株価は景気の先行指標だが、景気は後退しない

2018.02.13 WEDGE Infinity

 株価が下落しても、景気拡大は止まりません。『一番わかりやすい日本経済入門』の著者である塚崎が、解説します。

 株価は景気の先行指標です。内閣府が算出している景気動向指数の先行指数の計算にも、他の指標と並んで株価が用いられています。日常会話でも「株価も安いし、景気は冴えないよね」といった発言は珍しくありません。そうしたことから、今次株価下落によって景気が悪化するのではないか、と考えている人も多いようですが、それは杞憂です。

(Creatas Images/iStock)

株価が下がると景気が悪化することが多い

 内閣府が株価を景気先行指数の計算に用いているのは、株価が下がると景気が悪化する場合が多いからです。しかし、それは「株価の下落が景気を悪化させる」という因果関係を意味するものではありません。

 理由の一つは、「投資家が景気の悪化を予想して株を売る」ため、景気が悪化するよりも株価が下落する方が先だ、ということです。子が親に似ているけれど、子の方が親より先に生まれた、といったイメージでしょう。

 今ひとつは、リーマン・ショックのような場合です。米国の株価が暴落すると、日本の株価も暴落しますが、米国の景気が悪化してから日本の景気が悪化するまでは時間がかかります。輸出契約が減り、輸出用製品の生産が減り、輸出企業の雇用が減り、失業した元輸出企業社員が物を買わなくなり・・・といった具合です。この場合は、「リーマン・ショックが親で、日本の株安と景気悪化は兄弟だから似ている」といったイメージでしょう。

 日銀の金融引締めも、同様に引締めが親で、株安と景気悪化が兄弟の関係です。日銀が金融を引き締めると、株価はすぐに下がりますが、景気が悪化するまでには時間がかかるからです。

株価下落が景気にマイナスに働く可能性はある

 株価下落が景気を悪化させることも、理論的にはあり得ます。一つには、株で損した人が倹約をすることです。実際に売って損した人だけではなく、保有株が値下がりして「含み損」を持っている人も、貧しくなった気分から倹約をすることがあります。

 株を持っていない人も、株価が下がると暗い気分になって財布の紐が締まる場合もあるようです。「景気は気から」ですから。

 アベノミクス初期の株価上昇で、富裕層の高額品消費や庶民のプチ贅沢が増えましたが、その逆が起きる、というわけですね。

 もっとも、日本の個人投資家が保有している株はそれほど大きくありませんから、こうした効果はそれほど大きくないでしょう。

 理論的には、年金基金が保有している株が値下がりすると、「将来は年金が受けとれないのでは」といった不安が増大するはずなのですが、そこまで考えて財布の紐を締める消費者は多くなでしょう(笑)。・・・最後のところ、「多くないでしょう」ですね。

 銀行の自己資本比率規制も、理論的には影響し得ます。銀行保有株が値下がりして銀行の損失が膨らむと、銀行の自己資本が減ります。銀行は、自己資本比率規制によって「自己資本の12・5倍までしか貸出をしてはならない」といった制約を受けているので、自己資本が減ると貸せる金額が減り、「貸し渋り」をせざるを得なくなる可能性があるわけです。

 もっとも、昨今の銀行は貸出先が乏しいため、自己資本比率規制は気になっていません。一方で、昨今の銀行はそれほど巨額の株式を保有しているわけではなく、株価の値下がりが貸し渋りを招くことはなさそうです。バブル崩壊後の株価暴落時には、銀行が巨額の「持ち合い株」を保有していましたし、株価の下落率も大きかったので、株安が銀行の貸し渋りの一因と言われましたが、今では銀行の置かれている状況が大きくことなっているのです。