韓国での10月は大型連休の「秋夕」の月。旧暦の8月15日にちなむ秋夕は日本のお盆にあたり、多くの韓国人が帰省する。今年はカレンダーどおりで7連休、人によっては10連休になる。今回は10月1日の「国軍の日」と3日の「開天節」という2つの記念日を紹介する。
毎年10月1日は韓国軍の発展を記念する「国軍の日」だ。この日が記念日になったのには2つの説がある。一つは朝鮮戦争で陸軍が38度線を初めて突破した日、もう一つは韓国空軍が創設され陸海空軍の三軍体制が整った日という説だ。
国軍の日は1956年に李承晩(イ・スンマン)大統領が制定し、それまで軍種ごとに存在した記念日を一つにまとめた。76年からは公休日(祝日)になったが、91年には企業の生産性向上のため平日に戻ったという経緯がある。過去には国会議事堂がある汝矣島で閲兵式が行われていたが、式典のあり方は政権によって大きく変化している。
全斗煥(チョン・ドゥファン)政権まで毎年行われていたが、盧泰愚(ノ・テウ)政権で3年に1回となり、金大中(キム・デジュン)政権で5年に1回、すなわち、大統領就任初年にのみ行うこととなった。
閲兵式といえば北朝鮮を思い浮かべる方も多いが、韓国もこのように定期的に閲兵式を行なっている。大陸間弾道ミサイルの登場やマスゲームなどド派手な演出は北朝鮮に劣るが、近年では兵器輸出の観点から韓国の閲兵式に注目する軍事ウォッチャーが増えている。
このように慣習的な閲兵式だが文在寅(ムン・ジェイン)政権では一度も行われなかった。就任初年の夏が40度を超す記録的猛暑となり、部隊が訓練できなかったことに加え、北朝鮮を刺激したくないという政権の意向が加わった。別の見方では、陸軍特殊作戦部隊出身の文大統領が「形式的でムダな行事」と判断したからとも言われる。
一方で尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は前例を踏襲せず、3度も挙行した。就任初年の22年は三軍の本部がある桂龍台で行なったが、23年と24年はソウル市内で大規模な軍事パレード(注:大統領が参加するソウル空港での記念式典後に開催)を行った。
そして、今年10月1日に李在明大統領就任後初めての閲兵式が桂龍台で開かれた。しかし、その規模は将兵900人・装備100台ほどと小さいものだった。理由について韓国メディアは、尹政権での戒厳宣布の余波を受けて閲兵式の準備どころではなかったことと、尹政権時の市中パレードへの批判が強かったためと報じている。
韓国で独立記念日に準ずる日は8月15日の光復節だが、建国を記念する日は別にある。それが10月3日の開天節だ。
韓国の国慶日を定めた法律で、三・一節(3月1日)や制憲節(7月17日)、光復節(8月15日)、ハングルの日(10月9日)とともに定められている。ちなみに、憲法記念日である制憲節は2008年に祝日でなくなったため、最も知名度が低い。
開天節は文字どおり「天が開かれた日」で、朝鮮民族の始祖である檀君(ダンクン)が古朝鮮を開闢した日を記念する。北朝鮮が朝鮮労働党による建国を記念していることと対照的だ。
そして、日本でも開天節に関連する式典が行われている。東京に所在する韓国大使館が毎年10月3日前後に「国慶日・国軍の日レセプション」を開催し、多くの自衛官も出席する。
筆者も20年近く出席しているのだが、このレセプションでは日韓関係の現在地を肌で感じることができる。李明博大統領の竹島訪問(12年8月)、朴槿恵大統領の中国・抗日戦争勝利70周年記念行事への参加(15年9月)の年は、自衛官の参加が大幅に減った。そして、韓国海軍による海自哨戒機へのレーザー照射事件(18年12月)を受けて、防衛省・自衛隊はレセプションを事実上ボイコットして、自衛官の参加はほぼゼロになった。
このような経緯があるレセプションだが、今年10月2日の式典には岩屋毅外務大臣、中谷元防衛大臣など参加したほか、多くの自衛官や関係者がつめかけて大盛況だった。日韓関係は現在、良好に推移しているようだ。