既成概念をぶっ壊す"起業家の作法"

2021.07.05 WEDGE Infinity
2002年から東京大学で大学発ベンチャー支援、起業家教育にたずさわっている各務茂夫教授(工学研究科)と、アメリカに渡り、GE、スタートアップ企業を経て、2006年に医療機器開発製造会社クオリティー・エレクトロ・ダイナミクス(QED)を創業した藤田浩之氏。それぞれの立場から、コロナ後に求められる起業家について聞いた。
(gustavofrazao/gettyimages)

編集部(以下、――) お二人は、在籍した時期は異なりますが、オハイオ州クリーブランドにある名門ケース・ウェスタン・リザーブ大学(CWRU)の同窓ですね。

各務茂夫(かがみ・しげお) 東京大学大学院工学研究科教授。一橋大学商学部卒。IMEDE(現国際経営開発研究所)経営学修士(MBA)。 ケース・ウェスタン・リザーブ大学経営学博士。

藤田浩之(以下、藤田) 各務先生との出会いは、一橋大の伊藤邦雄先生が日本ベンチャー学会で「新たなイノベーションへの挑戦」というテーマの討論会を主催され、私がパネリストとして登壇させていただいたときのことです。各務先生はコメンテーターを務めておられました。その後、各務先生が東大で起業家養成の講座を持たれたときに、ケーススタディとしてQEDを取り上げていただきました。その際は、クリーブランドにも取材に来ていただきました。

各務茂夫(以下、各務) 伊藤先生は、日本ベンチャー学会の元会長で、現在は私が会長を務めております。藤田さんには、伊藤先生が日本ベンチャー学会会長でおられた2010年11月に学会の全国大会の際、パネリストでご登壇頂いたことがありました。その時点では、既に藤田さんのことは存じ上げておりましたが、あらためてお話を伺い衝撃を受けたことを覚えています。

藤田浩之(ふじた・ひろゆき)医療機器開発製造会社クオリティー・エレクトロ・ダイナミクスCEO。在オハイオ州クリーブランド日本国名誉領事。キヤノンメディカルシステムズCTO。ケース・ウェスタン・リザーブ大学(CWRU)物理学科博士課程修了、物理学博士。

 数ある名のあるグローバル企業と対等に渡り合うQEDの活躍は、尋常ではないと感じました。起業家教育ケーススタディを書く際には、クリーブランドの本社訪問を含め、何回もお会いしましたが、その際、意思決定の様々な場面でどのような悩みがあるかなど、色々なお話を聞かせていただきました。その後、藤田さんはオバマ大統領の一般教書演説に招かれるなど、アメリカにおける日本人起業家としてシンボリックな存在となりました。

―― 各務先生の東大での産学連携やアントレプレナーシップ教育について教えて下さい。

各務 2002年に東大の教員になりました。04年の国立大法人化に向けて大学改革が進められているときでした。国立大学の大きな課題の一つが、「研究成果から新しいイノベーションをどうやって創出するのか?」ということでした。つまり、大学が新しい産業創出の担い手になるということです。

 法人化される前まで、大学における発明あるいは特許といった成果は、すべて研究者個人に帰属するものでした。これを1980年施行の米国のバイドール法を参考にして、国の資金で賄われた大学の研究成果は大学の資産として使われること、また特許権等の権利は研究者個人でなく、大学に帰属する形に変更となりました。大学で新しく得られた知財を活用した大学発ベンチャーを生み出すための制度的基盤が、国立大学法人化によってもたらされました。

 実は、日本では過去においても大学発のイノベーションが数多く生まれていました。例えば、東京帝大の池田菊苗博士が「グルタミン酸」を発見し、これを鈴木ファミリーが調味料事業として発展させたのが現在の味の素です。また、米沢高等工業(現山形大工学部)で教官だった秦逸三氏が、人造絹糸製造に成功し、それが帝人の発展につながりました。ヤクルトのシロタ株も、京都帝大医学部時代に、創業者の代田稔博士が発見したものです。