議員定数削減で日本の政治は良くなるのか?国民が持つ大きな誤解、比例区削減を望んでいるのか

2025.11.12 Wedge ONLINE

 自民党と日本維新の会は連立政権合意書に「1割を目標に衆議院定数を削減する法案を臨時国会で提出し、成立を目指す」と明記し、維新の幹部はこれについて「合意が実行されなければ連立離脱も辞さない」と力を入れている。高市早苗内閣のスタート時点における支持率が高いためか、幹部が「臨時国会で実現しなければ解散だ」とまで言っている。

(ロイター/アフロ)

 今のところ、高市首相は国会答弁全般で保守色を鮮明に出すことはせず、安全運転に徹しているように見える。定数削減問題についても今の国会で成立させるとまでは言っていない。

 しかしこれは日本維新の会にとっては連立の意義の根幹に触れる問題であり、引くわけにはいかない。議員定数削減問題は今国会の最大の焦点となり得る。衆議院の比例区を中心に定数を減らすことになると少数勢力は壊滅する恐れがあり、強い抵抗が予想される。

 国民は一般に「議員定数を減らすのは良いことだ」と思いがちだが、今の小選挙区・比例代表併用の制度のもとでは、減らし方によっては副作用が強すぎて議会制民主主義にとってマイナスとなる可能性もあり、慎重な判断が必要だ。

国民はなぜ、議員定数削減を支持するのか

 各種の世論調査では、議院定数削減についてはかなりの高率で支持する声が多い。支持する理由について報道から拾って見ると、「政治資金、失言、不倫やパワハラなど問題議員が多い」「国会で居眠りしている議員はいらない」「議会経費の削減になる」などの声が多いようだ。

 これらの声は国民の共感を呼ぶ。しかし議員定数を減らしたからといって政治資金をめぐる不祥事や不道徳な事件、役に立たない議員がなくなる保証はない。議会経費を削減するには定数削減以外に歳費のカットや特典の廃止などさまざまな方法がある。

 政治とカネをめぐる問題を解決するには、議員定数を変更する以前に政治資金の透明性を高める各種の改革が必要だ。現代はインターネットによって誰でも政治をめぐるお金の流れを容易に知ることができるから政治資金の透明性は容易に実現できるはずである。

 真っ先に行うべきは透明性を高める議論である。それをしないで定数削減の議論をしても国民の政治不信は解決しない。問題が繰り返されるだけだ。

 議員定数削減の議論をするためには、定着していた中選挙区制がなぜ廃止されて「小選挙区比例代表並立制」が1996年の衆院選から導入されたか、という問題にさかのぼらなければならない。

「小選挙区比例代表並立制」はなぜ導入されたのか

 「小選挙区比例代表並立制」が導入された契機は、1990年前後にリクルート事件、佐川急便事件、ゼネコン汚職事件など政治とカネをめぐる事件が相次いだことだった。中選挙区制だと選挙活動に多額の人とお金がかかるという理由もあった。

 初期の焦点は政治とカネの問題をなくすための企業・団体献金の禁止だったが、その議論が政治改革の議論に広がり、イギリスやアメリカのような二大政党制によって政権交代を実現させ、政治腐敗の原因をなくすという議論に発展し、小選挙区制の実現に至ったのである。

 しかし小選挙区制には、選挙区における最高得票者以外の票は死票となり、必ずしも全体の民意と議席数が比例しないという致命的な欠点がある。小選挙区制・二大政党制で知られるイギリスでは全体の得票数と獲得した議席数の逆転現象は複数回起きていた。

 日本の参議院では、選挙区定数は4人区・5人区など中選挙区と1人区・2人区など小選挙区と両方ある。2010年参議院選挙では1人区・2人区など小選挙区で73人が選出された。

 その内訳を見ると、当時の民主党は約39%という第1位の得票を得たが28人しか当選せず、一方自民党は約33%の得票しかなかったが39人が当選、ほかの各党は約28%の得票があったが死票が多く6人しか当選しなかった。いわゆる逆転現象が発生していたのである。