人口高齢化と建物老朽化 二つの"老い"をどう乗り越えるか あなたの知らない東京問題 膨張続ける都市の未来

2021.07.28 WEDGE Infinity

 一方で、こうした大規模な再開発によって地価が上がった土地には到底住むことができないような若者や高齢者が、東京圏では多く暮らしている。そして、高齢化の加速により、その規模は今後さらに増えていくと思われる。

 そのような人たちへどうアプローチしていけばよいか。一つの方策として、若者と高齢者が共に暮らし、支え合う文化を浸透させることが有効だ。欧米を中心に、高齢者と同居して見守りや話し相手を担うことで、若者の家賃を軽減する「異世代ホームシェア」が、90年代後半から進められている。特にフランスでは多くの非営利団体(NPO)の取り組みにより、住まい方の形式の一つとして定着しつつある。

 全国から若者が集まる東京は、大学やビジネスシーンなどさまざまな場面で、切磋琢磨し合いながら、自身の知識・技能を高めて、戻った故郷も含めた日本全体の成長に貢献するという役割も果たしてきたはずだ。

 若者を受け入れやすい環境を整えるという意味だけではなく、広い階層の高齢者の生活支援を効率よく実行する意味でも、このような仕組みは検討に値する。また、日本では既存(中古)住宅市場が未発達であるため、子供が独立したり、配偶者に先立たれて「広い住宅」がもはや必要ない高齢者でも、売るに売れないことがままある。このような高齢者が抱え込んでしまっている過剰な住空間の活用という観点からも有効だろう。

 また、17年度から開始された住宅セーフティネット事業制度により、高齢者などの住宅確保要配慮者についてはその居住所となる空き家の耐震改修補助や家賃低廉化の枠組みが設けられたが、まだまだ地域や自治体に根付いているとは言い難く、さらに、若者はその対象とされていない。

 若者が高齢者の生活支援や見守りなどの居住支援を行うことを条件に、制度の対象とすることが検討されてもよい。例えば、前述の「異世代ホームシェア」を行う場合に制度を適用し、耐震改修補助や家賃補助を認めることなども一つの選択肢ではないだろうか。

 地方に比べて建物を新たに建てるスペースが少ない東京圏では、耐震性の低い建物を建て替えていったり、利用者の所得に応じて、既にある賃貸物件とのマッチングを図るといった居住支援を進めるなど、一見すると地味だが、今ある都市の形を生かしつつ、小さな変化を重ねていくことが大切だ。  

 そのためには、特別区(東京23区)や市を越えて将来リスクを共有し、貧困世帯や若者、高齢者の「住」の安心を確保していく必要がある。行政区域をはるかに超えた「大都市圏」が抱える、建物と人の"老い"に対応する戦略を企画し、政策を執行する組織または何らかの仕組みの創設を期待したい。

■修正履歴:Wedge8月号25頁に掲載の「東京都への転入者は、災害リスクの高い地区に移り住む(23区)」の図版中央下「荒川区」の数値は正しくは「品川区」のものでした。訂正し、お詫びいたします。該当箇所は修正済みです。

◆Wedge2021年8月号より
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(文=中川雅之)