見過ごせない!ロシアW杯の“直前まで盛り上がらなかった現象”

2018.07.10 WEDGE Infinity

 今年2月の平昌五輪とロシアW杯。筆者は今年2度、”浦島太郎状態”になった。 

 大会開幕前の静かな日本を旅立ち、序盤だけを現地取材。その後、日本に戻ってきた。すると大盛り上がりとなっているのだ。

試合後の渋谷は毎回大盛り上がり(撮影:筆者/6月28日のポーランド戦後、29日に)

 今回は出発前に「ロシアに行く」と近所の19歳の女子カフェ店員に伝えると、「え、なんでですか?」と聞かれた。しかし、第3戦のポーランド戦前に戻ると、もはや羨望の眼差し。「わーっ、試合観てきたんですか?」と。ポーランド戦後には彼女らと同世代が渋谷で大騒ぎする風景も観た。

 成田空港でのファンの見送りは約150人で、出迎えが1000人(800人と報じるメディアも)だったという。この点からも大会開幕直前、あるいは開幕後に盛り上がったことが分かる。

 決勝戦に向け、最後の盛り上がりを見みせているW杯。ここでひとつ考えてみたい。

 ”大会直前まで日本国内がなぜ盛り上がらなかったのか論”

 そこにはサッカーを超えた、日本社会全体に問いたいポイントがある。

雑誌に支えられてきた日本のサッカー

 今回のロシアW杯は直前まで「過去の大会の中で最も盛り上がらない」と言われてきた。

 日本代表は98年大会以降、6大会連続のW杯本大会出場を続ける。

 98年は初出場時の熱狂、02大会は開催国だから当然盛り上がった。06年は「黄金世代」と言われた1979年生まれの選手が28歳、ピークと言われる年齢で迎える大会だった。2010年大会あたりから”慣れ”も出てきて少し落ち着いてきた感があるが、それでも前回の2014年ブラジル大会では、大会前半年間の結果が良かったため、大いなる期待感があった。

 しかし、今大会はどうだったか。6月11日、日本代表の合宿地オーストリアで行われた記者会見で、西野朗監督に対し「過去のW杯に比べると、日本代表への関心が低いのでは?」と質問が飛んだ。また主将の長谷部誠は7月5日の代表チームの帰国凱旋会見で「無関心が一番怖かった」と発言している。

 日本代表は大会2カ月前にハリルホジッチ前監督を解任。その後の成績も振るわず。雰囲気が暗かった。

 それが全てだ、と言い切ってしまうのはもったいない。理由のひとつは、ここにあるのではと考える。本稿で一番言いたい点だ。

 ロシアW杯は「メディアのウェブ化の影響を考えるべき、初めての大会だった」。

逆転負けとなったベルギー戦は深夜にもかかわらず視聴率30%を記録した(写真:松岡健三郎/アフロ)

 長らく、日本のサッカー文化は雑誌文化に支えられてきた。その構造はシンプルで、90年代前半までメジャースポーツではなかったサッカーは、新聞紙面のスポーツ欄に入れなかったのだ。

 一方、雑誌文化は92年の日本代表の躍進、93年のJリーグ開幕、さらには96年の02年W杯日韓共同開催決定が追い風となり、花開く。サッカー専門誌が月刊から週刊化。コンビニや駅売店の流通に乗るようになった。またスポーツ専門誌でも「サッカー日本代表」が圧倒的に売れるキラーコンテンツとなっていく。

 流れは10年ほど続いたが、2013年から14年に大きな波が訪れる。2大専門誌が週刊化を取りやめた。また翌14年には日本代表がブラジルW杯で惨敗。あるスポーツコンテンツも扱う出版関係者は「ここが大きな分岐点となった。日本代表特集号の売上が大きく変わっていた」という。

 つまり読者が情報を得る媒体が変わっていったということ。インターネットがメインストリームに躍り出たのだ。もちろん、93年以降新聞紙面にもサッカー情報が大幅に増えたが、近年の新聞離れ(1世帯あたりの部数が1.0部を割る)といった傾向も”ネット主流”を後押ししている。