その仕事、誰かに任せなさい!

「部下に責任感があれば…」と嘆く人ほど、「部下の責任感」を奪っている!

2019.07.19 公式 その仕事、誰かに任せなさい! 第2回
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上司と部下の責任感は
「2つの法則」で成り立っている

部下にもっと責任感があれば……。

そう思ったことはありませんか?

「能力」の低さはある程度許せても、「責任感」のなさは我慢ができない。

“仕事を任せても、納期が守れない”。
“途中であきらめて、周囲に投げ出す”。
“仕事が終わっていないのに、残業を嫌がる”。

部下がそのような行動をとったら、上司であるあなたは、おそらく腹立たしいと感じるでしょう。
なぜならこれらは「能力」ではなく、「責任感」の問題だからです。

私は新社会人時代に、上司から以下のような叱責を受けていました。

「鼻血が出るくらい考えろ」
「能力がないなら時間でカバーしろ」
「間に合わないなら徹夜で間に合わせろ」

鼻血だの徹夜だの、パワハラや働き方改革が叫ばれる昨今では、時代錯誤がすぎて口にすることもできませんが、振り返ってみると、その教えがあったから、今の自分があるとも言えます。もしあなたが、若い頃の私のような経験をしていたとしたら、部下に対して、鼻血を出してでも、徹夜してでも責任感を持って仕事をやり遂げてほしいという想いが湧いてくるのもよくわかります。

部下に責任感があったなら、上司として任せ甲斐も出てきます。
たとえ能力がなくても、目を輝かせ「もっと仕事をください!」と、成長意欲に溢れ、努力で乗り越えようとする部下であれば、その姿に感動すら覚えることでしょう。

しかし、その肝心の「責任感」がないのです。

責任感さえあってくれたら……。
それが、上司の切なる願いではないでしょうか。

しかし、「責任感」の向上を願っても、うまくいくはずがありません。
なぜなら、部下の責任感を奪っているのは、あなた自身だからです。

部下の責任感が低いのは、「責任感の量」が
コントロールできていないから

なぜあなたの部下に責任感がないのか?

そのメカニズムは、以下の2つの法則で説明できます。

「責任感一定の法則」
「責任感両極の法則」

この2つを押さえておくと、部下の責任感がなくなっていく構造がよく理解できます。

1つ目の「責任感一定の法則」とは、上司と部下の責任感を足すと、一定の量になるという法則です。

例えば、上司の責任感が100なら部下はゼロ、上司の責任感がゼロなら部下は100、上司が50なら部下も50といった具合に、責任感の総計は変わりません。
つまり、上司の責任感が強すぎると部下の責任感は弱くなるという、非常に恐ろしい法則です。

心理学の世界では、グループ内に責任感の強い人がいると、周囲の人は責任感が弱まり、無関心になる傾向があると言われます。
例えば、道に倒れている人がいて、自分しかいなければ声をかけますが、周囲に人がいると誰かが助けてくれるだろうと判断し、何もしないというようなケースです。

会社にあてはめて考えてみましょう。組織の中で、もし上司の責任感が強ければ、部下はどこかで「結局上司がやってくれるだろう」と頼る気持ちになります。
これは上司も同じで、部下の責任感が非常に強ければ、「しっかりやってくれるはずだ」と気を抜いて責任感が下がります。
まるでシーソーのように、上司と部下が責任感を分け合っているのです。

このように、上司と部下の責任感の総量は常に一定である、というのが「責任感一定の法則」です。

つまり、部下の責任感がないのは、あなたの責任感が強すぎるからと言っても過言ではないのです。

もう1つが、「責任感両極の法則」です。

責任感は、100かゼロの両極になりやすいという法則です。

まず、上司であるあなたのことを考えてみましょう。

任せるのが下手な人は、部下に責任を半分背負わせるのが苦手です。
「責任は全部オレが取るから」と、自分が100の責任を持ち、部下に渡さないパターンか、もしくは部下に全部責任を渡し、放置するパターンかの両極に陥りがちです。

責任を全部自分で持って部下に渡さないパターンは、仕事を任せたと言いつつ、うまく行くかが心配で、全てのアクションに報告を求め、全ての決定を自分が行います。結果的に、自分は仕事を任せているつもりでも、部下は任された認識を持たず、信用されてないと感じてしまいます。

逆に、部下に全部責任を渡して放置するパターンは、仕事を任せた後、進捗管理を行わず、放置してしまいます。中には、「途中経過は知らせるな」とあえて進捗管理を拒絶する人もいます。部下に中途半端に関わると、ついつい自分でやってしまうのがわかっているからです。
そしてある程度ギリギリのラインまで放置し、直前になって失敗しそうなのがわかると、急にすべての責任を取り上げ、「後はオレがやる!」と責任をゼロから100に戻します。

つまり、上司として「全部自分でやる」か「全部放置するか」の二択しかなく、ゼロか100かの任せ方しか持っていないのです。

あなたも任せる時に、このどちらかになっていないでしょうか?

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。研修の企画・講師を年200回、トータル2000社、累計2万人を超えるビジネスリーダーの組織づくりに関わってきた。2012年「株式会社チームD」を設立、現代表。部下に仕事を任せ、一人ひとりが目標に燃える最強の組織を構築する技術に定評がある。

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