日銀は利上げをすべきか?インフレや円安に金融政策で対応できるのか

2025.11.14 Wedge ONLINE

 日本銀行が10月29~30日に開いた金融政策決定会合で、追加の利上げを見送った。6会合連続の据え置きに対し、「インフレが収まらず国民生活を苦しめている」「低金利は円レートを下落させ、物価をますます上昇させる」「アベノミクスはデフレ脱却のために行ったものだが、現在はインフレだから前提が違っている」「低金利が生産性の低い企業の新陳代謝を遅らせて日本の生産性を引き下げている」といった批判が出ている。

(ロイター/アフロ)

 要するに、1.現在のインフレに対して金利引き上げで対応すべき、2.円安を抑えるために金利を引き上げるべき、3.低金利が生産性を低下させるから金利を上げるべき、という議論がある。これらの議論を整理したのち筆者の意見を述べたい。

現在のインフレには金利引上げで対応すべきか

 図1は、生鮮食品を除く消費者物価、生鮮・エネルギーを除く消費者物価、食料・エネルギーを除く消費者物価、米類(右目盛りになっている)の対前年同月比を示している。

 たしかに、2025年9月で、生鮮食品を除く消費者物価は3.0%、生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価は3.1%であるが、食料・エネルギーを除く消費者物価は1.3%にすぎない。これに対して、生鮮食品もエネルギーも食品もすべて家計にとっては物価なのだか、これらを除くのはおかしいという反論があるだろう。

 反論は正しいが、生鮮食品やエネルギーや食料価格の高騰に金融政策で対応できるのかという問題がある。生鮮食品は一時的な天候要因で変動する。それに応じて金融政策を動かせば金融政策が安定しない。原油価格は、今年2倍になったからといって来年4倍になる訳ではなく、高いところで落ち着くのが今までのパターンである。

 食料価格もそうだ。コメの価格は25年に2倍になったが、これがさらに上がって26年には4倍になる訳ではない。コメの対前年同期上昇率は25年5月のピークで101.8%になったが、すでに低下している。

 これらの価格上昇を含めて平均の物価上昇率を2%にするためには、これら以外のものの物価上昇率を引き下げなければならない。そんなことをすれば再びデフレに舞い戻りである。

為替レートを金融政策によって引き上げるべきか

 エネルギーや食料の価格上昇は円安によるものだから、円を上げれば物価は落ち着くという説もある。では、これらの価格に対する円レート下落の影響はどれだけのものだろうか。

 図2は、円レート(円/ドル)と消費者物価のうちのエネルギー物価、食料品物価の対前年同月比を示したものである。

 これを見ると、円レートが上がると(数字が小さくなるのが円の上昇)エネルギー物価、食料物価価が下がるようにも見える。ところが、多くの研究が、為替レートの変化が物価に与える影響は小さいとしている。

 たとえば明治学院大学の佐々木百合教授は、1%の円安は消費者物価を0.02%しか上昇させないとしている(佐々木百合「第9章 日本の貿易収支の要因分析と為替相場のパススルー」、「日本経済と資金循環の構造変化に関する研究会」報告書、財務省財務総合研究所2024年6月)。

 ところが円レートは25年11月13日現在154円だが、22年9月ごろから150円前後を動いていた。ここ3年の動きは年に10円に満たない。

 現在3%の消費者物価上昇率を1%引き下げて2%にするには、50%(0.02%×50=1%)の円高にしなければならない。こんなことをすればリーマンショック再現の大不況になるだろう。

 むしろ、消費者物価を上昇させる要因を見て、それが長期的に許容できないインフレをもたらすか否かを考えた方が良いだろう。すべての要因についてここで分析することはできないが、少しだけ示しておこう。