香港北部の大埔地区にある公営住宅、宏福苑で2025年11月26日に起きた火災は少なくとも151人(12月1日現在)が死亡する大災害となった。密集したマンション群への延焼や、それぞれの建物を囲っていた竹製の足場や難燃性基準を満たしていなかったとされる保護ネットが火元となったのは、小さな土地に750万人の住むという香港の住宅事情を反映させたものと言える。
香港では、住宅の需給バランスがとれておらず、不動産価格は非常に高額な上、03年以降は中国本土の人による住宅購入が加わり、不動産価格は基本的に右肩上がり。市民の不満を和らげるため、香港政府は不動産の投機的な動きを抑制しようとしてきた。
一方、日本を見ると、高市早苗首相は、各種外国人政策の中での1つに外国人による土地取得ルールの規制を強化する指示を出し、第一歩として外国人による不動産所有状況を一元的に把握、管理するデータベースを構築する方向だ。今後の日本における外国人による不動産購入はどうなるのか? 香港の事例を知っておくことに損はないだろう。
覚えておきたいことが3つある。1つ目として、香港は中国の一部であることから、中国とほぼ同じと考える人がいることについてだ。確かに20年に香港国家安全維持法(国安法)が施行され、政治的には中国色が強まったが、イギリスの植民地だった影響は依然として残っており、中国人と一緒にされるのを嫌う香港人は少なくない。
2つ目は、03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響で香港経済が落ち込んだが、中国政府は香港政府と経済や貿易に関する緊密化協定(CEPA)を結び、香港経済の立て直しを始めたこと。その1つが、中国人観光客の個人旅行解禁だ。それまで中国の本土の人たちは、個人では自由に香港に行けなかったが、解禁後もパスポートは必要なものの、中国本土の観光客が大挙して香港に押し寄せ、爆買いが始まった。
3つ目は、国安法前に、人民元の上昇、政治的な安心感、資産の逃避から中国人が香港の不動産を買い始めた。中国人が香港の住宅を安全な外貨建て資産と捉えたのだ。
これにより、住宅価格はさらに上昇した。米調査会社デモグラフィアによると24年の住宅価格の中央値は世帯年収の14.4倍で15年連続世界一だ。
このように、オーバーツーリズム、爆買い、不動産価格の高騰と、香港は日本の先行事例になっている。
香港政府は住宅上昇を受けてどんな政策を打ったのか? 住宅を購入する際、価格に連動して最高4.25%の印紙税を払う必要があるが、10年になると、購入後24カ月以内に売却する場合、保有期間によって5~15%の特別印紙税を課した。また12年には、非永久居民(事実上の外国人)らが住宅を取得する時には、購入価格の15%の追加印紙税を課した。
他にも、香港の永久居民の同一人物が2軒目を購入する場合も、同じように15%の印紙税がかかるようにするなど、試行錯誤を繰り返した。それでも、03年以降は基本的右肩上がりなので、印紙税で値上がりを抑えていたとも言える。
ところが、新型コロナウイルスが収束後、香港経済は低迷を続け、回復する兆しが見られず、25年の価格は12年レベルにまで下落した。香港政府は経済活性化のため印紙税を24年2月に廃止する決断を下した。
では、現在の香港の不動産状況はどうなのか?香港政府土地註冊処が発表した25年10月の不動産の各種取引状況によると、住宅物件の登録件数は5714件で、前月比1.3%増、前年同月比21.7%増だった。また、取引高合計は511億ドルで、前月比8.1%増、前年同月比37%増と増加傾向を示した。