その仕事、誰かに任せなさい!

上司の最大の罪は、部下の「やる気」を疑うこと。できない部下でも「やる気」はある!

2019.09.06 公式 その仕事、誰かに任せなさい! 第5回
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「何度言ってもやらない部下」の
「やる気」を疑ってはいけない

「何度言ってもやらない」というのは、仕事を任せたときにぶつかる大きな壁の1つです。

例えば、こんなことはありませんか?

仕事を任せ、役割を分担して、いつまでに何をするかが明確に決まっていたのに、確認するとやっていない。
上司「どうしてやってないんだ?」
部下「すみません、時間が取れなくて……」
上司「じゃあ、いつまでにやれるんだ(納期再設定)」
部下「すぐやります」
(後日)
上司「あの仕事はもうやった?」
部下「すみません、まだできてないです……」
上司「え? どうすんの? やるって言ったよね?(圧迫)」
部下「すみません、すぐにやります」
(後日)
上司「あれ、さすがにやったよね?」
部下「す、すみません……、実はまだなんです……」
上司いい加減にしてくれ(怒り)。やる気あるの?(疑い)。何度言ったらやってくれるんだよ(諦め)。こんなんじゃ誰からも評価されないぞ。(脅し)これ以上やらないならどうなっても知らないぞ(見捨て)」

このような状況の時に、部下に対して上司がよくやってしまうアプローチが2つあります。

1つは、「指示の強度を上げる」です。
最初は穏やかに納期の再設定などで行動を促していたのが、だんだんと圧迫を強め、怒って感情をぶつけ、諦めや見捨てるような態度をとって焦りを促し、やがて脅しのような言葉で何とかやらせようとします。

しかし、このアプローチは効果的であるばかりか、部下の離職を招いてしまったり、周囲からはパワハラと受け取られかねない、大変リスクの高い行為です。

もう1つは、「やる気を疑う」です。
なぜやらないのか。上司は一般的にその答えを「やる気がないからだ」と考えがちです。
しかし、人はやる気を疑われると、無性に腹が立ちます。「やる気あるの?」と疑われると、その疑いそのものによって、やる気が消え失せてしまうのです。

この2つのアプローチは得てしてセットです。
指示の強度を上げてしまうのは、「コイツはオレが強く言わないとやらないんじゃないか」と心のどこかで部下を疑っているからです。
上司から信じられている部下は最大限能力を発揮しようとしますが、疑われている部下は仕事に全力を尽くそうという気力に乏しいと言えます。

このように、「指示の強度を強める」「やる気を疑う」の2つが揃うと、部下が仕事をやり遂げる可能性は著しく低くなってしまうのです。

「やらない4つの理由」を知れば
「やる気を疑う」必要がなくなる

では、部下はなぜ「何度言ってもやらない」のでしょうか。

やらない理由は4つあります。
① 方法の問題:やり方がわからない
② 能力の問題:能力が足りなくてできない
③ 効果の問題:やったほうがいいと思えていない
④ 意欲の問題:やる気がない

1つずつ見てみましょう。

① 方法の問題:やり方がわからない
実は、部下が最初から「やる気がない」というのは稀で、まず、「やり方がわからないのではないか」と考えるのが妥当です。

「やり方については詳しく説明したから、絶対にわかっているはずだ」と上司が楽観的に捉えても、部下は思うほどには理解していません。

やり方がわからない部下には、「目の前でやらせる」のが非常に有効です。
皆さんは部下に仕事を「目の前」でやらせているでしょうか?
目の前でやらせてみて初めて、「ここまで理解していなかったのか」と愕然とすることも多いでしょう。
しっかりと時間を取って目の前でやらせた方が、かえって時間はかからなくなります。

② 能力の問題:能力が足りなくてできない
やり方はわかっていても、能力が足りない場合、部下は動きません。
仕事が任せられない上司は、「自分ができる仕事は部下もできるはずだ」と思いがちです。部下の能力が足りないとはなかなか考えられないものです。

「自分ができる仕事は部下もできるはずだ」と考える人に、よくたとえる話があります。
まず、利き手でペンを持って、自分の名前をできるだけ早く、キレイに書いてください、とお願いします。利き手で自分の名前を書くというのは、もう生まれてから数えきれないくらいやっている行為ですから、自分なりのキレイな字が素早く書けるはずです。

次に、利き手ではない手にペンを持ち換えて、自分の名前を、利き手で書くのと同じスピードとキレイさで書いてください、とお願いします。すると、書けません。字は不格好に歪み、意図しないところで曲がり、跳ね上がったりして、とにかく利き手と同じようには書けない。当然といえば当然の話ですが、書き方はわかっています。しかし、どうすれば素早くキレイに書けるか、利き手では何度も何度も繰り返しているのですから、やり方がわかっていないはずはありません。ところが利き手の逆だとそれができない。

そんな自分に対して、言ってみてください。
「なんでやらないんだ?」「なんでここをまっすぐ書かないの?」「さっきここはまっすぐだって言ったよね?」「やる気あるの?」
そんな言葉の数々が、いかに部下のやる気を奪うものであるか、実感できるのではないでしょうか。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。研修の企画・講師を年200回、トータル2000社、累計2万人を超えるビジネスリーダーの組織づくりに関わってきた。2012年「株式会社チームD」を設立、現代表。部下に仕事を任せ、一人ひとりが目標に燃える最強の組織を構築する技術に定評がある。

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