ウクライナ史上最大の汚職事件、最悪のタイミング、ゼレンスキーの進退におよぶ可能性…ウクライナ戦争への影響必至

2025.12.02 Wedge ONLINE

 ウォールストリート・ジャーナル紙の11月12日付け解説記事が、ウクライナの国営原発管理公社「エネルゴアトム」にからむ大規模汚職事件は、ゼレンスキー大統領にとっての試練になる、と指摘している。要旨は次の通り。

戦争下のウクライナのゼレンスキー大統領に国内問題も押し寄せている(ロイター/アフロ)

 ウクライナのエネルギー部門における汚職疑惑が浮上する中、11月12日、現政権内最高位のハルシチェンコ法相(7月までエネルギー相)とフリンチュク現エネルギー相が辞任した。この事態の余波は、ゼレンスキー大統領にとっての試練になりつつある。

 戦場ではロシア軍が新たな勢いで進軍を続け、ゼレンスキー大統領が西側同盟国からの支援獲得に苦戦する中、今回の捜査は国内外でゼレンスキー大統領への支持を揺るがす恐れがある。

 ウクライナ国家汚職対策局(NABU)は、ハルシチェンコ氏とゼレンスキー氏の側近らが、同国の原子力機関エネルゴアトムと契約を結んでいた企業から賄賂を要求したと主張している。

 捜査結果を公表したNABUによると、この計画では最大1億ドルが不正流用された。ゼレンスキー大統領の元ビジネスパートナーを含む他の側近も、この計画に関与したとされている。

 NABUは、捜査により提起されたいかなる告発についても、ゼレンスキー大統領には言及していない。この事件は、ここ数週間のロシアによるウクライナのエネルギーシステムへの攻撃を受け、長期にわたる停電に見舞われているウクライナ国民の怒りをかき立てている。NABUによると、今秋にエネルギーインフラの防護設備を設置する契約は、エネルゴアトムの幹部がより大きな見返りを求めたため延期されたという。

 今回の捜査発表は、ウクライナ国家汚職対策局(NABU)とその姉妹機関である特別汚職対策検察庁(SAPO)の復権を示唆するものだ。7月、ゼレンスキー大統領は両機関の権限を奪う法律に署名したが、これに対し数千人のウクライナ国民が抗議デモを行い、ゼレンスキー大統領が方針を撤回した経緯がある。

 NABUとSAPOがハルシチェンコ氏や、ゼレンスキー大統領と共にエンターテインメント会社を設立した実業家ミンディッチ氏を含む要人の自宅を家宅捜索したことで、この事件は世間の注目を集めた。捜査当局は15カ月かけてこの件を捜査し、約1000時間分の音声録音を収集し、70件の捜索を行った。

 告発内容によると、ミンディッチ氏はキックバック計画を主導し、エネルゴアトムの請負業者に対し、契約金額の約10~15%に上る賄賂を要求していた。拒否した業者は、サプライヤーとしての地位を失ったり、サービスに対する支払いが停止されたりするリスクがあった。ミンディッチ氏にコメントを求めたが、連絡が取れなかった。

 SAPO検察官は、ハルシチェンコ氏がミンディッチ氏のために「仲介」し、この計画で流用された資金を利用したと述べた。

 ウクライナは1991年の独立以来、政府の汚職撲滅に苦慮しており、これが依然として欧州連合(EU)加盟への希望の障害となっている。

 NABUは、2014年のウクライナ革命で、米国をはじめとする西側諸国の圧力を受け、モスクワの支援を受けていた当時のヤヌコビッチ大統領が追放された後、15年に設立された。

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最悪のタイミングで起きた汚職事件

 ウクライナの国営原子力発電所を管理する公社「エネルゴアトム」を巡る汚職事件は、政府閣僚を含む関係者の地位の高さや金額の大きさ(最大1億ドル)、そして何よりも、ゼレンスキー大統領自身の関与が疑われていることから、ウクライナ史上最大級の事案となりつつある。

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