その仕事、誰かに任せなさい!

部下の「弱み」を上手に納得させ、改善させる方法

2020.06.05 公式 その仕事、誰かに任せなさい! 第23回
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ビジネスにおける「弱み改善」の成功事例
やっぱり「弱み」は改善すべきか?

ビジネスの世界では、「弱み」を改善して大きな成果をあげた事例が多くあります。

例えばピクサー。
ピクサー・アニメーション・スタジオはアニメーション映画製作の大手で、『トイ・ストーリー』や『ファインディング・ニモ』『カーズ』『Mr.インクレディブル』など、毎年大ヒットを連発しています。
映画のような興行収入が安定しないビジネスにおいて、ヒットを大量生産できる理由は何か。
それは「ダメ出し会」と呼ばれる「弱みの改善」にあります。

ピクサーでは、映画を公開する前に、このダメ出し会を何度も行います。
監督、作画担当などの制作チームメンバーだけでなく、他のプロジェクトのメンバーにも集まってもらい、ほぼ完成のレベルにまで仕上げた映画を視聴し、重箱の隅をつつくように、徹底的にネガティブな材料を洗い出すのです。
・この登場人物には深みがない。
・このシーンはムダなんじゃないか。
・ここはわかりにくい。
・ここは誤解を生むんじゃないか。

自分の作品にネガティブなフィードバックをされるなんて、映画をつくるクリエーターにとっては、まるで我が子を否定されるようで、かなり受け入れがたそうに感じます。反発するクリエーターも出かねないアプローチです。

ところがピクサーは、このダメ出し会を何回も繰り返すことで、シナリオや表現方法を最適化して、実際に大ヒットの連発に繋げているのです。

このような事例を耳にすると「弱みの改善」の重要性を感じます。
やはり、強みの改善だけではダメなのでしょうか。
弱みの改善に取り組む必要があるのでしょうか。

「弱み」を指摘するリスク
「自己防衛本能」の怖さ

人は弱みを否定すると、「自己防衛本能」が働いてしまいがちです。

弱みを指摘した際に、部下が以下のように反応してくれたら、大いに改善に役立つでしょう。
・なるほど、それはいいアイデアですね!
・気付きませんでした。指摘してくださってありがとうございます!
・確かにこれは問題ですね。改善します。
・アドバイスのおかげですごくいい結果が出そうです。

もしもこんなふうに部下が受け止めてくれたら改善は進むでしょうし、指摘のしがいもあるというものです。
弱みの指摘は本来、改善のために必要な情報なのです。

ところが多くの場合、弱みを指摘された部下は「自分を否定された」「それは自分のミスじゃない」と、まるで攻撃されたかのような反応を示し、自分を守ろうと必死に否定したり、言い訳したり、怒り出したり、落ち込んで黙り込んだり、スネて反発的な態度を取ったりします。

上司には攻撃する意図はないのに、部下は「自己防衛反応」が自然と発動し、改善するよりも「自分を守ること」を優先してしまうのです。

「腐ったリンゴの実験」
何気ない「言葉」が心理的安全性を脅かす

米国で、ある衝撃的な論文が発表されました。
「腐ったリンゴの実験」というもので、5~10人の組織に1人ずつ「3つのタイプの問題をもった人物」を送り込む実験が行われたのです。
「腐ったリンゴ」とは、以下の3タイプです。
① 性格の悪い人(攻撃的・反抗的)
② 怠け者(労力を惜しむ)
③ 周りを暗くする人(愚痴・不満をいつも言う)

この3つのタイプを演じてもらい、それによって組織の生産性がどのくらい落ちるのかを実験しました。

いずれのタイプも生産性が落ちそうに思えます。

タイプ①の性格の悪い人は、会議の場で常に攻撃的で反抗的な態度を取ります。そんな人がいたら、意思決定にも影響があり、生産性は低くなりそうです。

タイプ②の怠け者は、受けた仕事に対してこっそり手を抜き、1時間で終わる仕事をだらだらと倍の時間をかけたりします。これも生産性が落ちそうですね。

タイプ③は愚痴や不満を吐き、周りを暗くします。周囲の人のモチベーションが落ちて生産性に影響しそうです。

では、この中で一番生産性を落としたのはどのタイプだと思いますか?

実は、驚いたことにどのタイプを送り込んでも、ほとんどの組織が、全体の約40%生産性を落としました。

5人の組織で1人が全く仕事をしなかったとしても、生産性は5分の1、つまり20%ほどしか落ちません。10人の組織なら10%ほどでしょう。
ところが、「腐ったリンゴ」が1人いるだけで、組織の生産性が約60%に低下してしまう。
これはいったい、どういうことなのでしょうか。

→<次ページ:心理的安全性は「任せ方」で変わる~「弱み」を改善する具体的な方法~>

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、
300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。
これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
部下に仕事を任せ、1人ひとりが目標に燃える「最強のチーム作り」技術に定評がある。
2019年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「その仕事、誰かに任せなさい」をスタート。
累計100万PVを記録する反響を呼び、このほど改題を経て出版化。

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