サンフランシスコの「Parklet」から見えてくるリスクを許容する社会の大切さ

2021.07.31 WEDGE Infinity
建設中のParklet(James Rice/gettyimages)

 7月20日、サンフランシスコ市は「Parklet」を含むShared Space(共有スペース)の利用について、期間限定で実施していた措置を恒久化すると決定した。「Parklet」というのは下図にあるように路上の駐車スペースを廃止して、その代わりにベンチ、テーブル、自転車置き場などを設置する小さな公園のようなものを指す。また、Shared Spaceというのは屋外で飲食や会話などが行える公共の共有スペースのことを指す。日本でいうと歩行者天国のようなイメージに近い。

 
↑ 路上の駐車スペースの代わりに設置されるParklet(出典:San Francisco Parklet Manualより)

 欧米の主要都市では新型コロナウィルスの感染拡大によってロックダウンが行われ、店内での飲食が禁止された。屋外であれば飲食が可能となったが、市内の飲食店や商店の多くは屋外の敷地を持っていないため、緊急措置として歩道や車道の一部をShared Spaceとして利用することを許可した。今回のサンフランシスコ市の決定は、この緊急措置を恒久化したということだ。

 「Parklet」は2010年に世界で初めてサンフランシスコで登場した。20世紀に進んだモータリゼーションの影響で車道の多い都市空間となってしまったことから、公園のような場所を取り戻すための政策として考え出されたものだ。現在、「Parklet」は市内60カ所以上に設置されているという。そして、サンフランシスコで生まれた「Parklet」はロサンゼルス、シアトル、ダラス、サンディエゴ、シカゴなど全米の多くの都市に広がっている。

 欧米の都市に行くと、路肩にずらりとクルマが駐車されていて景観が損なわれていると感じることがあるが、「Parklet」が設置されると街の景観が大きく改善するように思う。また、気候の良い日に外で食事を楽しめる機会が増えることも街づくりの観点で素晴らしいと感じる。しかし、「Parklet」は良いこと尽くしというわけではないらしい。

長所だけではない、短所もある「Parklet」

 「Parklet」導入について恒久化が決まったことについてサンフランシスコの地元テレビ局Kron4が報道している。その中で、「Parklet」にクルマが突入した交通事故についても触れられている。

 6月18日、閉店後のレストランの「Parklet」にクルマが突っ込み、ブレーキを踏まないまま壁にぶつかり「Parklet」の端にぶつかって停車するという事故が発生した。店主は、開店中であればけが人が出てもおかしくなかったと述べており、「Parklet」は安全とは思えないので自分がほかの店で飲食するときは「Parklet」には座らないようにしているという。

↑「Parklet」の長短を報道する地元テレビKron4 

 「Parklet」には安全性だけではなく、街中での駐車スペースが減ってしまうという短所もある。その点を指摘したのが次の住民の声だ。

 この瞬間は「Parklet」って非常に良いと思うけど、駐車スペースを探せない時には邪魔だなって思っちゃう。走行しているクルマと想像以上に近いことにもちょっとびっくりするね。

 このように長短両方が存在する「Parklet」であるが、サンフランシスコ市としては以下の理由から「Parklet」を含むShared Spaceの利用を認める措置を恒久化したと述べている。

  • 新型コロナウィルス対策の一環として、店舗やレストランに対して屋外の公共スペースの利用を一時的に認め利用料を免除する措置をとった
  • これにより店舗やレストランの経済的負担を減らせるだけでなく、従業員が職場復帰できることで労働者の生活の維持につながることが明らかとなった
  • Shared Spaceを維持することは交通事故ゼロ、公共交通優先、賑わいのある街づくりにもつながる