その仕事、誰かに任せなさい!

部下から「敵視される」上司、「味方だと思われる」上司

2019.10.04 公式 その仕事、誰かに任せなさい! 第7回
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部下との「敵対関係」が、任せられない原因かも!?

部下に仕事を任せられない大きな理由の1つとして、上司と部下の「関係性が悪い」という要因があります。

あなたは、部下から「敵だ」と思われていないでしょうか?

ビジネスの世界で、部下は本来「仲間」であり、「同志」であり、同じ目標の達成に挑む「戦友」であるべきでしょう。
しかし現実には、まるで上司である自分を「敵だ」とみなしているかのような言動をする部下が多く存在します。

例えば、仕事を任せようとすると、
「なんで私がやらないといけないんですか?」と反発する。
「それはやりたくありません」と拒絶する。
「そのやり方でうまく行きますかね」と反論する。
「あの人は好きじゃない」とか「あの人にはついて行けない」と自分がいないところで上司の悪口を言いまわる。

この関係性がさらに悪化すると、
「目も合わせない」
「必要最低限の会話しかしない」
「なるべく接触を避ける」
という状態になり、部下と仕事をすることが苦痛になったりもします。

まるで職場内の敵同士であるかのような状態です。

このように、実は「仕事を任せたい」と思ったときに、部下と「敵対関係」にあるが故にうまくいっていないというケースが多いのです。

このような関係性になってしまったら、どうすればよいのでしょうか?

なぜ部下と「敵対関係」に陥ってしまうのか

関係性には2つの段階があります。
① 「敵・味方」の関係性
② 「目標達成・未達成」の関係性

「敵・味方の関係性」とは、この人は敵なのか味方なのかを常に警戒している状態です。人は初対面の相手に対して警戒心を持ちます。信じていいか・いけないか、ついて行っていいのか・悪いのか、などを疑いの目で見ます。相手の言動の一挙手一投足を観察し、敵か味方かを見定めようとしている関係性です。

「目標達成・未達成の関係性」とは、どうしたら目標が達成できるかにエネルギーを注いでいる状態です。どうやって問題を解決し、能力を高め、目標達成ができるか、目標に燃え、成果を出すことに関心があります。上司、部下はお互いに目標を達成する仲間であり同志であるという関係性です。

部下は普通、上司に対して「警戒心」を持っています。上司の指示の出し方、言い回し、表情などを観察し、過敏に思えるほど「あの人はこういう人だ」という解釈にエネルギーを使い、敵なのか味方なのかを見定めようとします。

一方で上司は、当然のことながら、自分が部下の敵であるとは思っていません。
自分が部下の味方であることは「前提」に考えていることが多く、部下の警戒心には無頓着なものです。
そのため、指示の出し方や言い回し、表情などはどうでもいいことで、取るに足らないテーマだと考えがちで、自分が味方だと示すことにエネルギーを注ぐ必要性を感じていません。

その結果、上司としては、ただ真剣に考え込んでいるだけなのに「今日は機嫌が悪い」と勝手に解釈されたり、厳しく指導したときに「部下のことを嫌っている」と受け取られたりするといった誤解が生まれてしまいます。
そういうボタンの掛け違いで、上司は部下から決定的に「敵」にされてしまうのです。

この「敵・味方の関係性」は、女性の方がややシビアであると言われています。いわゆる「女性組織」が難しいと言われる原因はここにあります。女性だけが集まると、「トイレに行くのも一緒」「派閥やグループができて対立しやすい」「理屈よりも感情を優先して生理的に嫌い合う」といった現象をイメージされることが多いのですが、それは、「敵・味方の関係」から脱却していないからです。

「敵・味方の関係性」のステージにおいては、「自分は味方ですよ」というメッセージを発信し続けることが重要になるため、そのメッセージ発信の手段として、一緒にトイレに行く、あなたは仲間ですよと伝える言動が増える、共通の敵を作って共同体意識を増やす、といった行為が選ばれるというわけです。

言い換えれば、女性組織であっても「目標達成・未達成の関係性」にある組織はそういった難しさはありませんし、男性組織でも「敵・味方の関係性」にあれば同様の問題が起こります。

軍隊においても同じことが言えます。
ベトナム戦争では、戦死者の20%が、部下に後ろから撃たれて死んだと言われています。「この隊長についていったら全滅する」と思った部下が、上官を撃ったのです。
戦争に勝つ・負けるという「目標達成・未達成の関係」以前に、仲間が「敵なのか味方なのか」の問題が重く存在しています。

ビジネスにおいて、自分が敵だと思われているのか、味方だと思われているのか。
この関係性のステージそのものが、仕事を任せられるかどうかの成否を大きく左右します。

あなたは、「自分が部下にとって敵か味方か」という問題を、どうでもよいことだと軽視していないでしょうか。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。研修の企画・講師を年200回、トータル2000社、累計2万人を超えるビジネスリーダーの組織づくりに関わってきた。2012年「株式会社チームD」を設立、現代表。部下に仕事を任せ、一人ひとりが目標に燃える最強の組織を構築する技術に定評がある。

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