欧米エリートが使っている人類最強の伝える技術

「いい質問ですね~」と言われやすい? 会話の流れを作る「スゴい質問の仕方」とは?

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「質問」すると、交渉で有利になる?

今回は、交渉・説得において、最も強い武器の一つである「質問」について解説します。

交渉・説得に強くなりたいのであれば、質問について「知りたいことを聞くためのもの」などという表面的な認識でとどまっていてはいけません。

実は質問には、自分を有利な立場に置き、かつ話題をコントロールできるという強力な作用があります。この作用に自覚的になり、使いこなしてこそ一流です。

前回も書いたように、交渉・説得の場面においては、話の主導権は話す側ではなく、聞く側にあります。話す側というのは、聞く側の相槌の打ち方、反応・リアクション、質問などに対して右往左往する存在なのです。

だからこそ、交渉・説得では、ポイントポイントで意識的に、有利で安全な「聞く側」に立って、話の流れをコントロールする必要があります。

では、具体的にはなにをすれば、意図的に「聞く側」に立つことができるのか? そのためのテクニックこそが「質問」なのです。 

本当に厄介な、否定しかしてこない相手

例えば、何を提案しても否定から入る人というのがいます。

「でもさあ」「そういうのよりさあ」「そういうんじゃなくてさあ」などが口癖で、何を言っても否定してきて話し合いにならない。実際、こういう人を相手にすると腹が立つものですが、かといってどうやって説得すればいいのかも分からなかったりします。

こういう相手がなぜ厄介なのかといえば、それは相手が聞く側という有利な立場から動かないからです。

つまり、話す側であるこちらが材料を提供し、聞く側である相手がそれに対してツッコむ。この図式がある限り、交渉しようにも相手からは積極的な意見がないため、議論に持ち込むこと自体ができないのです。

ならば、この図式を壊さなければなりません。それには、どうすればいいのか?

質問をすればいいのです。

つまり、相手から「でもさあ。○○は無理なんじゃない?」などという反論が来たら、

「どういうところが無理そうですかね?」
「どうしたらいいと思いますか?」
「なにかヒントだけでもありませんか?」

などと質問で返す。これだけで、今度はこちらが聞く側に立つことができます。

そうなれば、相手もなんらかの返答をせざるを得ず、その返答についてさらに「そこを改善するにはどうしましょうか?」「それを実現させるためにはどうしましょうか?」などと質問を重ねていけば、こちらが主導権をもって話を進めることができるのです。

このように、交渉や説得で行き詰まったら、やみくもに何かを話すのではなく、いったん相手の意見について質問をする。そのクセをつけるだけで、説得の力は段違いに向上します。

議論で絶対に負けない最強の「ソクラテスの論法」 

やや話が脱線しますが、「ソクラテスの論法」という伝統的な議論必勝法があります。これは、有利な聞く側から絶対に動かないというもの。その名の通り、西洋哲学の祖であるソクラテスが用いたものです。

彼は他の賢者や哲学者と論戦をする時には、必ず「自分は何も知らない。教えてくれ」と一貫して「聞く側」の姿勢で臨みました。

そして、相手の言い分を聞きながら、ポイントポイントで「あなたの言う○○とはなんなのか?」などと質問をし、答えに矛盾するところが出てきたら(人間、相手のペースで何度も質問に答えていったら、必ず矛盾が出てくるものです)、いきなり「先ほどはこう言っていたが、どうなっているのか?」などとツッコむのです。ソクラテスは、この論法で国中の賢者・哲学者を黙らせ、片っ端から論破していったのだそう。

この論法では、仮に相手から何か質問返しをされても、無知を装って「私にはわからない」と返せばいいので、論理上絶対に負けることがありません。

挙句の果てに、ソクラテスの場合、「私は他の哲学者と違い、自分が知らないということを知っている分だけましだ」(いわゆる「無知の知」)とうそぶくのですからタチが悪い(笑)。

ちなみに、少年時代にこのソクラテスの論法に感動したアメリカ建国の父フランクリンも、この論法で大人を負かしていたそうです。

しかし、フランクリンも自伝で指摘しているように、この論法はたしかに強いのですが、ひたすら話し手が否定されるだけで、なにも建設的な結論が出ないために周囲に嫌われます。仮に使うにしても、「とにかく負けられない」という非常事態の時に限るべきでしょう。

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プロフィール

高橋健太郎
高橋健太郎

横浜生まれ。古典や名著、哲学を題材にとり、独自の視点で執筆活動を続ける。近年は特に弁論と謀略がテーマ。著書に、アリストテレスの弁論術をダイジェストした『アリストテレス 無敵の「弁論術」』(朝日新聞出版)、キケローの弁論術を扱った『言葉を「武器」にする技術』(文響社)、東洋式弁論術の古典『鬼谷子』を解説した『鬼谷子 100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術』(草思社)などがある。

著書

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