは私語、あるいはヤジ。考えただけでも憂鬱です。

このように聴衆がまったく乗り気でない場合には、いったいどうすればいいのか? どうすれば話を聞いてもらえるのか?

今回は、そうした場合に話を聞いてもらうためのテクニックをギリシャ・ローマ式弁論術から、ご紹介してみようと思います。 

古代ローマの政治家が使っていた四つのテクニックとは?

そもそも、大勢を相手に話をどう聞いてもらうのか、というのは、実は古代ローマの政治家も頭を悩ました問題でした。

大勢の民衆を前にした演説は、当時の政治家にとって大事な仕事。もちろん、話を聞く気のない聴衆、さらには自分のことを嫌ってヤジを飛ばしてくるような聴衆相手にも、話を聞いてもらわなければいけなかったわけです。

では、そうした時に当の政治家たちは具体的にはどうしていたのか? 聞く気のない聴衆の耳をどう自分の話にひきつけたのか?

ここで、連載ではおなじみ、ローマの大弁論家であり政治家であったキケローの著書『弁論家について』を見てみましょう。そこには、聞く気のない相手を話にひきつけるための四つの対応策が書かれています。

1、保証する
一つ目。これはやや思い切った方法ですが、その分うまく使えばかなり効果的です。次のように、これからする話のクオリティを事前に保証してしまうのです。

「とりあえず私の話を聞いてみてください。私の話す内容こそがそちらの求めていたものだと分かるはずです」
「だまされたと思って最後まで聞いてみてください。必ずためになるはずです」

自信たっぷりにです。場合によっては、挑発気味にでもいいかもしれません。端的に、

「これからみなさんにとって非常に重要な話をします」

くらいのことを言ってみましょう。もちろん、内心、話す内容にそこまで自信がない場合だってあります。それでもいいのです。ここでの目的は、聞く気のない聴衆の耳をひきつけること。こう約束しておいて、話を聞いて相手が納得すれば、もちろんそれでよし。

仮にそうならなくても、相手に話を聞いてもらうという目的は達することができますし、その後の質疑応答などで否定的な意見を返されても、そこで有意義なやり取りだって生まれてきます。全く聞いてもらえないより、はるかにマシなのです。

2、頼み込む
以上の「保証する」という方法は、インパクトもあり効果的ですが、慣れないとややハードルが高いかもしれません。そこで、それに謙虚さを足してマイルドにしたのが二つ目。相手に「話を聞いてくれ」と頼み込むという方法です。

もちろん単に頼み込むのではありません。話の内容や話し手自身が、無条件で聞き手を魅了するものではないことを認めたうえで、「有益な部分もあるはずだから聞いてくれ」という論法を使うのです。例えば次のように。

「話すことには確かに不十分な点もあるかもしれません。しかし、あなたがたにとって有益な部分もあるはずです。ぜひ聞いてください」
「私のような立場の人間が話しても説得力がないかもしれません。しかし、参考意見としては有意義なはずです。とりあえず話を最後まで聞いてみてください」

この方法は「保証する」よりはインパクトがないかもしれませんが、ハッタリ感がなくなる分、使いやすいでしょう。

ちなみに、この1と2の方法は、聞き手に聞くための動機を作るテクニックです。もちろん、これによって生まれる動機は様々。「そこまで言うなら聞いてみようかな」かもしれませんし、「じっくり聞いて、アラを探してやるぞ」かもしれません。しかし、とにかく聞く動機さえ作ることができれば、話を聞いてもらうという第一の目的はクリアできるわけです。

3、叱る
要は「黙って聞け!」「子供か、君らは!」などと聴衆を叱るのです。これは、私語が飛び交っているような、割と最悪な部類の聴衆に対して使う方法になるでしょう。ただし、キケロー自身も書いていますが、これは現実的には自分に権威がある場合の方法です。

現代で言えば、上司から部下へ、講師から生徒へ、専門家から素人へなどといった明確な上下関係が必要でしょう。それがあるのならば、選択肢の一つに入ってきます。

叱責についていえば、ここぞというときにするから効果を発揮するのだ、ということも知っておかなければいけません。しょっちゅう怒鳴っている人間の叱責は、こういう場面で大した効き目を発揮しません。

叱責は意外性があるほど効果的。「あの人が声を荒らげるなんて珍しい」と思われるような人の叱責こそ、「よっぽどのことだ」と相手に感じさせ、耳を傾けさせるのです。そういう意味では、「今まで他人に大きい声なんて出したことがないなあ」という人こそ、一度使ってみるべき方法かもしれません。

4、諫める
最後の一つは「諫める」という方法です。これも基本的には、あきらかに聴衆がだらけ切って私語などが飛び交っている状態での方法になります。「諫め」とは、キケローに言わせれば「穏やかな叱責」。例えば、次のようなイメージです。

「みなさんもプロでしょう。話を聞くべきではないですか?」
「眠そうにしておられる方もいますが、専門家の皆さんがそんなことでいいんでしょうか?」
「みなさんが優秀だからこそ、そうした態度は残念です」

ポイントは、聞き手を評価し尊重するトーンを出すこと。その中で、相手のプライドや、義務感などに訴えるのです。これは叱るのとは違い、自分に権威がなくても使えます。使うためのハードルも低いでしょう。

ご感想はこちら

プロフィール

高橋健太郎
高橋健太郎

横浜生まれ。古典や名著、哲学を題材にとり、独自の視点で執筆活動を続ける。近年は特に弁論と謀略がテーマ。著書に、アリストテレスの弁論術をダイジェストした『アリストテレス 無敵の「弁論術」』(朝日新聞出版)、キケローの弁論術を扱った『言葉を「武器」にする技術』(文響社)、東洋式弁論術の古典『鬼谷子』を解説した『鬼谷子 100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術』(草思社)などがある。

出版をご希望の方へ