高市早苗新総裁につきまとう強すぎる保守色…靖国神社参拝や公明党との連立の行方は?支持、不支持相半ばする現実

2025.10.06 Wedge ONLINE

 高市早苗氏が当初の予想を覆して、自民党総裁選で勝利した。首相に指名された後、新内閣を発足させる見通し。

(代表撮影/ロイター/アフロ)

 党を立て直し、遠からず予想される衆院解散・総選挙での党の「顔」となる高市氏を迎える国民の視線は必ずしも歓迎一色ではない。政治経歴、能力は十分とはいえ、保守色が強いなど、国のかじ取りをゆだねるにあたっての懸念、不安は少なくない。

 国民から幅広い支持を勝ち取り、野党の協力を得るためには、政治姿勢や政策において、警戒感、不安感を取り除くことが最優先課題だろう。 

党再生の切り札

 高市総裁の選出は、かつてリクルート事件で揺れた党を立て直すために海部俊樹氏が登場した1989年の総裁選を彷彿とさせる。

 竹下登内閣がこの事件で倒れ、後継の宇野宗佑内閣も参院選で惨敗して退陣。党再生の切り札として登場したのが海部氏だった。

 氏は小派閥出身ながらさわやかな弁舌などで早い時期から政界のプリンスといわれていた。予想通り人気は上々、翌年の総選挙で自民党は275議席と減少を最小限に食い止め、危機を乗り切った。

 裏金問題をきっかけとして昨年秋の総選挙、今年夏の参院選で連敗、衆参両院で過半数を失った自民党は、海部内閣発足時以上の危機に置かれている。

 創建以来の苦境を打開するために、清新な指導者が求められたのは当然で、初の女性総理・総裁となる高市氏、就任すれば最も若い44歳の小泉進次郎氏が決選投票に残ったのも自然な展開だった。

「無節操」「権力志向」などマイナス評価も

 高市総裁は、その発信力の強さ、政策の明るさ、安定した国会答弁ぶりなど能力の高さから、世論調査では「次の総理」としてトップか上位にランクされてきた。

 それを現実にした手腕は見事というほかはないが、半面、初当選当初、自民党以外から出馬、途中から入党した無節操さへの批判もあり、森喜朗、安倍晋三元首相ら時の実力者への接近など権力志向が強いなどマイナス評価も少なくなかった。

 ルール無視などで物議を醸したこともある。

 1年前の総裁選に出馬した際、党の総裁選管理委員会の規則に反してリーフレットを大量に郵送したと指摘されたが、「ルールが決まる前に郵送していた」などと強弁した。

 総務省幹部職員が業者から接待を受けていた問題(2021年)にからんで、氏も総務相時代に会食していたことを指摘され、「会費は払った。それ以上の費用がかかったのなら先方の約束違反だ」と開き直ったこともある。

 国民の支持が高いといっても、「候補」の時代と実際に首相になってからでは、評価も変化する。首相就任後も時に不誠実と映れば、有権者の心は離れてしまうだろう。

公明代表、連立維持要請に即答避ける

 高市総裁にとって保守色を薄めなければならないのは、政治的な側面からも重要だろう。

 自民党は少数与党、連立の枠組み拡大を含めて野党の協力を得られなければ法案は成立しない。総裁が首相指名を受けられない事態すら現実味を帯びる。

 現時点で野党が非自民連立政権で一致する可能性は、各党の思惑違いから極めて低いが、連立の一角を占める公明党の支持が揺らぐ事態も否定できない。

 高市総裁は就任直後の4日午後、公明党の斎藤鉄夫代表と会談、連立政権の継続を呼びかけたが、斎藤氏は、「靖国参拝が外交問題に発展したこともある。懸念を抱いている」と述べ、即答を避けた。会談後、「今の段階では何とも言えない」と慎重な姿勢をみせた。

 斎藤氏は石破茂首相の退陣表明の直後、連立を維持するための条件として「我々の理念にあった方でないと連立を組むことはできない」と述べ、高市氏への警戒感を示していた。公明党が実際に高市内閣との連立を拒否する可能性は薄いとしても、自民、公明両党の関係が今後、円滑さを欠くことは予想される。